震災10年 教訓をつなぐ 安全神話 群馬県直下に危険な地層 「災害の少なさ」は相対的に低いだけ
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
東日本大震災で造成宅地の盛り土が崩落した仙台市の現場=2011年3月、若井教授撮影

 地盤工学の専門家として、群馬大大学院理工学府の若井明彦教授(49)は東日本大震災直後に被災地に入り、地滑りや液状化の被害を調査した。集中的に調査した仙台市周辺では、大型構造物の被害は比較的少なかったが、丘陵地を切り開いた盛り土の造成宅地で滑動崩落(地滑り的変動)が多数発生していることを確認した。

 津波被害を除いても、同市内で4万棟以上の家屋が全壊または大規模半壊となった。「生命を奪われないまでも、こうして一瞬のうちに貴重な財産を失った方々が多数いたことも記憶しておきたい」と語る。

 一方、福島県から栃木県にかけて自然斜面の地滑りが多く見られ、各地で多数の犠牲者が出た。「火山噴火に由来する軽石などが風化し、粘土層になった軟弱な地層が影響したとみられる」と指摘。地層で何万年も眠っていた軽石が地下水などの影響を受けて押しつぶされ、水通しが悪くなって粘土化したものだ。今年2月13日に福島県沖で起きた地震の際、同県二本松市の郊外であった斜面災害もこれに類するという。

 東日本大震災の際、震源地から離れていた群馬県では同様の地滑りは確認されなかった。しかし、「もし群馬県直下で大地震があれば、同じことが起こりうる場所がいくらでもある」と訴える。

 一つの例が2019年の台風19号で3人が死亡した富岡市の土砂崩れ現場。崩れた崖の地層を調査したところ、軽石の風化した粘土層が見られた。台風19号の際は大雨が原因で滑りだしたが、同様の地質の地域では「地震による震動で土砂が流動し、周辺の家屋を一気にのみ込んでしまう恐れがある」と警鐘を鳴らす。

 群馬県は自然災害が少ないという「安全神話」が根強いとされるが、「大地震の頻度が相対的に低い、というだけにすぎない」という。最低限の備えとして、住宅の耐震性とライフラインが寸断されても生き延びる手段の確保を挙げ、「起こることは避けられなくても、対策を練っておけば被害を減らせる可能性がある。これは新型コロナウイルスの感染拡大から学ぶべき点だ」とした。

◎90年前にも震度6記録
 過去100年、県内でも大地震による被害はたびたび発生しており、最も影響が大きかったのが1931年9月の西埼玉地震だ。高崎や渋川で震度6、前橋や藤岡で震度5を観測、5人の死者が出るなど甚大な被害を受けた。ただ、その8年前に発生した関東大震災と比べ、県民の記憶は風化しているのが現状だ。

 西埼玉地震の震源とされる断層は、県が2012年に公表した新たな地震被害想定で、最大の被害が見込まれる「関東平野北西縁断層帯」の一部と推定される。今後30年以内の発生確率は低いが、県は報告書の中で「小さな値は決して安全を示す数字ではない」と注意喚起している。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
関連記事