《ニュース 追跡》子育て悩み悲劇相次ぐ 母親の孤立防ぐ場を 県や児相への相談、大幅増
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 前橋市富士見町小暮の住宅で6月、小学生の兄弟2人が刺殺された事件は殺人の疑いで逮捕された母親(38)が子育てに悩み、以前から児童相談所(児相)に相談していたことが明らかになった。関係者によると、母親は児相に相談する一方、苦しい胸中を明かせなかったとみられる。子育てや虐待に関する群馬県への相談は増え続け、子どもが犠牲になる事件は後を絶たず、専門家は「子育てしている人を社会の中で孤立させないことが必要」と訴える。

 県内の児相が受理した子育てに関する相談件数は2004年度に大幅に増えて以降、高水準で推移。20年度は1万901件(前年度比317件増)だった。

 内訳は虐待や保護者の死亡、離婚などによる養育困難児に関する「養護」が4398件、肢体不自由や心身発達に関する「障害」が3435件、不登校や育児・しつけに関する「育成」が1572件など。特に養護関連が増えており、県は地域住民による通報の増加や、児相と関係機関の連携強化による虐待の認知が増えたことが背景にあるとする。

 各種の相談に、児相は市町村と連携して対応しており、専門知識を要する場合などは児相職員が家庭を訪れ、直接話を聞くこともある。ただ、ある職員は「家庭内の事情全てを把握することは難しい。本音が言えない人もいる」とする。

 相談者との距離を縮め、本音を引き出すためには対応する職員のスキルアップが課題だ。

 県内では子どもが犠牲や被害者となる事件が相次いでいる。太田市で4月、生後7カ月の長女の鼻や口をふさぎ殺害したとして30代の母親が殺人容疑で逮捕された。「育児などに悩んでいた」と供述したが、以前に虐待やトラブルは確認されていなかった。5月には「泣きやまないことに腹を立てた」と、1歳5カ月の長女に熱湯をかけ、けがを負わせたとして高崎市の20代の母親が傷害容疑で逮捕される事件が発生した。

 前橋市内でファミリーホームを運営する宮子宏江さんは「育児に関わる大人が疲労やストレスでゆとりがなくなるのは自然なこと。誰もが『虐待スイッチ』を持っていることを理解し、親が気軽にサポートを受けられる社会になればいい」と話す。

 県社会福祉審議会児童措置・虐待対応専門部会長の小川恵子さんは、教育や医療を含む多面的な支援の必要性を訴える。「事件に発展してしまったことを特異な事例とせず、あらゆる可能性を想定して関係各所が情報共有しておくことが大事」と強調した。(飯島礼)

 【メモ】前橋市富士見町小暮の事件で、母親は兄弟(自身の子)と栃木県に住んでいた時から心身の不調で「養育が困難」と同県の児相に相談。2018年11月から兄弟は児童養護施設で暮らした。母親は前橋市内で男性と同居を始め、生活が安定したとして20年10月に兄弟を引き取った。群馬、栃木両県の児相が同行訪問などをし、同年12月から群馬県児相が継続指導を開始。電話連絡や家庭訪問をしながら生活状況を確認したり、市と連携し各種サービスにつなげたりしていた。大きな問題はなく、生活も安定している様子だったとし、近く児相としての指導を終える予定だった。

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