《闘論》犬と猫 ペットの魅力 人間と共存歴史/自立で世話容易
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(右から)「犬派」の野口哲さんと、「猫派」の桑原麻里さん

 ペット界の二大勢力に変化が起きている。長く「ペットの王様」ともいわれてきた犬の飼育数が近年、大幅に減り、昨年12月に発表された業界団体、ペットフード協会(東京)の全国犬猫飼育実態調査で、ついに猫を下回った。いぬ年を目前にして起きた逆転劇は、愛犬家、愛猫家あいびょうかの話題となっている。

 毎日の散歩が必要で、予防接種の義務などがある犬は猫よりも飼育に手間がかかるイメージが強い。同協会によると1匹を生涯飼うのに必要な平均経費は、犬が約160万円、猫は約108万円。費用の差も影響したとみられる。

 ペット人気を二分する犬と猫。それぞれを愛する群馬県内の専門家2人に魅力を聞いた。

◎「従順で喜ぶ感情表現」全国ペット協会常務理事・野口哲さん

 犬好きの全国ペット協会常務理事、野口哲さん(48)=高崎市=は「犬は人間との共存の歴史が最も長く、一緒に暮らしやすい動物。人を迎え入れてくれる姿に心が和らぐ」と話す。

―飼育数を猫が上回った。
 犬が減少したためだと受け止めている。バブル時代のペットブームで急増した犬が寿命を迎え、減ってきたというのが現状ではないか。一方で動物愛護法が改正され、無資格者による犬の繁殖、販売ができなくなった。ブリーダーが減り、生産される犬の数も減少し、犬の値段が上昇したことも背景にあると考える。

―ペットの王様と言われるほど親しまれる魅力とは。
 人と共存関係にいる歴史が最も長い動物だ。2、3万年前の人の住居跡から、埋葬された犬の骨が見つかった。統率者の下で個々が役割を持つ社会構造も似ている。人間社会が狩猟から牧畜、農業へと発展する中で、狩猟や警備を担う使役犬から愛玩動物として役割を担うようになった。

―盲導犬やセラピー犬などもいる。
 犬好きなら、犬を見つめることで癒やしを感じる人は多いはずだ。犬を見つめることで幸福感を感じるとされるオキシトシンが人と犬の脳内で分泌されるとの研究結果もある。犬に触れたり一緒にいることで、無口だった人が笑顔で話すようになるなど、人を元気にさせてくれる事例は多い。福祉施設や介護現場の雰囲気を明るくすることや、刑務所の入所者の更正などに活用される事例もある。

―動物ならではのトラブルもある。対策は。
 幼いころに友人の飼い犬に手を伸ばしてかまれたことがある。犬にしてみれば、知らない人がいきなり手を出してきたのだから怖かったに違いない。人間の方が犬の習性を学び、犬の立場に立って行動することが重要だ。かみ癖やほえ癖があっても専門家の訓練で解決できるケースは多い。インターネットや書物の知識だけで判断せず、ペットショップの店員や獣医師などの専門家の助言が解決への近道だ。犬に幸せになってほしいという気持ちでやっている。

―どんな時も飼い主に寄り添ってくれる。
 飼い主が犬を散歩に連れて行くことにより、飼い主の健康増進が期待される。尾を振り一緒にいることの喜びを表す姿を見ると、思わず和やかな気持ちになる。こういった点で他の動物とは違う心身の健康に良い影響を与えてくれる動物なので、飼育環境さえ整っているなら、ぜひ犬と暮らす生活を味わってほしい。一度だけの人生だから、より多くの人に幸福感を感じてもらいたい。

 のぐち・あきら 1969年生まれ。大学卒業後、2003年に動物専門学校を営むMGL学園を設立、12年に理事長就任。全国ペット協会理事を経て17年から現職。高崎市

◎「気まぐれも散歩不要」獣医師・桑原麻里さん

 猫の魅力に理解を示す獣医師の桑原麻里さん(34)=前橋市=は「猫は自立的で犬に比べ世話をしやすい。高齢者を含めた幅広い層に受け入れられやすいのだろう」と持論を語る。

―飼育数で上回った背景は。
 猫は自立的な生き物で、犬と比べて世話がしやすい。食事を与えてトイレをきれいにしていれば、自分の力で生きていける。散歩も不要なので、高齢者や単身者ら幅広い層に受け入れられやすいのだろう。マンション暮らしの人の増加など、住宅事情の変化も背景にあり、猫を選ぶ人が増えているのではないか。

―職業柄、多くの動物に触れている。猫の魅力は。
 どんな動物も一緒に暮らすと家族であり、言葉は通じなくても心の通う存在だ。猫の場合、気の向くまま遊んだり寝たりしていることが多いが、気付いたら膝元にいたり、そっと布団の中に入ってきたりする。自由に振る舞っていても人間を必要とする、そんな「ツンデレ」な魅力が猫にはある。大きな目や、しなやかな外見から受ける神秘的なイメージも人を引きつける。

―犬とはまた違った愛らしさがある。
 盲導犬や狩猟犬など人間社会で役割を担っている犬もいる。他方、猫は鉄道駅のマスコットとして人気になった例もあるように、アイドル的なかわいさが求められているように感じる。そこにいるだけでほっとする存在だ。

―捨てられるなどして殺処分される場合がある。
 世話をしきれなかったり、経済的な理由などで捨ててしまうケースも少なくない。去勢や不妊手術がなされず、増えすぎてしまう問題も起きている。

 野生の猫が増えると、猫のエイズと言われるFIVや、寄生虫のフィラリアなどがまん延する危険性が高まる。マダニが媒介するSFTS、風邪に似た症状が出るコリネバクテリウム・ウルセランス感染症は、猫由来とみられる人間への感染、死亡例も報告されている。猫と暮らす以上は、どんな病気になるのか、正しい知識を持ってほしい。

―猫と長く上手に暮らすには。
 体の良い状態を維持する「ウェルネス」を意識してほしい。病気になってから動物病院へ行くのではなく、日ごろから定期的に健康診断を受けさせることを薦めたい。明らかなけがや病気でなくても、いつもと様子が違うのに気付いたら、そのままにしないことが大切だ。問題行動や食事管理などで分からないことも相談してほしい。ストレスに弱いので、猫の生活ペースに委ね、環境の変化をできるだけ少なくすることで、健康で長生きできる。

 くわばら・まり 1983年生まれ。高知県出身。日本獣医生命科学大卒。昨年4月から桑原動物病院(前橋アニマルメディカルセンター)副院長。群馬動物専門学校非常勤講師。前橋市

 《全国犬猫飼育実態調査》 業界団体「ペットフード協会」が毎年、インターネットの全国調査に基づき、犬猫の推計飼育数を発表。犬は2014年の飼育数が971万3000匹だったが、3年連続で減少し、17年は892万匹だった。一方、900万匹台でほぼ横ばいに推移していた猫は17年、前年から約22万匹増えて952万6000匹となり、1994年の調査開始以来初めて、飼育数で犬を上回った。

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