津波対策 国の責任を否定 東京高裁控訴審判決 原告落胆 上告へ
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判決後、悔しさで涙を流す原告の丹治さん(左)と鈴木弁護団長=21日、東京高裁

 東京電力福島第1原発事故で福島県から群馬県などに避難した住民ら91人が東電と国に計約4億5000万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が21日、東京高裁であった。足立哲裁判長は、国と東電に賠償を命じた一審前橋地裁判決を取り消し、国の責任を否定した。東電に津波対策を命じなかった国の対応について「著しく合理性を欠くとは認められない」と判断した。

◎「責任所在 あいまい」批判
 福島第1原発事故で福島県から群馬県などに避難した住民らが国と東京電力に損害賠償を求めた民事訴訟の東京高裁判決は21日、国と東電の双方の賠償責任を認めた一審前橋地裁の判断を覆し、東電のみに賠償を命じ、国の責任を否定した。一審から救済対象が拡大され慰謝料総額も上積みされたが、責任の所在の明確化を求める原告や支援者からは落胆と憤りの声が上がった。原告側は上告する方針で、事故発生から10年の節目を前に法廷闘争はさらに長期化することになる。

 「(一審判決のうち)国の敗訴部分を取り消す」―。東京高裁101号法廷で足立哲裁判長が主文を読み上げると、傍聴席から落胆のため息がもれた。いわき市から避難した原告の一人、丹治杉江さん(64)=前橋市=は「こんな判決とは夢にも思わなかった。国の原発推進施策に忖度そんたくした判断で絶対に許せない」と憤った。

 東京高裁判決は国と東電に対する津波の予見可能性と結果回避可能性をいずれも否定。原告側弁護団長の鈴木克昌弁護士は「(規制される側が作った)『津波評価技術』ばかりが重視され、国の『長期評価』の知見などについて誤った認定を下した。こんなことではまた原発事故が起きる」と警鐘を鳴らす。関夕三郎弁護士は「判決文には控訴審で審理してきた証拠についての記述がほとんどない。読みながら、これはうちの訴訟の判決なのかと疑いたくなるほどだ」と不満を示した。

 昨年9月30日の仙台高裁判決では「不誠実ともいえる東電の報告を唯々諾々と受け入れ、規制当局に期待される役割を果たさなかった」として国の責任を認定した。同訴訟の原告弁護団の馬奈木厳太郎弁護士は、両高裁の判断が分かれた理由について、「『命と暮らしを守るため』という規制権限の前提への理解が異なった」と指摘。東京高裁判決を「受動態が多く、判断主体や責任所在が極めてあいまい」と批判している。

◎「国も過ち認めて」…高崎に避難の原告女性
 「なぜ国の責任を認めないのか」―。福島第1原発事故の約1年後に福島県郡山市から高崎市へ避難した原告の女性は21日、控訴審判決の内容を知り、憤った。この日の判決では一審判決で認められなかった長男への慰謝料として25万円、女性に対しては2万円増の27万円がそれぞれ認められた。それでも「原発事故で生活が一変した。この10年間の苦しみを考えると少なすぎる」と語った。

 郡山市は避難指示区域には含まれていない。だが、長男には障害があり、わずかでも放射線量の低い場所へとの思いで2012年に故郷を離れた。避難後、女性は慣れない群馬県での生活で大きな精神的負担を抱えるように。故郷での人間関係は絶たれ、孤独を感じながらの生活が続いた。

 控訴審判決について、女性は「国は、巨大津波の襲来が予測できた中でも原発を推進してきた。国に責任がないという判決はおかしい」と指摘。「放射能への不安から福島県にいられなかった人にもしっかりと目を向けて、十分な賠償をしてほしい。国と東電の両方に、責任とその過ちを認めてほしい」と強く訴えた。

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