亡き妻の闘病と介護記録を一冊に 前橋の富永さん出版
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 前橋市の富永春幸さん(90)が、2009年に胃がんで亡くなった妻の介護記録と、その間に詠んだ短歌をまとめた「萬葉の詩形に魅せられて」を上毛新聞社から自費出版した。余命期間を「最高の時間にしよう」と約束し合い、懸命に妻に寄り添う心情や闘病の様子をつづっている。

 富永さんは宮沢賢治と良寛、妻の春枝さんは萩原朔太郎が好きで文学談議に花が咲く夫婦だった。春枝さんに胃がんが見つかったのは06年。「早く検診を受けさせればよかった」と今も悔やむ。

 春枝さんが毎日のように嘔吐おうとして衰える中、介護を記録して短歌を始めたのは「妻も私も苦しく、その思いを何かに発散したい」との思いだった。

 2人で部屋の中をぐるぐる歩き回り、『歩幅揃(そろ)へ妻と歩める二歩三歩そとは沙羅の葉輝く五月』。『胃をとりし妻の介護の明け暮れの心に渇きふと覚える刻』と心の正直な動きを詠んだものもある。

 50年余り連れ添った春枝さんは78歳で家族に見守られて息を引き取った。富永さんの唇には介護時にかみしめてできた血豆が思い出として残る。「今も思い出すと悲しいが、妻との記録をまとめられて良かった」と話している。

A5判282ページ。俳句も収録している。県立図書館にも寄贈予定。

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