《県防災ヘリ墜落事故3年》安全への教訓 新機体運用に土台固め
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新機体で訓練に臨む2人の操縦士。運航再開に合わせてダブルパイロット制を導入する(県提供)

 群馬県に防災ヘリコプターが“不在”の状況下で、その働きが期待される事案は日々起きている。特に2月に桐生市、4月にみどり市で発生した山林火災では、県外から駆け付けた防災ヘリが散水する映像が全国ニュースに流れた。県防災航空センター(前橋市)が協定などに基づき自治体に出動を要請。センター職員が地元消防の現地指揮本部に赴き、無線で情報を送って援助した。

■練度高める
 「本県のヘリが運航再開していれば、もちろん出動したケース」と同センターの植野敏行所長。昨年12月に納品された新機体は、4月から許可を得た各地の施設で、要救助者のつり上げ訓練などを続けている。今後1カ月ほどで訓練を終える見込みだ。

 ヘリは操縦士資格に加え機種ごとの資格が必要で、3月までは操縦士らの養成に充てた。梅雨には悪天候で訓練の延期もしばしば。それでも安易に再開を急がず、地道に練度を高める。県が新機体の運航を委託した朝日航洋(東京都)の操縦士は、「安全が全ての土台」と口をそろえる。

 主に機長を担う予定の田中啓省知(ひろみち)さん(48)は自衛隊などで約30年操縦かんを握った。防災ヘリは初めてで、「高難度の技能を一つずつ身に付ける」と表情を引き締める。鳥取県防災ヘリの機長も務めた教官役の松本泰昭さん(43)は「ワンステップずつ向上している。できることをやっていく」と堅実さを強調する。

■チェック体制
 同社は飛行時間などの国基準を満たした人材を派遣するが、事故では当時の別の委託先の運航管理がずさんだった可能性が指摘された。県が教訓とすべきは、信任でも放任でもない委託先のチェックだ。

 新体制では、乗員が訓練の手順や気象、健康状態を確かめる毎朝の打ち合わせに県管理職が必ず同席。訓練飛行に同乗することもある。県と同社による月例会議で直近の事例や気になった点を共有。山岳、水難、消火といった活動ごとに操縦士らの試験も行う。

 同社は取材に「安全の土台となる信頼関係を築く上で県との意思疎通は不可欠。月例会議などを通して現場クルーだけでなく本社も関与していく」と答えた。

 また、事故前と大きく変わるのがダブルパイロット制の導入だ。事故機を操縦した機長は機体の姿勢を錯覚する「空間識失調」に陥ったとされ、アクシデントに対応できる別の操縦士が常に乗るようにする。

 松本さんは、機長が普段から無線連絡やスイッチ操作を副操縦士と分担し、操縦や状況判断に集中できる点も利点に挙げる。パイロット目線での助言や飛行前の機体の二重チェックも可能になる。

 2022年度の導入義務化を前に操縦士の需要が全国で高まっている。本県の場合は田中さんともう一人を主に機長とし、副操縦士も複数人を用意してローテーションを組む予定。有事に人材不足で飛べないケースの防止を目指す。
(まとめ 高野聡)

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