押印廃止の方針 簡略歓迎も不安根強く
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
さまざまな印鑑を取りそろえる印章店。「押印廃止」の流れには不安も強い=9日、前橋市内

 政府や県に提出する書類への押印を廃止する方針を閣僚や山本一太群馬県知事が示した9日、企業や市民からは押印の見直しによる行政手続きの簡略化を歓迎する声の一方、本人確認のために押印の必要性を指摘する声も上がった。印鑑を販売する印章店には今後への不安が強い。押印は商習慣などでも広く根付いているだけに、企業でも急速な「押印廃止」の流れには抵抗感もあるようだ。

 自治体からの委託で公園管理などを行う赤松園(伊勢崎市)の沢田佳和社長は、毎月提出する業務報告書には毎回実印を押していると説明。官公庁に提出する書類への押印廃止が検討される流れについて、「押印がなくなれば手間は減る。印鑑廃止の流れは大歓迎」と賛成した。

 「押印の廃止がどこまで進むかで、市民への影響の大きさは変わる」とするのは太田市の主婦(77)。遺産相続の手続きの際に印鑑を押してもらうためだけにきょうだい間で書類を郵送したのは「大変だった」と振り返る。ただ、日常では印鑑を使うのは荷物の受け取りくらいだとし、「政府や県の議論に注目したい」と話した。

 高崎市内の銀行で働く女性行員(24)は、伝票の照合や書類の受け付けなどで印鑑は必需品になっているという。「はんこは本人確認のために非常に重要。サインだけでは他人が簡単にまねできて悪用されるのでは」と懸念。「はんこを廃止するのであれば、信用性を確保するための代わりの手段を用意するべきだ」と強調した。

 印鑑を販売する事業者からは将来への不安の声も聞かれた。井上印房(渋川市)社長で全日本印章業協会の井上崇理事(49)は「印鑑にお金をかけない傾向が強まって、実印や銀行印が残っても、安価な商品しか売れなくなるのではと不安視する業者は多い」と指摘。手彫りの印鑑を手掛けるはんこの欅堂(前橋市)の桑原卓也代表(36)は「社会の大きな流れの中では仕方がない。技術を磨いて量産品にはない手作りの良さを訴えたい」と話した。

 サンデンホールディングス(伊勢崎市)は、社内決済の多くが押印から電子決済に置き換わっている。ただ、他社との契約では社印を使う場面も多く、「相手もあり、信頼性を担保するためにも現状では印鑑が必要。契約では押印廃止のハードルは高い」と全廃する難しさも指摘した。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
関連記事