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黒のジャージーに灰色のスエットのズボン。短髪のベトナム人の男(30)は今月中旬、前橋地裁太田支部の法廷で窃盗罪の起訴内容を認めた。太田市の量販店から盗んだとされるのは、塗料など計10点(計約3万7000円相当)だった。
警備員に取り押さえられたとき、財布には5万円余りの現金があった。「自分の金で払うのは、もったいないと思った」
2012年に留学生として来日。専門学校に通った後、会社で働いたという。ベトナムの食品を扱う店を大泉町に開くため、今年5月に会社を辞めたと説明。盗品は、店の準備に使うものだったと主張した。
男は買い物かごの中に商品を入れ、レジを素通り。屋外売り場に移動し、人目を避けながら「精算済み」のかごに入れ替え、出入り口から約20メートル先に止めてあった車の後部に移した。
「考え事をして歩いていただけ。これから払うつもりだった」。当初そう否認していたことについて法廷で何度も問われると、「ビザが更新できなくなると思った」「怖かったので認めなかった」と語った。
供述の信用性には懐疑的な見方がある。
関係者は、所持金も、否認の手法や文言まで、仲間が指南している恐れがあると説明。「同様の手口で過去に不起訴になった事件もあるだろうし、情報共有している可能性がある」。犯罪に関わるベトナム人は会員制交流サイト(SNS)でつながりを強めているとし、「(ベトナム人を)どんどん受け入れても、暮らせる環境が整っていなければ、犯罪は増えるだけだろう」と見通した。
刑法犯などに至らずとも法に触れる事例も。捜査関係者は「事故後に放置された車両を調べたら車検切れだったとか、(ナンバーを不正に付け替える)『てんぷら』だったというケースは少なくない」と語る。
一方、犯罪を強く非難しつつもベトナム人に同情する声がある。
東毛地域の工場はベトナム人の技能実習生を雇っているが、過去に摘発された人もいた。工場関係者の男性は「日本でつらい思いをしているとき、同胞のうまい話に乗ってしまう気持ちは分からなくはない」。危険なコミュニティーと引き離すことが喫緊の課題だと受け止めている。
相談しやすい関係性づくりを心掛ける半面、プライベートにどこまで介入していいかは悩ましい。中小企業は研修などの余裕がないとし、実習生をあっせんする監理団体には「犯罪に関わらないよう教えてあげてほしい」と強く願う。
ベトナム人との信頼関係の構築に、増えつつある犯罪への不安。「受け入れる側として何ができるか」。男性は考え続ける。