《NEWSインサイド》「群馬のおいしさ」どう発信 チーム始動1年
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分析した農畜産物の特長をまとめたリポート
リンゴの品種「ぐんま名月」の食感を分析する県職員=県農業技術センター

 群馬県産農畜産物のおいしさや健康増進に関わる成分を分析し、消費者へのアピールと生産振興に生かす県のチームが始動して1年となった。イチゴの品種「やよいひめ」を皮切りに、これまでに4品目を調査した。イメージ先行からデータ本位のPRに転換しようとしている。明確化した強みをどう活用し消費者に伝えるか。正念場の2年目を迎える。(真下達也)

■食感を数値で
 台座に置かれたリンゴにセンサーが触れると、モニターに折れ線グラフが表示される。今月中旬、県農業技術センター(伊勢崎市)の分析室。食品の食感をグラフや数値に表す機器を駆使して、特徴を分析していた。

 「どういう切り口がいいか話し合い、文献に当たり、一つのテーマで数百のサンプルを分析する」。主任研究員の大沢実さん(54)は地道な作業を重ねる。現在のテーマは県産リンゴ。他産地と比較し、来年の収穫シーズンに合わせた発表に向け準備を進める。

 大沢さんが所属するのが「G-アナライズ&PRチーム」。「農畜産物は群馬県の最も重要なコンテンツ」とする山本一太知事がリーダーとなり、若手から幹部まで職員計10人が所属する。分析、販売促進、生産振興の3班に分かれ、群馬大や高崎健康福祉大の研究者とも連携する。

 これまでにやよいひめ、豚肉、トウモロコシ、上州地鶏を分析し、結果を発表した。豚肉のうち、飼料にムギやコメを与えた麦豚や米豚は、比較した他県産の黒豚や輸入豚肉に比べてやわらかく、さっぱりした味わいであることが分かった。トウモロコシは新鮮であるほど甘みが強く、東京など大消費地に近い県産の強みを明らかにした。

■農家の所得向上
 「PRと生産振興を進め、最終的には農家の所得向上につなげたい」。ぐんまブランド推進課の小沼義晴課長(57)は意気込む。

 「買いたい、食べたい」と思う県産農畜産物がある消費者は3割―。県が9月、東京都と神奈川県の消費者1万人にインターネットで行ったアンケートでは、こんな意識が分かった。思い浮かべる農畜産物はこんにゃく、キャベツ、下仁田ネギが上位だった。県は調査を継続し、「買いたい、食べたいものがある」と答える割合を高め、イメージする品目も増やすことを同チームの成果を測る指標の一つにする。

 ただ、1年目の活動は必ずしも順調ではなかった。足かせとなったのは新型コロナウイルスの拡大だ。

■新型コロナが誤算
 県は当初、都内で料理教室を展開する民間企業と連携し、「G-アナライズ&PRチーム」が分析した食材を使ってもらったり、スーパーマーケットでの試食販売を展開したりする計画だった。だが、新型コロナウイルスの感染拡大で実現できていない。実際に食べてもらうことを重視していただけに、思わぬ誤算だった。

 現在は動画投稿サイト「ユーチューブ」の県公式チャンネルでの動画配信に力を入れ、分析結果やレシピなどの紹介動画を20本以上公開している。

■認定店制度
 疲労感の軽減などが期待されるアンセリンを多く含む上州地鶏については、消費者庁への機能性表示食品の届け出を目指すほか、県内温泉地と組み合わせたツアーを検討。上州地鶏の料理を提供する飲食店などを認定する制度も新たにスタートした。新型コロナなど社会状況を踏まえながら、消費者へのアピールを模索している。

 活動を生産者はどう受け止めているのか。イチゴを直売し、関東一円からリピーターが訪れる松井ファーム(前橋市上佐鳥町)を経営する松井利彦さん(65)は「やよいひめは栃木のとちおとめ、福岡のあまおうにも負けない。ただ、全国的にはまだ知られていない」とし、認知度を高めることにつながると期待する。その上で「お客さんが実際に食べた時こそ大事。生産者として、期待に応えられるおいしいイチゴを作り続けたい」と話す。

 同じ品種を育てても生産者や年によって品質に差が出るのは、多くの農畜産物共通の課題だ。このため、分析で得られた強みを生産現場につなげ、より品質を高めていく役割も同チームは担う。やよいひめについては、各農園で安定した糖度のイチゴを収穫できるよう、生育状況の診断技術を用いた助言を2021年から本格化する。

■新しい手法
 地域マーケティングが専門の高崎経済大の坪井明彦教授(46)はチームの活動について、「ブランド力というより、商品力を訴求しようとする取り組みと言え、スピーディーな効果も期待できる」と捉える。まず産地ブランドやイメージを高めるという従来型の販売戦略に対し、客観的な数値を示して消費者に分かりやすく商品を売り込もうとする手法を新しいと評価する。

 その上で、分析で得られた強みを知ってもらう工夫として、飲食店や旅館でのメニュー表示や提供時の説明、小売店では数値を示したポップ広告の掲示などを提案する。「客観的な数値や事実に基づく商品力を、消費者にどのように伝えるかという点が課題だ」と指摘している。

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