消える なじみの味 前橋「紅蘭」40年で幕 老舗で廃業相次ぐ
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閉店まで「感謝を込めて精いっぱいの味を提供したい」と話す内山さん夫妻
紅蘭本店の名物、長崎ちゃんぽん(写真は大盛り)

 群馬県の前橋市中心市街地で親しまれてきた中華料理店、紅蘭本店(千代田町)が20日の営業を最後に閉店する。店主の内山孝雄さん(67)が気力と体力の限界と判断し、40年の歴史に幕を下ろすことにした。経営者の高齢化や後継者不足の波は、長年愛されてきた各地の名店にも押し寄せ、廃業や休業が後を絶たない。消えゆく「なじみの味」を惜しむ声が上がる。

◎体力の衰え、人手不足…複雑な胸中も 感謝

 「本当に閉めちゃうの」「もう年だから。無理が利かないの」

 閉店を知って訪れたなじみの女性客に、内山さんの妻、雅江さん(66)が明るく振る舞った。14日はオープンからわずか10分で客席60席が埋まり、順番待ちの列ができた。

 内山さんは兄、勝弘さん(75)が始めた同店を20代で受け継いだ。周辺は前三百貨店やスズラン、ニチイ、前橋西武の買い物客でにぎわい、中央通りは出前の自転車が通れないほど混んだ。店も看板メニューの長崎ちゃんぽんや長崎皿うどんが人気となって繁盛。一時は太田市や桐生市で系列が4店に広がった。

 街中の人出がすっかり減った現在も経営は順調だ。だが、長年頼りにしてきた従業員が昨年9月に病気療養のために退職。自身も体力の衰えを強く感じ、閉店を決断した。

 今月から「20日閉店」を掲示すると、客足は3倍に。毎月宴会で使ってくれた団体客は「最後に」とコーラスを披露した。店内は常連客から贈られた花束や鉢植えが彩る。

 「こんなに多くのお客さんに支えられていたとは。いい従業員にも恵まれた」と内山さんは目を潤ませる。閉店まで精いっぱい中華鍋を振るつもりだ。

 惜しまれつつ閉店する老舗は各地で後を絶たない。

 高崎市通町にあったラーメン店「東竜」は2015年末に閉店。店主の細矢政男さんは約1年半後に亡くなった。妻のチエ子さんは「たくさんの客に囲まれ、夫と頑張った40年は幸せだった」と振り返る。

 昨年6月に閉店した同市八千代町のとんかつ店「きらく」も、経営していた義兄弟の友光孝雄さん(71)と柳沢茂さん(68)の体力が衰えたために閉めざるを得なかった。同市相生町の老舗ラーメン店「清華軒」は16年秋に「深刻な人手不足」を理由に休業した。

 太田市丸山町の「田吾作」は同年4月、32年の歴史に幕を下ろした。店主の多田光三さん(70)と妻、たみ子さん(66)の体力の衰えや体調不良のためだ。古いなじみ客が今も、閉店を知らずに訪ねてくることがある。そんな時、多田さんの胸中は複雑だ。

 「寂しそうに帰る姿は申し訳ない。ただ、覚えていてくれる人がいるのは、何ともありがたい」

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