群馬の森追悼碑訴訟 「裁量権の逸脱」 処分「違法」で県敗訴
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集まった支援者に垂れ幕を掲げる原告側弁護士=14日午後2時すぎ、前橋地裁前
 

 県立公園群馬の森(高崎市)にある朝鮮人労働者の追悼碑について、県が設置許可を更新しないのは違法として、市民団体が処分の取り消しを求めた民事訴訟の判決言い渡しが14日、前橋地裁であった。塩田直也裁判長は「県の処分は社会通念に照らして著しく妥当性を欠き、裁量権の逸脱で違法」として、処分を取り消した。

◎追悼式が「政治的行事か」争点

 原告の市民団体は碑を管理する「『記憶 反省 そして友好』の追悼碑を守る会」。訴訟は碑の前で開かれた追悼式が、両者で取り決めた許可条件に反する「政治的行事」に当たり、都市公園の機能が失われたかなどが争点となった。

 判決は、碑文案から「強制連行」という言葉を削除するなど両者で協議した経緯があり、政治的行事の定義には共通認識があったと指摘。団体の幹部らが2005、06、12年の追悼式で「強制連行」という言葉を用いて歴史認識に関する主義、主張を述べており、死者を悼む目的を超えて式全体が条件に反する政治的行事になったと認定した。

 一方、こうした行事があったにもかかわらず、12年に式を取り上げた新聞記事が出るまで碑の撤去を求めるなどの抗議活動は確認されておらず、「政治的行事がただちに都市公園の機能を失わせたとは言えない」と判断した。団体側が求めた更新の義務付けは退けた。判決が確定すれば、県は更新を許可するかどうか判断し直すことになる。

 大沢正明知事は「違反があったにもかかわらず不許可処分が取り消され残念。判決文を検討し、対応を考えたい」とコメント。原告側弁護団長の角田義一元参院副議長は「県の処分は違法だと認定された。大きな成果だ」と強調した。

 碑は政治的な行事などをせず、10年ごとの許可更新を条件として、同会の前身が04年に設置。県は式で政治的発言があり、碑が街宣活動の原因になって都市公園に設置を続けるのは不適当として、14年7月に許可を更新せず撤去を求めた。

◎「不当はっきり」「取り消し残念」評価と不満 交錯

 県立公園群馬の森(高崎市)にある朝鮮人労働者の追悼碑について、前橋地裁が県による設置更新の不許可処分を取り消す判決を言い渡した14日、原告の市民団体側は「県の処分が不当だとはっきりした」と評価し、県は「処分の取り消しは残念」とした。

 「これまでやってきたことが認められた」と、記者会見した市民団体の森野善右衛門共同代表は喜んだ。市民団体は支援者らの意見を踏まえ、控訴をするかを検討するという。

 判決は、原告が碑を設置した2004年から12年までの3回の式典が「政治的行事」に当たると認定。これに対し、弁護団の下山順事務局長は「教科書にも記載のある強制連行の言葉を使えば政治的行事になるのか。納得できない」とコメントした。

 判決後の原告側の集会に参加した石田正人さん(65)=前橋市=は「碑を設置した意味を改めて考えてほしい。今後は設置の許可を望む」と県に要望した。

 一方、記者会見した中島聡県土整備部長は処分取り消しについて、「違反したのだから更新の不許可は妥当と考えている。非常に残念だ」と述べた。

 県議会に追悼碑の設置許可取り消しを請願するなど碑の撤去を求めてきた「救う会・群馬 群馬ボランティアの会」の大野敏雄事務局長は「政治的行事が行われていたことは明らかで不当な判決。県はすぐに控訴すべきだ」と語気を強めた。

 17年に追悼碑を模した立体作品を県立近代美術館(高崎市)に展示しようとして断念した美術作家の白川昌生よしおさん(70)=前橋市=は「追悼碑は住民が共有している記憶を表現したもの。時の権力により、人々の記憶が左右されることへの問題提起になったのではないか」と話した。

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