草津源泉巡り~六つの湯の特徴と歴史を紹介~
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湯畑源泉
西の河原源泉
 

群馬県の草津温泉には六つの主要源泉があることはあまり知られていない。コロナ下で地元の観光地を見つめ直す「マイクロツーリズム」が注目されており、それぞれの湯の特徴や歴史などを紹介する。

(1)湯畑源泉 豊富な湯量のシンボル

 草津温泉街のシンボルで、観光名所としても有名な湯畑から湧き出る源泉。湯畑から延びる7本の「湯樋(ゆどい)」を通って、源泉は湯畑下の湯滝へと流れる。源泉は約52度と高温であることから、湯樋を通して外気に触れさせることで温度を下げ、加水によって源泉を薄めることなく入浴できる。

 湯畑の名称は、硫黄など温泉成分の沈殿物である湯の花が「収穫できる畑」に由来。草津の温泉は江戸時代から人気で、八代将軍の徳川吉宗らが湯畑からくみ上げた温泉を江戸まで運ばせ入浴したことから、「御汲上(おくみあ)げの湯」とも呼ばれた。

 湯の花採取は年数回行われており、湯樋にたまった湯の花を手作業ですくっている。年間に採取される湯の花の量は少なく、現在も貴重な土産物として人気だ。

 湯畑の湧出量は毎分約4000リットル。温泉は無色透明で、硫化水素の臭いが感じられる。新型コロナウイルスの不活化に効果があるとの研究結果も明らかになり、湯畑周辺には源泉を使った手洗い湯も設置されている。共同浴場「千代の湯」などで入浴できる。

【泉質】酸性、含硫黄、アルミニウム、硫酸塩・塩化物温泉

(2)万代鉱源泉 湧出最大 温泉街支える

 草津白根山の中腹が湯元の源泉。毎分6200リットル湧き出ており、草津温泉の源泉の中で最大の湧出量を誇る。源泉の温度は94度と最も熱い。冷水との熱交換によって温度が下げられ、各旅館などに配湯されている。

 熱交換の際に発生する熱水は、温水として各家庭に供給されているほか、温泉街の道路の下に引かれ、融雪などにも使われる。温泉街の営みを支える源泉でもある。

 1970年に硫黄鉱山の坑道から噴出したもので、この地で最も新しい源泉。多くの旅館へ配湯されており、共同浴場の御座之湯や西の河原露天風呂、大滝乃湯などでも楽しむことができる。

 泉質はpH1.6前後と、六つの源泉の中で非常に強い酸性が特徴で、入浴すると肌が「ピリピリ」とするような刺激があり、傷があると染みることもある。硫黄を含まないことから無色透明で臭いも感じられず、ぬめり感があるのが特徴。

 源泉の近くは立ち入り禁止となっているが、温泉街からは蒸気が吹き上がっている様子が確認できる。

【泉質】酸性、塩化物・硫酸塩温泉

(3)白旗源泉 頼朝の伝説残る白濁湯

 白旗源泉の歴史は古く、1193(建久4)年、浅間山麓で鹿やイノシシの巻狩をしていた源頼朝が、偶然湧き出る温泉を発見したと言い伝えられている。頼朝自ら荒れた源泉を改修し、入浴したともされ「御座の湯」と呼ばれた。その後、1897(明治30)年に源氏の白旗にちなんで「白旗の湯」と改称された。

 源泉は湯畑近くに位置し、温泉が湧き出る様子を見ることができる。源泉内には頼朝を祭った石祠(頼朝宮)があり、町文化財に指定されている。

 湯は硫黄分が強く、湯の花が温泉に混ざることで淡く白濁する。源泉の温度は約52度で湧出量は毎分約660リットル。pH値は2.1と強酸性で、刺激が強く入浴すると肌が少しピリッとする感覚を楽しめる。観光施設「熱乃湯」近くの公共浴場「白旗の湯」などで楽しめるほか、近くの旅館などにも引湯されている。

【泉質】酸性、含硫黄、アルミニウム、硫酸塩・塩化物温泉

(4)地蔵源泉 古い湯治場 再開発で光

 湯畑から東に徒歩数分の地蔵地区にある源泉。共同浴場「地蔵の湯」のそばには小さな地蔵湯畑があり、湧き出る源泉を見ることができる。地蔵源泉は、昔から眼病を癒やすと言い伝えられており、近くには「目洗い地蔵」と地蔵堂が設けられている。

 同地区は江戸時代後期から湯治場として栄えたが、昭和の中ごろから徐々に衰退。現在は「裏草津の創造」と題して町による大規模な再開発が進められている。源泉の周りには、温泉の蒸気で顔を潤す「顔湯」なども設けられる。

