受診 拒まれる外国人 仮放免中で困窮 医療機関 未払いを懸念
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 就労や健康保険の加入が認められず困窮する仮放免の外国人が、医療機関で受診を拒まれるケースが群馬県内で出ている。コロナ禍で経営難となっている医療機関側は、無保険で診察料などが未払いとなる恐れが強い外国人患者の受け入れには二の足を踏む。「人道的に受け入れる」とする病院も多いが、支援団体は「誰もが平等に医療を受けられる仕組みが必要」と指摘している。

■保険加入できず
 東毛地域のフィリピン出身の女性(41)は昨年5月、妊娠が判明した。県内の複数の医療機関を頼ったが、以前の出産費の未払いがあり、どこにも受け入れてもらえなかったという。

 女性は2010年から一時的に身柄の拘束を解かれた「仮放免」となり、現在は難民申請を行っている。在留資格がないため、仕事に就けず、健康保険にも加入できない。

 支援団体の協力で、行政支援を受けられる「入院助産制度」を利用し、埼玉県内の病院を受診できるようになった。女性は「仮放免では仕事もできないので、お金もない。おなかが大きくなる中、不安で、どうしたらいいのか分からなかった」と明かす。

 病院側もジレンマを抱えている。診療の求めを原則拒めない「応召義務」がある一方、新型コロナウイルスの影響で経営が苦しく、診察料の未払いによる負担増を避けたいためだ。

 西毛地域のある病院は、金銭的な問題などで他の病院で拒まれた外国人らを診ることがあるという。担当者は「人道的に無保険の人も受け入れるが、治療費を請求しても未収となることがあり、病院側の持ち出しとなり負担だ」と明かす。その上で「無保険の患者を受け入れるためには、公的な補助を充実させてもらわないと…」と吐露した。

■「氷山の一角」
 外国人の未払い医療費の対策として群馬県は、未払い分の一部を県が補填(ほてん)する「外国人未払医療費対策事業」を1993年から実施。2002年度の25医療機関への計約2100万円をピークに、19年度は15医療機関の計約600万円と減少した。同事業は本年度限りで廃止の方針だったが、関係団体から再検討の要望も出ており、県は「再設置も含め、検討している」とする。

 外国人の医療支援をしている太田市のNPO法人「北関東医療相談会」事務局長の長沢正隆さん(67)は、受診を断られたこの女性について「氷山の一角。仮放免者は高額な医療費は支払えないため、医療機関から敬遠されがちだ」と指摘。「在留資格のない仮放免の人も、他の人と平等に医療を受けられることが必要だ。国や自治体には、貧しい人の立場に立った施策を求めたい」とする。

 《仮放免》 入管難民法に基づき不法滞在などで入管施設に収容された後、難民申請中であることや健康上などの理由から在留資格のないまま一時的に拘束を解かれ、社会で暮らしている状態。新型コロナウイルス感染拡大による渡航制限で強制送還が進まず、施設では密になりやすいことから、仮放免者は急増している。

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