《世界遺産登録7年 あすを紡ぐ⑤発信》大河やeスポ 好機に
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田島弥平旧宅で4月から公開されている「別荘」と「冷蔵庫跡」

 「見どころが増えたし、来て良かった」。群馬県伊勢崎市境島村の世界文化遺産、田島弥平旧宅を訪れた福田武昌さん(79)、君子さん(74)夫妻=同市茂呂町=は顔をほころばせた。敷地内では、修復工事を終えた「別荘」と「冷蔵庫跡」が4月から公開されている。2人は本県ゆかりの実業家、渋沢栄一を描いたNHK大河ドラマ「青天を衝(つ)け」を見て今月20日に渋沢の生家「中の家(なかんち)」(埼玉県深谷市)を訪ねた帰り、弥平旧宅へ立ち寄ったという。

渋沢と縁

 中の家と弥平旧宅との距離は約3キロ。蚕種製造で栄えた境島村は蚕種会社の島村勧業会社を設立する際、渋沢の指導を受けるなど縁が深い。「大河ドラマに境島村も登場するといい」と福田さん夫妻は期待する。

 大河ドラマの効果は大きい。新型コロナウイルス感染拡大の影響で落ち込んでいた弥平旧宅の来場者数は、2月の放送開始から増加。5月には昨年同月の6倍の1211人が訪れた。

 世界遺産の価値をどう伝えていくかは地元の課題だ。弥平旧宅だけでなく、地元に数多く残る蚕種製造民家も含めた発信に向け、民家所有者らが昨年10月、境島村登録文化財活用推進協議会を発足させた。協議会員で、自宅の国有形文化財への登録を目指す町田清さん(67)は「建物は地域の歴史の生き証人。登録が決まったら公開したい」と、ケヤキやヒノキを使った豪壮な建物の手入れを続ける。

 協議会の目標は、重要伝統的建造物群保存地区選定による面的な保存。コロナ下でも活動を前進させようと、4月に季刊紙を発刊した。協議会長の田島達行さん(72)は「所有者以外に関心を持ってもらうことが大事」と強調する。

コンテンツ

 一方、県は海外への発信に力を注ぐ。今月上旬に配信を始めた世界遺産のプロモーション動画は、構成4資産と県立世界遺産センターを外国人旅行者が訪ねる物語に仕上げた。日本語に加え、英語、フランス語、中国語の字幕付きで外国人が検索しやすくしている。

 若者が興味を持つコンテンツと組み合わせ、認知度を上げるアイデアもある。県と富岡市は3月、対戦型ゲームの腕前を競う「eスポーツ大会」を富岡製糸場で開き、その模様を配信した。企画した県eスポーツ・新コンテンツ創出課によると、ツイッター上に「大会中継を見て現地を訪れてみた」など、これまでにない反応があったという。

 大会運営を担った市も手応えを感じ、他の構成資産や史跡などをつないだeスポーツ大会開催や他県の世界遺産との連携を見据える。「将来的には製糸場設立にゆかりの深いフランスの世界遺産とeスポーツで連携したい」(市企画課)と展望している。(おわり)

 天笠美由紀、細井啓三、後藤遼平、北沢彩が担当しました。

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