限界集落・南牧村の名産パン 窯などの設備を村に寄付 亡き生産者の遺志継ぎ、新たな利用者の下へ
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
中沢さんがパンづくりに使っていた石窯

 観光客や村民に愛された群馬県南牧村の名産品「とらおのパン」が販売終了となり、生産者の中沢虎雄さん=同村桧沢=が窯などの設備と小屋を村に寄付した。7月に村が利用者を募り、村内で林業を営む企業に貸し出すことが決まった。村は同月に亡くなった中沢さんの思いを受け継ぎ、地域活性化につなげたい考えだ。

 小屋は、同村と上野村を結ぶ湯の沢トンネルの南牧村側出入り口から約1キロにある。木造平屋建てで床面積は約46平方メートル。石窯や机などを備える。

 中沢さんは2004年のトンネル開通を機にパン作りを始めた。村外との交通の便が良くなり、「何か観光的なものができないか」と思い立った。炭づくりに使っていた自宅近くの小屋に石窯を設け、焼いたパンを小屋や村の駅(現道の駅オアシスなんもく)で販売した。

 パンを作る週5日の起床は午前3時。カシなど堅い木を使って約2時間半かけて窯の温度を上げ、約200度に冷ましてから余熱でパンを20個ずつ焼いた。1日に数回、道の駅まで運んだ。売り始めてから3年ほどで楕円(だえん)形でふっくら、ほのかに甘いパンは同駅の人気商品になった。

 大学で林学を専攻し、実家の林業を継いだ中沢さんは木にこだわった。妻の京子さん(83)は熱源にガスや電気を提案したが、手間がかかる木を使い続けた。素材や調味料も厳選。国産小麦を使い、きび砂糖で自然な甘みを出した。

 今年4月末の人間ドックで末期がんが見つかり、自宅で闘病しながら事業を整理し、5月に引退。7月14日に83歳で帰らぬ人となった。京子さんは「いつも何かに挑戦していた」と振り返り、17年続けられたのは「喜んでくれる人がいたからでは」と話した。

 発売当初からのファンの小池英明さん(58)=同村=は「おみやげにすると、村外の人に喜ばれた。もう味わえないと思うと本当に残念」と惜しんだ。

 長谷川最定村長(68)はパンが道の駅の売り上げの約2割を占める売れ筋商品だったと説明。寄付に感謝し、「遺志を受け継ぎ、新たな利用者のもと地域活性化につなげたい」とした。

 小屋を使うサンエイト企画の古川拓社長(27)は、「パンやピザづくりのほか、農林業と掛け合わせ新たな雇用や文化を生み出したい」とコメント。いずれ村の名産品だったパンを引き継ぐ考えを示した。(黒沢豊)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
関連記事