大久保は問う~女性連続殺人から50年(5)凶悪 手口新た 繰り返す惨劇
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群馬県内の行方不明者総数と生命に危険性があるなどの特異行方不明者

 「警察の追及をよっぽど意識していた」。捜査関係者は事件を振り返った。

 大久保清元死刑囚=1976年執行、当時(41)=の女性連続殺人事件のことではない。2017年に発生、群馬県の女子高生も犠牲になった神奈川県座間市の9人殺害事件についてだ。二つの事件は凶悪犯罪が半世紀たっても根絶されない現実を物語るが、手口の差は歴然としている。

 仮出所後、ベレー帽姿にクーペで若い女性を誘い出した大久保元死刑囚。これに対し、座間9人殺害事件の白石隆浩死刑囚(30)はツイッターを悪用し、被害者たちを呼び寄せた。

 〈家あります〉〈服あります〉
 ツイッターなど会員制交流サイト(SNS)には、誘い出しの文句が止めどなく発信されている。捜査関係者によると、メッセージが一定時間で消える通信アプリ「テレグラム」に移行してのやりとりを促すケースもある。

 行方不明者は犯罪被害に巻き込まれかねず、捜査機関は発見を急ぐ。SNSの運営会社に緊急照会を掛けてアカウントの開示を求めたり、「イチタン」と呼ばれる携帯電話の電波で位置情報を確かめる手法で特定したり…。ただ、契約者情報を記録した「SIMカード」を入れない若者も少なくない。「性犯罪にしろ金目当てにしろ、犯罪者は目的達成のため常に最新の手段を使う」(群馬県警幹部)。いたちごっこが続く。

 惨劇を繰り返させないために必要なことは何か。

 「大久保元死刑囚が現代にいたとしたら、同じ犯行に及んでいただろう」。精神科医でNPO法人性犯罪加害者の処遇制度を考える会(東京)の福井裕輝代表理事(51)は指摘する。「反社会性パーソナリティー障害。共感性がゼロに近く、殺害することなどにまるで罪悪感を感じなかったはずだ」と分析する。

 大阪教育大付属池田小の校内児童殺傷事件(01年)を起こした宅間守元死刑囚=04年執行、事件当時(37)=も人格的に同様の傾向にあったという。

 この事件が契機となり、05年に施行されたのが「心神喪失者等医療観察法」。不起訴処分を受けたりした心神耗弱者などには、同法を根拠に医療観察が必要か検討されることがある。適用の際は、(1)疾病性(2)治療可能性(3)社会復帰要因―が考慮される。

 大久保元死刑囚は女性への乱暴で服役、仮出所して1カ月以内に最初の殺人を犯した。福井代表理事は大久保元死刑囚の治療可能性に関して疑義を呈し、仮に現代であっても、適切な治療を受けずに社会に戻った可能性が高いと推測する。治安を守るため、こうした犯罪者にどの程度の治療を施すかは、人権との調和をいかに図るかが議論になり、「今なお非常に大きなテーマ」と説明する。

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