富岡製糸場近くの憩いの場 43年で幕 コロナきっかけに閉店決意
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「売り上げが半分以下まで減らず、国の持続化給付金は申請しなかった」と話す篠崎さん=1月中旬

 群馬県富岡市の世界文化遺産、富岡製糸場の近くで営業を続けてきた喫茶店「ティールームエクボ」が、新型コロナウイルスの感染拡大がきっかけで閉店した。地元住民ら常連客に43年愛された。地域の憩いの場は、感染症がまん延する中で、ひっそりと灯を消した。

◎「ティールームエクボ」の篠崎さん 気配り続け常連客に愛される
 昨年10月末の夕方、店主の篠崎雪見さん(70)は最後の客を見送った。二人三脚でずっと店を切り盛りした妻が、傍らにいた。

 同市出身。地元の喫茶店で、高校在学中の17歳から約3年間アルバイトをした。20歳のころ大阪の喫茶専門学校に通い始めたが、結婚のため学校を1年で辞めて帰郷。市内の別の店で8年ほど働いて、独立したのは1977年だった。

 10年ローンを組み、銀行から500万円を借りた。借金を返すまで、店では酒を出した。料理に必ずサラダを添えたのは、客の体を気遣ったから。開発に半年をかけたドレッシングもある。他の飲食店に行けば調理場が見える席に常に座り、料理の味を研究した。コーヒーは、客の職種によって勧める品を変えるこだわりよう。現場仕事の人には苦味の強いものを、机に向かいがちな人には酸味が強い品を用意した。自分の考えや店の雰囲気に合う客と付き合った。やがてリピーターが増え、経営は安定していった。

 昨年4月の緊急事態宣言の後も、常連客らに支えられて売り上げは微減にとどまった。ただ、禁煙化の流れなども重なり、店じまいを決めた。「いろいろな職業の人から本当に多くの価値観を教わった。例えば、社長が幸せとは限らない。苦しさも含めて満足」

 社会は新型コロナの最大級の波の中にある。緊急事態宣言の再発令に伴い、国は営業時間の短縮に応じた飲食店に協力金を出したりする。長らく飲食店を経営してきた先駆者として、「それでは足りないだろう。ワクチン接種が進まなければ、先が見えないのでは」と話した。

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