前橋の養豚場でCSF 国内最大規模、1万頭を殺処分 高崎に続き県内2例目
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会見でモニターを使って説明する山本知事=2日午後7時20分ごろ、県庁
前橋市の養豚場でのCSF発生を受けて開かれた県の対策本部会議=2日午後6時ごろ、県庁

 群馬県は2日、前橋市内の養豚場で飼育されている豚がCSF(豚熱)に感染したと明らかにした。県は同日夜、この養豚場や、豚の移動があった関連する養豚場の計2カ所で飼育されている約1万頭の殺処分を始めた。国内でも最大規模の殺処分数となる。県内でのCSFへの感染は、昨年9月に確認された高崎市内の養豚場に続いて2例目。

 県によると、1日午前10時45分ごろ、養豚場から「死ぬ豚が増えてきた」と連絡があった。県家畜衛生研究所が22頭を検査し、このうち20頭が陽性と確認された。国の専門機関でも検査し、2日午後5時、感染が確定した。

 この業者は複数の養豚場で計約2万4千頭を飼育していた。3月初めにはワクチンが接種されていたものの、3月中旬から豚の異変が相次ぎ、1日までに約150頭が死んでいた。

 この養豚場の半径10キロ内には106の養豚場があるが、全てワクチンを接種済みのため、移動や出荷の制限はかからない。県や農林水産省は感染経路の解明を急ぐとともに、施設内の消毒や野生動物の侵入防止対策をはじめとした飼養衛生管理基準の順守を改めて周辺農場に呼び掛けている。

 殺処分や消毒などの防疫措置について県は獣医師や自衛隊に協力を要請する。殺処分した豚は養豚場が保有する土地に埋却する予定だが、数が多く、十分な場所を確保できない場合は他の場所も検討する。県建設業協会は埋却地を掘削するなどの準備を始めた。

 昨年9月には高崎市内の養豚場からCSFの感染が確認され、約5900頭が殺処分された。県は対策として、11月から月2回以上のワクチン接種体制を新たに構築。野生動物の侵入防止柵や消毒液の設置を進め、養豚場への継続的な点検、指導を行っていた。

 2例目の発生を受け県は2日、対策本部会議を開いて対応を検討。山本一太知事は会議後の臨時記者会見で「CSF対策は最重要課題として万全を期してきたつもりだが、2例目が発生したことは知事として痛恨の極み。本県にとって重要な養豚産業を守るため一丸となり、全力で対応する」と語った。

 県養豚協会の岡部康之会長は「周辺に養豚業が多い地域での感染判明となり、大変ショックを受けている。感染拡大を防ぐため、一人一人の養豚農家が、衛生管理の徹底をあらためて講じたい」と語った。

 本県の豚の飼養頭数は全国4位の約64万頭。前橋市は約19万頭を飼育し、養豚業が盛んな地域だ。農水省によると、CSFは豚やイノシシの病気で、人間には感染しない。万が一、CSFに感染した豚の肉を食べても健康に影響はない。

 ワクチンは、接種しても全ての豚が十分な抗体を得られるわけではなく、接種した豚の8割程度とされている。
(稲村勇輝)

◎県内農家、悲痛な声 「これ以上どう対策」「大半元気なのに…」

 前橋市内の養豚場でCSF(豚熱)の感染が明らかになった2日、県内の養豚農家から悲痛な声が上がった。昨年9月に高崎市内で起きた感染などを教訓に各養豚場は対策を強化。ワクチンの接種頻度も増やしていただけに、「これ以上どうすれば」と不安が広がる。前橋は全国有数の豚肉の生産地で、発生農場の周辺には養豚場が集積する。ウイルスの封じ込めと農家の安心確保に向け、県などは早急な対応が求められる。

 「ついに前橋でも」。前橋市内で養豚場を営む40代男性は声を失った。自身の農場でもワクチン接種や防鳥ネットの設置などの対策を講じるが、「それでも100パーセントは安心できない。これ以上、どうすれば良いのか」と不安を漏らした。

 「つらいけど、仕方ないのか」。同市の別の養豚業の男性は一報を聞き、重々しく語った。「殺処分される豚の大半は元気なのに」とやるせなさをにじませ、「今回の感染は原因が分からない。今まで通りの対策を続けるしかない」と不安そうに話した。

 県内ではCSFに感染した野生イノシシの生息域が拡大し、養豚場への感染リスクが高い状態が続く。養豚農家は飼育する豚に異常が起きるたびに不安に襲われてきた。

 「生きた心地がしなかった」。県内で養豚業を営む70代男性は2日、昨秋に自分の畜舎で複数の子豚が死に、届け出た時のことを思い出した。駆け付けた行政職員と、殺処分や埋める場所、地域封鎖をどうするかなどを夜遅くまで話し合ったという。「捨てることになる飼料を、せめて殺す前に食べさせてやろうかと考えた」

 検査で結局、感染していないことが判明した。今回の感染判明について、「かわいそう、なんて言葉じゃ言い表せない」。靴底を介して感染することもあるとして、一般の人は絶対に豚舎に近づかないよう協力を求めた。

 前橋市は2日午前、山本龍市長をトップとする対策本部会議を開き、関係部長らが現状や今後の対策などを確認した。その後の現場担当者の会議では消毒支援や住民対応、作業員の健康調査支援などに職員を派遣することを決めた。

 市は子豚から母親の抗体がなくなる時期と、ワクチン接種までの空白期間が生じないよう、10日に1回程度は接種できるよう調整していたという。市の担当者は、従来の対策では豚熱を防ぎきれない可能性があるとして「国の調査結果を待ちたい」と語った。(まとめ 真下達也)

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