命の重さ子どもたちに 「けんちゃんのもみの木」出版
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
 
絵本の原画がすべて完成した7月、喜びを分かち合う美谷島さん(左)といせさん(いせさん提供)

 1985年の日航ジャンボ機墜落事故で次男の健君=当時(9)=を亡くし、遺族らでつくる「8.12連絡会」の事務局長を務める美谷島邦子さん(73)=東京都大田区=と、絵本作家のいせひでこさん(71)=同杉並区=が命の大切さを伝える絵本「けんちゃんのもみの木」を出版した。美谷島さんは「絵本を通じて子どもたちに命の重さを伝えていきたい」と話している。

 いせさんは2015年、事故現場となった「御巣鷹の尾根」を初めて登山。美谷島さんと交流するとともに、健君の墓標から見える尾根の景色をスケッチし、色を入れた絵を美谷島さんに贈った。美谷島さんが「私の『思い』と、いせさんの絵で、次世代に命の尊さを伝える絵本を作れないか」と持ち掛け、制作が決まった。3年ほど前から構成について話し合いを重ね、美谷島さんが自身の思いを文にし、いせさんが思いを酌みながら挿絵を描いた。

 絵本の題材は、美谷島さんの夫、善昭さん(73)が事故後に墓標近くに植えたモミの木。悲しみや苦しみを背負いつつ、「どうしたら会えるのか」とひたむきに尾根に登り続けた美谷島さんの心の移ろいや、モミの木が多くの悲しみや祈りに寄り添いながら成長し、命の大切さを未来に伝えていく様子などが表現されている。

 美谷島さんは「長い歳月を経て気付いた『健ちゃんがずっと私の心にいてくれた』という思いも込めた」と話す。いせさんは「暗闇の中でも小さな光が生まれることを描いた」と説明する。

 美谷島さんが絵本を遺族らに贈ったところ、感謝や応援の連絡が相次いでいるといい、「35年たっても、コロナ禍の中でも、涙でできた遺族同士のつながりは決してなくならないと再確認できた。これからも安全や命の大切さを伝えていきたい」と力を込める。

 全国の書店やアマゾンなどの通販サイトで販売。32ページ、1600円(税別)。問い合わせはBL出版(078-681-3111)へ。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
関連記事