《集住地の影で 北関東とベトナム人》(1)失業 借金し来日 収入失う 「また働きたい」
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来日後、工事現場や農家で働いたベトナム人男性。「受け入れ先の日本人は優しかった」と振り返った=今月中旬

 大量窃盗事件などに関連し、ベトナム人の摘発が相次いでいる。日本とベトナムが経済的な結び付きをさらに強めようとする今、何が起きているのか。群馬県を中心とした集住地の陰を追う。

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 「日本でもう一度、働きたい」

 ベトナム人の男性(28)は今月中旬、真っすぐ前を見て、つぶやいた。

 収穫を手伝っていた前橋市の農家を解雇されたのが6月。新型コロナウイルスの影響で仕事が激減したためと告げられた。11万円の月収は突如ゼロに。家賃と食費の月約6万円の支払いが難しく、食事は1日1、2回に減らした。米や果物でしのぐ日もあった。

 7月31日に在留資格の失効が発覚し、都内の入管施設に収容された。「借金をどうする」―。ベトナムに残してきた家族の顔とともに浮かんだのは、来日のための資金を返す手だてが絶たれたという不安だった。

 5人兄弟の末っ子として首都ハノイ近郊で生まれた。高校を出てからは家業の農業を手伝っていたが、家族7人の暮らしを支えようと一念発起し、来日を決意したのだという。銀行から100万円を借り2017年12月に海を渡り、千葉県内の工事現場で働いた。1年後に在留資格が切れた後、群馬県に移り住んだ。

 10月15日、拘束が一時的に解かれる「仮放免」となった。ベトナム大使館に紹介された支援団体に身を寄せる。気持ちは少しずつ整理できてきた。「(在留資格を)取り直して、また、農家で働きたい」

 同じような境遇のベトナム人は今、少なくない。

 藤岡市に隣接し、伊勢崎市からもほど近い埼玉県上里町。北関東で相次いだ家畜などの大量窃盗事件に絡み、町内のアパートの一室で違法に豚を解体した疑いで、ベトナム国籍の元技能実習生が逮捕、起訴された。

 「仕事ない。ずっと休み」。同居人とみられるベトナム人の男性(20)は今月中旬、片言の日本語で語った。昨秋に来日し、近くの工場で週5日働いていた。月収は10万円ほどだったが、新型コロナの影響で7月に失職。20~30代の仲間3人と、2部屋で暮らしているという。

 光熱費などは母国からの仕送りで何とかやりくりし、食料は友人から融通してもらっている。部屋は昼間でも雨戸を閉め切ったまま。年度末に在留期限を迎える。

 なぜここへ来たのか。逮捕された元技能実習生との関係は。「日本語、分からない」。繰り返した。

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