前橋官製談合 捜索前に群馬県警が市に「メモ」提供 個人情報含まれた内容 市長はブログ掲載
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前橋署から送検される課長補佐=8日午前8時55分ごろ
前橋東署から送検される元代表取締役=8日午前9時ごろ
前橋署から送検される代表取締役=8日午前9時ごろ

 前橋市の官製談合事件を巡り、群馬県警捜査2課の捜査員が、7日夜の市役所への家宅捜索前に、報道機関向けの広報資料とほぼ同じ内容が記された「メモ」を市に提供していたことが8日、関係者への取材で分かった。メモには逮捕された市職員だけでなく、業者2人の住所や年齢といった個人情報が書かれていた。山本龍市長は情報の大部分を7日夜の緊急会見前にブログに掲載した。

 強制捜査前の対象組織からは、その後の捜査で共犯者や余罪が出てくる可能性がある。そうした相手に広報資料と同内容のメモを渡すことについて捜査関係者は「通常ありえない行為」とする。

 県警は取材に対し、メモの提供を認めた。行政機関に家宅捜索に入る際は来庁者に配慮が必要で、時間帯などについて事前調整するが、メモの提供については「軽率だった」としている。市側から事件について繰り返し問い合わせを受けた捜査員が、内容が専門的で口頭で説明しても分かりにくいと判断し、広報資料をメモにして「記者レク(記者への説明)が始まったのを確認してから」渡したという。

 県警が容疑者を逮捕した際の広報資料には個人情報が含まれ、原則、県警記者クラブに加盟する報道機関のみに配布される。「取材活動を円滑にするためのもので加盟社以外の第三者に渡すことは想定していない」(県警)。取り扱いには通常、県警、報道機関とも細心の注意を払う。

 市によると、今回のメモには容疑者の氏名、年齢、住所のほか、逮捕の罪名や時間、犯罪事実など一部は報道向けの広報資料より詳しい内容が記されていた。逮捕された市職員だけでなく、業者2人の情報も載っていた。「打ち合わせ」に訪れた県警の捜査員から提供を受けたのは、7日午後3時20分から午後4時の間だったという。

 同日の県警による記者レクは午後3時半からで、市役所への家宅捜索は同6時35分ごろ始まった。

 山本市長は同6時12分のブログに、容疑者の住所と年齢は除いた部分について掲載。同7時半から臨時会見に臨んだ。当初、ブログの本文中には「頂きました記者メモから」とあったが、8日に「私が得た情報から」「資料から」などと複数回書き直された。外部から指摘を受けたためとしている。

◎他社に談合働き掛けか 市職員、業者選定の立場

 前橋市発注の公共工事の入札を巡り、官製談合防止法違反などの疑いで市職員と業者2人が逮捕された事件で、逮捕容疑となった入札に関して業者側の1人が自身の会社が落札できるよう同業他社に談合を働き掛けていたとみられることが8日、分かった。市契約監理課長補佐の男(50)=同市池端町=が、土木工事などの指名競争入札で、業者を選定する立場だったことも判明。県警は業者同士が癒着していた可能性を含め、事件の全容解明を進めている。

 逮捕容疑となった入札に参加した別の建設業者の幹部は上毛新聞の取材に、逮捕された業者から「『うちが(工事現場に)近いので、よろしくお願いします』と言われた」と、持ち掛けられたことを証言した。

 この幹部は「俺のところが落札するつもりなら、積算価格をかなり下回る価格で入れるが、工事を取るつもりはなかったので…」と言葉を濁した。自社の関係者が県警から任意の聴取を受け、同様の説明をしたという。

 一方、市契約監理課は建設工事の入札・契約などの業務を扱うが、課長補佐は市が発注する指名競争入札の参加業者を決められる立場だったことが、市への取材で分かった。

 市によると、業者の選定は工事の分野ごとに同課の管理職3人で分担。課長補佐は土木工事など6分野の指名競争入札で、参加する業者を選定していた。市の担当課から業者の実績を伝えられることもあるが、その情報は参考程度に扱われ、課長補佐が6分野の入札案件で大きな影響力を持っていたという。この中には会社元代表取締役の男(69)=同市今井町=の経営していた会社が参加する分野も含まれている。

 業者を選定した指名競争入札については、契約監理課幹部が選定業者の所在地や技術などを考慮し、不自然に業者が選ばれていないかを確認していたとされる。確認業務を担っていたという同課幹部は「(課長補佐の業者選定には)不自然な点は見当たらなかった」と話した。

 事件を巡っては、同法違反などで課長補佐、元代表取締役のほか、会社代表取締役の男(58)=同市日吉町=も逮捕されている。

 逮捕容疑は昨年7月と11月、課長補佐がそれぞれと共謀し、道路改良工事入札の予定価格を元代表取締役に、公園遊具整備工事入札の予定価格を代表取締役に教え、それぞれの会社に落札させた疑い。

◎課長補佐ら3人送検

 前橋市発注の工事を巡る官製談合事件で、県警は8日朝、官製談合防止法違反などの容疑で市契約監理課長補佐、課長補佐(50)と業者2人を前橋地検に送検した。

 課長補佐を乗せた車両は午前8時55分ごろ、前橋署を出発した。課長補佐は灰色のスエット姿で、車内では目を固く閉じてうつむいていた。代表取締役(58)も同署から送検された。

 元代表取締役(69)は午前9時ごろ、前橋東署から送検された。紺色の上着と黒色のズボン姿で、同署から出た際に一瞬顔を上げたが、すぐに視線を落として車に乗り込んだ。

 県警は同日、3容疑者の自宅を家宅捜索した。同市池端町の課長補佐の自宅は午前10時から約40分にわたって調べた。

◎「由々しき事態」山本知事

 前橋市発注工事を巡る官製談合事件を受け、群馬県の山本一太知事は8日の定例会見で、2019年に高崎市、20年に沼田市で同様の事件があったことを踏まえ「いくら何でも多すぎる。非常に由々しき事態だ」との認識を示した。

 その上で「(背景に)行政に残っている旧来型の利権構造、癒着構造みたいなものがあるのではないか」と指摘した。一方、県については「こういうことは起きないと信頼しているが、県職員が巻き込まれないような仕組みづくりは真剣に検討しなければと感じている」と述べた。

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