「16年ぶりの帰国」 投稿動画に反響、広がる共感の輪 家族への思い、激動の海外生活をつづる 邑楽のフカセンさん
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「映像を見てくれたり、コメントしてくれたりする人たちに、私も励まされている」と話すフカセンさん=4月下旬、館林、邑楽両市町にまたがる多々良沼公園

 「16年ぶりに帰国したら実家が超やばかった!」などと題した動画のシリーズが、投稿サイトのユーチューブで関心を集めている。自作するのは群馬県邑楽町のフカセンさん(47)。古里の日常風景に、亡き家族への思いや激動の海外生活を赤裸々に重ねた映像が、同じ境遇にある人を中心に広く共感されているようだ。「ネットが心と心をつなげている」。寄せられる多くの反響に、フカセンさんはインターネットの前向きな力を改めて感じている。

 玄関脇に空いた穴、抜け落ちそうな天井。屋外の炊事場でスパゲティを作り、仏壇に線香を上げる。空き家状態だった同町の実家を扱った動画で、「今の僕にとっては ここが一番大切な場所」と紹介する。昨年3月に初投稿した第1話は、89万回以上再生された。

 「異国に住んだ人が、いつかは通る道」「なぜか涙が流れた」―。コメント欄には、動画に共感した人のメッセージなどが600件以上並ぶ。同じように感じる人が多く、救われた思いがしたという。

 これまでに投稿した動画は112本で、1本は10分前後。チャンネル登録者は2万8000人余りになった。

 フカセンさんは同町生まれ。大学卒業後、一度は都内の企業に就職したが、小中高の同級生だった山崎智也さんが、自身の夢だった競艇で活躍する姿を偶然見て触発され、もう一つの夢だった海外での仕事を目指した。

 1998年にオーストラリアへ渡り、通信関係の会社で働いた。事情でいったんは帰国し、「これから伸びる市場」を狙って2003年からは中国に。07年に現地でコンサルティング会社を立ち上げ、最盛期は深セン、香港、広州、東京、ベトナムに拠点を置いたという。

 リーマンショックによる経営打撃などから立ち上がろうとした矢先、母親が病気に。会社関係のトラブルも抱える中、16年に母親、17年には父親が死去した。事業も失敗。さまざまなことが重なり、「もうだめだと思った」。20年1月、気持ちもお金も空のような状況で、古里へ戻った。

 「このまま生きていても仕方がない」。そう思う半面、積み重ねてきたことや家族への気持ちを、素直に全てさらけ出したいと感じた。ひらめいたのがユーチューブ。始めて3カ月ほどは視聴者はほぼゼロだったが、投稿を続けた。

 在米22年になる愛知県出身の女性(51)は、新型コロナウイルスで仕事の休みが増えた際、フカセンさんの作品を偶然見つけ、引き込まれた。日本に残す両親への気持ち、海外で頑張ってきたこと、人との縁などに感じ入るという。

 ネットを巡っては、会員制交流サイト(SNS)などがトラブルや犯罪被害などを生むこともある。それでもフカセンさんは思う。「私の映像を介して、他人同士がつながるケースもある。ネットの本来の役割は心と心をつなげるものではないか」
(五十嵐啓介)

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