 お湯は、硫黄が含まれわずかに白濁。湯あたりは刺激があるものの、比較的優しい。地蔵源泉が引かれている地蔵の湯には草津温泉独自の入浴法「時間湯」が行われる浴室が設けられている。温度は約49度で湧出量は毎分約250リットルと六つの主要源泉の中で、最も少ない。地蔵地区周辺の旅館などでも入浴できる。

【泉質】酸性、含硫黄、アルミニウム、硫酸塩・塩化物温泉

(5)西の河原源泉 「鬼の泉水」湯の川に

 温泉街の中心に位置する湯畑と共に草津温泉の観光名所となっている西の河原公園に湧き出る。遊歩道が設けられた公園内には至る所から源泉が湧き出ており、湯の川となって流れている。

 「西の河原」の名称はその名の通り、温泉街の西側に位置する河原であることに由来する。ごつごつとした岩が転がり源泉が湯気を上げる荒涼とした景観から、かつては「鬼の泉水」とも呼ばれていた。現在も公園周辺には高温の源泉が湧き出し、茶釜が沸騰するような音を立てたことから「鬼の茶釜」と名の付いた湯の池や、自然の石が土俵のように並んだことに由来する「鬼の相撲場」などの名勝が残る。

 湧出量は毎分約1070リットル。源泉の温度は約44度で、熱いところでは50度近くになるところもある。万代鉱源泉と同様に、硫黄を含まず無色透明で柔らかな湯あたりが特徴。一般利用できる共同浴場はなく、引湯している宿泊施設でのみ入浴できる。

【泉質】酸性、アルミニウム、硫酸塩・塩化物温泉

(6)煮川源泉 外気触れずに配湯

 地蔵地区から公衆浴場の大滝乃湯につながる地蔵通りの急な坂道を下った先に位置する。源泉の近くには、煙突のある茶色のタンクが設置されている。地中から湧き出た湯はタンクの中にためられ、配湯される。

 源泉の温度は約48度と他の源泉よりも低めだが、外気に触れずに配湯されるため、源泉が引湯されている共同浴場「煮川の湯」は、ほかの共同浴場に比べても温度が高い。

 六つの主要源泉の中で唯一旅館に配湯されておらず、煮川の湯と大滝乃湯のみで入浴できる。湧出量は毎分約820リットルで刺激があり、硫化水素の臭いがする。無色透明だが、温泉成分の結晶の湯の花が混ざることで白濁することもある。

 大滝乃湯では、毎月2回、配湯管に付着した湯の花を洗い流しており、第2、4土曜に真っ白になった湯を楽しむことができる。

【泉質】酸性、含硫黄、アルミニウム、硫酸塩・塩化物温泉

(7)源泉楽しめる公衆・共同浴場 湯巡り違いを実感

 「恋の病以外効かぬ病はない」と言い伝えられる草津の湯。六つの主要源泉の違いを感じながら湯に漬かれば、新たな魅力が見つかるかもしれない。温泉街を散策しながら、これまでに紹介した源泉を巡った。

 出発地点は湯畑源泉が湧き出る温泉街のシンボルの湯畑。もうもうと湯気が立ち込める中、鼻を刺激する硫化水素の臭いが温泉情緒を感じさせる。湯畑の南西には、公衆浴場「御座之湯」があり、湯畑と万代鉱二つの源泉に日替わりで入浴できる。浴衣を貸し出しており、湯上がり後は浴衣姿での散策も楽しめる。

 御座之湯の隣には源頼朝由来の白旗源泉があり、近くの共同浴場「白旗の湯」で白濁した湯を楽しめる。

 湯畑から東に路地を進むと、再整備が進む地蔵地区に入る。共同浴場「地蔵の湯」では、眼病に効くと伝えられる地蔵源泉を堪能できる。

 地蔵通りの急な坂を下ると、煮川源泉が引かれる共同浴場「煮川の湯」がある。公衆浴場「大滝乃湯」では、温度の異なる煮川源泉の浴槽が並ぶ「合わせ湯」が楽しめる。

 滝下通りを通って再び湯畑に向かう道中には、共同浴場「千代の湯」がある。湯畑源泉が楽しめ、草津温泉独自の入浴法「時間湯」も体験できる。

 湯畑から泉水通りを進むと、西の河原公園にたどり着く。万代鉱源泉の公衆浴場「西の河原露天風呂」は、森林に囲まれた大きな湯船が特徴。夜にはライトアップも行われ、昼間とは違った幻想的な景色の中で温泉を楽しめる。

 共同浴場は地元住民の管理で運営されているので、入浴時はマナーを守って利用したい。(おわり)(桜井俊大が担当しました)

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