《開業100年 新前橋-渋川》八木原駅 開業時の面影を今に伝える駅舎 レトロな雰囲気撮影に
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八木原駅前で商店を営む(左から)渡辺正夫さん、光子さん夫妻
開業時の面影を今に伝える駅舎

 群馬県渋川市八木原のJR八木原駅前を長年見守ってきた商店がある。渡辺正夫さん(74)が営む「渡辺菓子店」だ。

 渡辺さんの祖母が引っ越してきて、この場所で店を始めたのが1923年ごろ。祖母はよく、「当時から立派な駅舎だった」と話してくれたという。

 駅には貨物の引き込み線があり、50年ごろは貨物の積み降ろしが盛んだった。周辺のセメント工場に運ばれる荷物のほか、陸上自衛隊相馬原駐屯地(榛東村)に向かう装備品も扱われていたようだ。時には、戦車が店の前を通り過ぎていくことがあった。

 「当時、駐留していた米軍の兵士が店でガムを買い、自分たちに配ってくれたこともある」。渡辺さんは少年時代を懐かしむ。

 自家用車が今のように普及しておらず、渋川の市街地へ遊びに行くときによく蒸気機関車(SL)に乗った。満員のため客車のドアを開けっ放しにして走っていたのが、思い出深い。

 電車に切り替わりつつある時代で、その珍しさから「『省線電車』が来るぞ」と車両を見るために走った。

 駅舎は手直しされながらも、開業時の面影を今に伝えている。

 「こういう駅を探していたんです」と映画関係者の目に留まり、撮影に使われたり、レトロな雰囲気を気に入った若者がスマートフォンで写真を撮っていったりするという。

 現在は通学で利用する人が多く、送迎の車も頻繁に店の前を行き来する。

 渡辺さんにとって、八木原駅は「青春の思い出」が詰まった場所だ。10年ほど前から目が不自由になったが、妻の光子さん(73)と2人で駅舎を前にすると、自然と笑みがこぼれた。(赤尾颯太)

 【八木原駅】混雑緩和や老朽化を背景に、渋川市やJR東日本などは、駅舎の建て替えや駅前ロータリーの整備といった周辺整備を検討し、地域住民や関係者と協議を進めている。2019年度の1日平均乗車人数は1080人だった。

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