震災10年 教訓をつなぐ 2次被害 街に潜む危険を判定
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仙台市内で擁壁の危険度を判定する茂木さん(奥)=2011年3月24日

 津波が直撃した海沿いのように目立った被害はないが、調べると街のあちこちに危険が潜んでいた。震災発生から間もない2011年3月23日、現在、群馬県建築課係長の茂木裕(ゆたか)さん(51)は、県が初めて派遣した被災宅地危険度判定士チームの先遣隊員として仙台市に入った。

 判定士は地震や大雨などの災害によって広範囲に被災した宅地の地盤や擁壁を調べ、クラック(ひび割れ)の有無などに応じて危険度を3段階で示す。余震による2次被害を防ぐため、阪神淡路大震災を教訓に創設された。

 仙台市からの派遣要請を受けて「少しでも被災地の力になれれば」と先遣隊に志願した。ガソリン不足の中、なんとか燃料を確保して現地に到着。同市太白区の丘陵地に造成された住宅地の担当となり、余震が続く緊迫した雰囲気の中、マニュアルに沿って点検を進めていった。

 盛り土で造成された宅地地盤のクラックなど目に見える被害だけでなく、のり面を支える石積み擁壁のひび割れなど「一般の人ではなかなか気付かない場所」もあり、判定士の必要性を感じたという。

 実際、本県から現地入りした計22人の12日間の活動で調査した168カ所のうち「危険宅地」は29カ所、「要注意宅地」は54カ所と半数近くに及び、仙台市の避難勧告判断に役立った。「危険に気付かず暮らし、余震時に倒壊に巻き込まれる場合もある。知らせることができて良かった」と振り返る。

 震災から10年が経過する本年度、判定士を担当する部署に異動した。当時の経験を生かし、新たな訓練を企画するなど判定士の質向上に取り組んでいる。判定が被害復旧の支援を受けるための「罹災(りさい)証明」と誤解されるなど、十分と言えない制度の知名度向上も必要と考える。

 震災が起きた10年度に548人だった本県の判定士は震災後、目標を800人に引き上げ、昨年度は824人に増えている。「決して目立つ存在ではないが、技術者の力を被災地の助けに生かせる制度」。引き続き積極的な登録を呼び掛けるつもりだ。

◎大規模建築物 耐震化に遅れ
 本年度から10年間を対象とする県土整備プランによると、2019年度末の県内の耐震化率は住宅が87%、ホテル、旅館といった不特定多数が利用する大規模建築物や緊急輸送道路沿いの建物などが62%だった。いずれも25年度末までに95%に引き上げる目標を掲げている。

 県によると、遅れが目立つ大規模建築物は民間が中心。資金面などが課題となっているため、利用可能な補助金などを情報提供して改善を目指す。県建築課は「地震で建物が倒壊すれば被害も県民への影響も大きい。耐震化率100%を目指し、働き掛けていきたい」としている。

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