東日本大震災10年 群馬県内でも追悼 被災者は古里へ募る思い 県民は心寄せ支援継続決意
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被災地に向かって黙とうする高崎市等広域消防局の職員
「大きな地震がおこりませんように」と願いが書かれたカキ殻の絵馬が並ぶ「出張カキ小屋」=Gメッセ群馬n
炊き出し訓練に参加する人たち

 東日本大震災から10年となった11日、群馬県内で暮らす被災者は悲しみや苦難を振り返り、復興の途上にある古里に思いをはせた。「震災を語る機会が減った」と風化を指摘する声の一方、「思いは変わらない」と活動を続けるボランティアも。「地域の絆を大切にしたい」と、助け合いの気持ちを新たにする声も聞かれた。

◎古里に思いはせる被災者、寄り添うボランティア

 「安らかに眠れますように」。福島第1原発事故で福島県南相馬市から避難後、前橋市へ移り住んだ松浦千景さんは、震災の時刻に合わせ、犠牲者を悼んだ。震災の1週間後、「すぐに帰れるだろう」と3日分の着替えを持って片品村へ避難。だが、事故の影響は長期化し、群馬への定着を決めた。当時小学生だった三男はこの春、高校を卒業。苦労が多かった10年間について「あっという間だった」と振り返った。

 中之条町の高井慶弘さん(78)も南相馬市から避難し、定住した。避難直後は夜中に突然目覚めるなど不安な日々だった。その後、地域の人の支えもあり、妻の久美子さん(73)と穏やかな日々を過ごす。震災について話すことはほとんどなくなったといい、「安心できる今の暮らしに満足している」と前を向いた。

 被災者の相談に応じたり交流会を開いたりする「ぐんま暮らし応援会」(高崎市)の向井美代子さん(73)は「自分たちの支援が本当に避難者に届いているか、つらい記憶を思い出させはしないか自問しながらの活動だった」と振り返る。「できることは全てやってきた。さまざまな形で今後も支援活動をしていきたい」と決意を新たにした。

 桐生災害支援ボランティアセンター長の宮地由高さん(73)は、震災直後から支援に取り組み、派遣したボランティアバスは150回以上に上る。宮城県南三陸町で慰霊法要をするなど被災者に心を寄せ続ける。同町では海を見渡せないほどの防潮堤が出来たが、復興は道半ばと感じる。「被災者のことが一番気に掛かる。今も大変だろう」と思いやった。

 県警機動隊の芹沢崇警部補(34)は震災から約10日後、岩手県陸前高田市で行方不明者の捜索に当たった。多くの建物が流された光景と、行方不明になった家族を捜す被災者の声が忘れられない。現地で抱いた使命感を今も大切にしているといい、「災害の際はいち早く駆け付け、悲しい思いをする人を一人でも減らしたい」と話した。

 地域で見守りなどを担う県民も思いを新たにした。玉村町の民生委員児童委員協議会は11日、定例会で会員らが黙とうした。梅沢英美さん(71)は「復興は道半ばで心の傷が癒えない人も多いと思う」。高齢者らの見守りに取り組む田村憲夫さん(74)は「有事の際に役立てるよう、町民との絆を大切にしたい」と話していた。

◎被災地に黙とうし犠牲者の冥福祈る 高崎市等広域消防

 高崎市等広域消防局(植原芳康局長)は同市八千代町の同局敷地内で、大型バスが絡む多重事故を想定した訓練を行った。訓練前には、参加者が被災地に向かって黙とうし、犠牲者の冥福を祈った。

 訓練は国道18号で大型バスと乗用車2台が衝突する事故があり、多数の負傷者が出たという設定で実施。救助隊員らはバスや車に取り残された人を次々に外へ運び出し、けがの程度に応じて治療の優先度を決めるトリアージを本番さながらに行った。

 同消防局は震災発生から2カ月余り、福島県相馬市で行方不明者の捜索活動や救急対応に当たった経緯があり、震災を教訓にしようと、毎年3月11日に訓練を実施している。植原局長は「災害への危機意識がより高まる。今後も地域住民の人命救助に努めていく」と話した。


◎宮城のカキ食べて復興支援 災害備えて炊き出し訓練

 11日は県内各地で黙とうが行われ、県民が被災地を思い、鎮魂の祈りをささげた。犠牲者を追悼する行事や、震災を教訓として有事に備える訓練も実施された。

 高崎市のGメッセ群馬で期間限定営業で宮城県産のカキを提供している「出張カキ小屋」は11日、東日本大震災が発生した午後2時46分に合わせ、スタッフや来店客が黙とうし、被災者や被災地に思いをはせた。

 炭火でカキなどを焼いて味わっていた人たちは皆、手と口を止めて約1分間、目をつむったり、手を合わせたりしていた。

 カキの殻を絵馬に見立てた「カキ殻絵馬」が用意され、来店客らは「大きな地震がおこりませんように」などと書き込んだ。

 「食べて復興を」との思いを込め、全国各地で出張カキ小屋を開く団体が21日まで営業している。本県での開催は5回目。同県石巻市のカキは通常の半値という1キロ600円で提供。10年の節目となった11日は1人1個をサービスした。

 責任者で前橋市出身の大竹悠介さん(32)は「カキを食べることで震災を忘れないでいてほしい。多くの人に食べてもらい、復興につながれば」と期待した。

 同僚という前橋市と安中市の女性客2人は「復興支援と思って訪れた。現地のニュースを見ると、心が痛い。忘れてはだめ」と話していた。

 地震などの災害に備えてもらおうと、明和町ボランティア連絡協議会(長谷川照子会長)は11日、町老人福祉センターで炊き出し訓練などを行った。会員80人が参加し、非常用の炊飯方法を実践したり、被災地で支援活動をした町職員の話を聞いたりして防災意識を高めた。

 新型コロナウイルス感染防止のため、3グループに分かれて実施した。炊き出し訓練では、洗った米と水を入れた袋をそのまま約30分ゆでて炊く「ハイゼックス包装食」を体験し、電気やガスが寸断された際の調理方法を学んだ。

 防災講話では、津波で甚大な被害に遭った宮城県東松島市に派遣された町職員の荒井信行さん(44)が体験を語った。当時の被災地の状況を振り返り、職員だけでは支援が行き届かず、住民の協力が不可欠だったと強調。「災害のとき、自分にできることを考えて行動してほしい」と話した。この他、新聞紙を使い、けがを防ぐためのスリッパ作りも行った。

 参加した有田理恵さん(55)は「日ごろの訓練や地域の人との交流を大切にして、有事の際には役立てたい」と話した。

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