設置不許可は「適法」 群馬の森追悼碑で東京高裁判決 市民団体が逆転敗訴
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群馬の森に設置されている追悼碑=26日、高崎市
市民団体の報告集会で語る角田氏=26日、東京都
 

 県立公園群馬の森(群馬県高崎市)にある朝鮮人労働者追悼碑の設置許可を県が更新しなかったのは違法だとして、碑を管理する市民団体が処分取り消しなどを求めた民事訴訟の控訴審判決が26日、東京高裁であった。高橋譲裁判長は「県の更新不許可処分は適法」とし、処分を違法とした一審前橋地裁判決を取り消し、市民団体の請求を棄却した。

 原告の市民団体は「『記憶 反省 そして友好』の追悼碑を守る会」。追悼碑は2004年、「守る会」の前身団体が、近隣諸国や日韓、日朝の相互理解を深めることなどを目的に設置申請。「宗教的、政治的行事を行わない」との条件を付け、県が許可した。

 その後、05年、06年、12年の追悼式で、出席者が「政府は強制連行の真相究明に取り組んでいない」などと計3回にわたって「強制連行」という文言を使って主義、主張を述べたため、県は14年に設置許可を更新しなかった。

 判決で高橋裁判長は、建立時に県と団体が話し合い、碑文にあった「強制連行」の文言を削除した経緯を踏まえ「強制連行という用語を使えば政治的行事と見なされることは、団体も認識していた」と指摘。こうした発言によって追悼碑が中立的な存在ではなくなり、「公園施設」としての前提を失ったと判断した。団体側が求めていた更新の義務付けは却下した。

 判決を受け、原告側弁護団長の角田義一元参院副議長は「非常識な判決だ。徹底的に闘う」と非難し、上告する意向を示した。山本一太知事は「妥当な判決であると考えている」とのコメントを出した。

 一審判決は「県の処分は妥当性を欠く」として不許可処分を取り消したが、原告が求めた更新の義務付けまでは認めず、双方が控訴していた。
(落合琢磨)

◎「到底容認できぬ」「対応認められた」 憤る原告、県は評価

 県立公園群馬の森(高崎市)にある朝鮮人労働者追悼碑を巡る民事訴訟。一審判決から一転、県の処分を「適法」とした26日の東京高裁の控訴審判決に、碑の存続を求めてきた市民団体で驚きと憤りが広がった。県は判決を評価し、早期撤去を求める声も勢いづく。市民団体は上告する構えで、決着は最高裁に持ち越される見通しだ。

 「怒りを通り越して、あきれ果てた」。判決後、市民団体「『記憶 反省 そして友好』の追悼碑を守る会」が参院議員会館で開いた報告集会。弁護団長の角田義一元参院副議長は声を荒らげた。

 同会の藤井保仁事務局長は「一審が覆るとは予想だにしなかった」とし、「歴史修正主義に国が進んでゆく。中立性が形骸化してしまっている」と高裁の判断を批判した。判決について、弁護団事務局長の下山順弁護士は「憲法に保障された表現の自由を無視している。到底容認できる内容ではない」と強調した。

 一方、控訴審判決を受けて山本一太知事はコメントを発表。判決の詳細は確認できていないとした上で、「主張の通り、県の対応が適正であったことが認められた妥当な判決であると考えている。今後とも県立公園の適切な管理、運営に努めていく」とした。

 北朝鮮による日本人拉致被害者家族を支援する「救う会・群馬 群馬ボランティアの会」の大野敏雄さん(85)は、碑の前で設置許可条件に反する政治的行事がたびたび行われてきたとして2014年、県議会に許可取り消しを請願した。控訴審の行方を見守っていたといい、「本当に良かった。一刻も早く碑を撤去してほしい」と求めた。

 県立公園に絡む法廷闘争はさらに長期化する見通しだが、県民の関心は高くないようだ。園内をほぼ毎日歩いているという高崎市の男性(67)は「自分の生活には関わらない問題。追悼碑の近くをよく通るが、特に気にしていなかった」と話した。
(まとめ 真下達也)

◎行政の姿勢 追認は問題
 千葉大の新藤宗幸名誉教授(行政学)の話 公園は娯楽やスポーツのためだけに整備されるものではない。旧建設省は、都市公園法の趣旨・目的に教養や文化水準向上が含まれると認めてきた。歴史的経緯を近隣諸国と共有するために追悼碑の設置を認めておきながら、追悼式典で「強制連行」という発言があったから政治的だとか、公園の平和を害すると言って問題視するのは、歴史に学ばない姿勢の表れだ。朝鮮半島の人々を連れてきて、劣悪な条件で労働させた事実から目を背けている。裁判所がこうした行政の姿勢を簡単に追認してしまうのは問題だ。

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