見事な血統「梓山犬」残したい 名犬絶滅危機 上野村で繁殖活動
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昨年11月に誕生し譲渡した十石犬の雄を見守る今井さん。先祖である梓山犬を残したいと願う

 一時は絶滅寸前に追い込まれた狩猟の名犬「梓山犬」の血統保存の取り組みが群馬県を含む全国で広がっている。子孫である上野村の「十石犬」の保存会と長野県川上村の「川上犬」の研究会が2010年から協力し、梓山犬の血統を残していくための繁殖に取り組んでいる。「十石犬保存会」の今井興雄会長(71)=上野村乙父=は「何としても見事な和犬の血を残していきたい」と意気込んでいる。

◎保存会が6県に拠点 「赤一枚」の犬探す
 梓山犬は1913年、川上村梓山地区の猟師が信州柴犬と秩父犬を掛け合わせて生み出したとされる。優れた猟の資質と美しい容姿から当時の内務省が天然記念物に指定。譲渡された上野村では、近くの十石峠にちなんで十石犬の呼称で親しまれるようになった。

 太平洋戦争末期、梓山犬は食用にされるなどして姿を消す事態に陥ったが、上野村で十石犬が残っていたことが判明。1960年に川上村の有志が、上野村で保存に尽力していた今井武市さん(故人)から4頭を譲り受け、川上犬と改名して飼育した。

 その後、川上犬は雑種化が進んでしまい、十石犬も減少の一途をたどった。しかし、一部の酪農家が純粋な川上犬の血統を守っており、2008年に「川上犬保存研究会」を結成。2010年から上野村の十石犬保存会と協力し、繁殖に奮闘する。

 現在は、それらの保存会の事務局などが統合されたNPO法人「梓山犬血統保存会」が、群馬を含む6県に拠点を置き、血統を復活させようと繁殖や受け入れ先を管理している。設立時の登録頭数は全国で40頭ほどだったが、現在は110頭にまで増えたという。同法人の高橋はるみ専務理事(61)は「健康な犬がいてはじめて繁殖につなげられる。一頭一頭を大切に管理し、素晴らしい血統を残していきたい」と話す。

 武市さんの孫で、同法人の名誉理事長も兼任している今井さんは、これまで希望者に十石犬を数十頭ほど譲渡。現在でも県内に自身が譲った犬が10頭ほど生存しているといい、「遠くにいても“わが子”。犬を家族のように扱ってくれる人か見極めて譲ってきた」と語る。

 昨年7月から3頭が病気で死ぬなどし、今ではいずれも7歳の2頭を飼育している。2頭はオスとメスだが、同じ親から産まれたため交配ができない。今井さんは十石犬だけでは種の存続が難しいとし、「毛色がきれいな『赤一枚』の犬と巡り合えれば交配したい」と期待する。

 梓山犬は、人には温和な一方で獲物には勇敢な性格や、俊敏な動きなどから狩猟の名犬として知られる。近年は田畑を荒らす有害鳥獣を追い払うなどの役割で活躍している。

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