前橋のCSF8割の殺処分終了 緊迫で心にも負担
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殺処分などの作業を終えて宮城体育館に戻る県職員ら=5日午後7時ごろ、前橋市鼻毛石町

 CSF(豚熱)に感染した豚が確認されたことを受け、群馬県などは6日、前橋市内の養豚場で豚の殺処分を進め、午後3時までに、殺処分対象の約8割に当たる7971頭の処分を終えた。これまでは子豚が中心だったが、親豚の殺処分を進めているという。

 同養豚場を巡る対応で、県は5日から高崎、桐生、伊勢崎、太田、渋川、みどりの計6市に応援を要請している。前橋市近隣の自治体職員にも作業に加わってもらい、防疫措置の迅速化に努める。

◎根強い不安

 獣医師や県職員らは緊迫する養豚場で、肉体的、精神的な負担を強いられている。国と県が感染経路の解明を急ぎ、まん延防止策を講じているが、養豚場が集積する地域での発生だけに、周辺の農家や住民には不安も根強い。

 日が落ちて辺りが暗くなった5日夜。作業に当たる職員らを養豚場に送り出す拠点となっている赤城南麓の宮城体育館(同市鼻毛石町)では、送迎のための大型バス10台ほどが連なっていた。午後7時ごろ、養豚場からバスが戻り、防護服姿の職員らが約6時間の作業を終えて戻ってきた。

◎「慣れない」

 20代の男性職員は「殺処分の作業には慣れない。体力的に疲れた」と話した。別の20代の男性職員も「臭いもきつく、生々しかった。ハードだった」と打ち明けた。

 殺処分対象は、昨年9月の高崎市内でのCSF発生時の2倍近くとなる約1万頭。県は、県内外の獣医師や自衛隊、県建設業協会などに応援を要請している。迅速に殺処分し、埋却するため4交代制とし、24時間態勢で作業に当たっている。

 現場の状況について、殺処分を担う30代の女性獣医師は「農場の規模は大きいが、衛生的な管理を心掛けている印象を持った」と説明。「機材トラブルや指示者の不足などの混乱は一部であるが、その中でも精いっぱい、かき集めた人員を動かしながら作業できている」と振り返った。

 懸念されるのは、作業従事者の心理的な影響だ。高崎市での発生時に動員した職員へのアンケートでは、回答者の約9%に当たる56人が心理的な負担が疑われる症状を訴えた。県は今回も従事した全職員にアンケートを行う予定で、「職員のケアに努めたい」としている。

◎まん延警戒

 周辺の養豚農家は殺処分の進捗を見守るとともに、ウイルスまん延への警戒を強める。いずれもワクチン接種済みだが、半径10キロ圏内には計106の養豚場がある。市内では昨年12月から3月にかけて、野生イノシシのCSF感染が計5件確認されている。

 養豚場を経営する男性は「農場がどれだけ衛生管理を徹底しても、ウイルスを媒介する小動物の侵入を防ぐのには限界がある」と指摘。感染リスク低減のためには「ワクチンの適切な接種に加え、野生イノシシの個体数を減らすことが不可欠だ」と訴える。3日に開かれた住民説明会では、埋却場所を巡り、水源への影響や生活への懸念などから不安の声が上がった。
(稲村勇輝)

◎埋却の建設業者 24時間対応で本業影響

 前橋市の養豚場での殺処分後の埋却には、市内の建設業者十数社の社員が3交代で24時間対応している。約1万頭に上る豚の死骸を扱うのは、精神的な負担も大きい。本業の工事の工期を先延ばしするケースも出ている。

 6日、同市の群馬建設会館。ホワイトボードの予定をにらみつつ、県建設業協会前橋支部の幹部が現場から電話連絡を受けた。作業するのは同支部の会員。高崎市で昨年、CSF(豚熱)が発生した前後から図上訓練などをしてきたが、実務は試行錯誤の繰り返しだ。

 養豚場内で殺された豚をトラックで運び、埋める作業を担う。埋却地に深さ4~5メートル、幅4~5メートル、長さ50メートルの大型の溝を4本用意。ここにブルーシートや石灰を使い、重機で何層にも重ねて約1万頭を埋める。

 これまでは子豚が中心で土のう袋に入れられ、死骸を直接目にすることは少なくて済んだ。それでも、殺処分が不十分で、埋却時に暴れ出す子豚も。作業中は汚物なども目に入る。今後はより大きな親豚を扱うことになるが、可能な限り袋に入れ、作業員の精神的負担を軽減するよう県などに求めるという。

 養豚場から埋設地まで約8キロの道のりを運ぶ。殺処分に埋却が追い付いていないのが現状で、腐敗を防ぐため、どれだけ効率的に作業を進められるかが焦点。本業の工期を延ばす会社も出ているが、「災害と同じ。地域を守る役割を果たす」(青柳剛会長)としている。

 県トラック協会(武井宏会長)も防護服や資機材の運搬などで協力している。
(五十嵐啓介)

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