《ニュース最前線》中高生自転車事故 全国最悪 どう防ぐ
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
自転車で学校へ向かう中学生=6日、伊勢崎市内
1万人あたりの事故件数
高校生セーフティ協議会で意見を発表する参加校の生徒=3月、前橋署

 中高生の自転車事故が後を絶たない。民間団体の調査によると、群馬県内では中高生の事故がここ数年、年間700~600件台で推移している。通学中の自転車事故の割合は、3年連続で全国最悪だ。

◎多い車 高いリスク

 今年に入っても、前橋市で、登校中の女子高校生2人が乗用車にはねられ、1人が死亡する痛ましい事故が起きている。県は現場付近に道路標示を設置し、道路の拡幅も急ぐ。県警は地道な街頭指導や組織改編で事故対策に取り組む。

 中高校生側にも身を守るためにはどうすればいいのか、自ら考える動きが出てきた。前橋署では、高校生が通学時の交通安全について意見を交わす座談会が開かれ、市立前橋高の生徒が通学時のヘルメット着用を提言した。

 進学や転居を機に、自転車通学を始める中高生も多い時期。どうすれば悲惨な事故を防げるのか。関係者の取り組みを追った。

■北関東でも突出
 辺りに散らばったドアガラスの破片、大きくへこんだバンパー、ひしゃげた自転車のタイヤ―。

 始業式の朝に悲惨な事故は起きた。1月9日午前8時25分ごろ、自転車で登校していた市立前橋高の女子生徒2人が高齢者の車にはねられて重体となり、1人は同月末に亡くなった。県警は、自動車運転処罰法違反(過失傷害)の疑いで、運転していた80代の男を逮捕。男は昨秋の免許更新時の検査で、認知機能の低下の恐れがあるとされていた。

 中高生の自転車事故が後を絶たない。自転車通学の生徒が多い本県では、通学時に事故に遭うリスクがとりわけ高い。

 民間団体「自転車の安全利用促進委員会」(東京)が、2016年に自転車通学中の中高生が当事者となった事故を調べたところ、都道府県別の生徒1万人当たりの発生件数は中学(27.60件)、高校(91.96件)ともに群馬が最多だった。いずれも前年より減ったものの、中高で3年連続のワースト1位。北関東3県でも突出している。

■長い通学距離
 実際、通学中に危険を感じたことのある中高生は少なくない。市立前橋高3年の女子生徒(17)は自転車で登校中、交差点で自転車と衝突したことがある。急いでいて周囲をよく確認しなかったことが原因だった。「子どもやお年寄りだったら大けがをさせていたかもしれない」。幸い相手も自分もけがはなかったが、この事故を機に一時停止やカーブミラーの確認を徹底するようになったという。

 自転車で通学する前橋市の中学3年の女子生徒(14)は「大通りを走っていると通勤で急ぐ車がビュンビュン追い越していくので怖い」と話す。歩道は徒歩通学の小学生が多いため車道側にはみ出してしまうこともあり、慎重に乗っているという。

 群馬県がワースト1となる背景について、同委員会委員で三井住友トラスト基礎研究所の古倉宗治さんは、1人当たりの自家用車数が全国1位で車が多用されることや、通学距離が長いことが事故に遭うリスクを高めていると推測する。同委員会は「法令順守に加え、ブレーキやタイヤの点検、体に合った自転車選びが大切」と日ごろのメンテナンスの重要性を訴える。

■愛媛は義務化
 事故から自分の身をどのように守るか。3月に開かれた前橋署管内の高校生が身近な危険への対処を考える「高校生セーフティ協議会」で、通学時の安全対策がテーマに据えられた。4校の約30人がそれぞれの学校の意見を発表し合った。

 被害を軽減する有効な手段として話題に上ったのがヘルメットだった。中学生は通学時にヘルメットを着用する一方、高校生はかぶらないためだ。

 市立前橋高は生徒2人が死傷した事故後、ヘルメット着用について全校アンケートを実施した。同校の代表生徒は、生徒の85%がヘルメットの有効性を認識する一方、着用をためらう生徒も80%いると報告。「みんなが着用するなら構わない」という意見も多かったという。デザインを吟味した上で着用の義務化を提案した。

 他県ではヘルメットの着用を義務付けている例もある。相次ぐ自転車の重大事故を教訓に、愛媛県の県立高校は15年からヘルメット着用が自転車通学の許可要件となった。当初、生徒から反発の声もあったが、生徒や教員、メーカーが一体となってデザインや色を検討し、生徒が着用したくなるヘルメットを作り上げたという。愛媛県教委の担当者は「今では通学時の着用率は100%」と強調、安全対策に効果があると指摘している。

◎出合い頭が6割…県警まとめ

 自転車事故の形態は決して多くない。県警のまとめによると、2017年に県内で自転車が関係した人身事故は1981件あり、このうち出合い頭の事故が約6割を占めた。これに右折時と左折時を加えると9割近くに達する。一時停止をしなかったり、周囲の確認が不十分だったりするのが主な原因という。注意深い運転を心掛けていれば防げた事故も多いとみられる。

 事故防止に向け、県警は学校での自転車安全教室や街頭指導などを続けてきた。分析力を強化し、取り組みの有効性を高めるため、本年度から交通安全対策統括官を新設。事故分析を担当する交通安全対策室の人員も倍増した。

 都筑誠交通安全対策統括官は「春の交通安全運動でも自転車の安全利用の推進が重点項目となっている。刑事部門など他部署との連携を図り、県警全体で事故防止に当たる」と力を込める。

《記者の視点》まず交通弱者対策

 高齢運転者の免許の自主返納について重ねて取材してきた。高齢者の苦悩を聞いて感じるのは、車と県民の生活は切っても切れない関係にあるということだ。公共交通が限られる群馬県で、返納には生活様式を変えることや家族の支援が欠かせない。返納をためらう気持ちも理解できる。

 一方で、車が関係する事故は命に直結する。昨年県内で起きた自転車に関わる死亡事故のほとんどが、自転車の運転者が車にはねられたことによるものだった。自転車側が加害者となるケースもあるが、ドライバーよりも歩行者や自転車の運転者が大きなリスクを背負っているのは事実だ。

 車を運転できる環境にない、いわゆる「交通弱者」だけが不便と危険を強いられるような社会を変えるべきだと強く感じる。中高生の命を守るために、車を運転する大人こそ真剣に取り組まなければならない。(伊勢崎支局 金子雄飛)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
関連記事