9人乗り 防災ヘリ「はるな」墜落 県境稜線トレイル視察中
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墜落現場付近の山に入る消防隊員ら=10日午後6時20分ごろ、長野県山ノ内町
県庁で会見する横室危機管理監(右)
ドクターヘリで前橋赤十字病院へ搬送された防災ヘリの乗員=10日午後5時20分ごろ

 10日午前10時すぎ、9人が乗った県防災ヘリコプター「はるな」(天海紀幸機長)が飛行中に消息を絶った。捜索していた航空自衛隊ヘリが午後2時45分ごろ、中之条町のガラン沢周辺の山中に墜落しているのを発見した。空自は機体の残骸の周辺で乗員とみられる8人を見つけ、うち病院に運ばれた2人の死亡が確認された。6人の容体は不明で、残る1人は見つかっていない。

◎低空飛行「機体の字 見えた」

 「機体の『群馬県』の文字がはっきり見えた」―。中之条町で10日起きた県防災ヘリ「はるな」の墜落事故。事故前、近くを飛ぶヘリを目撃していた人たちは突然の惨事に青ざめた。警察や消防の指揮本部が置かれた長野県のホテルには群馬県内各地から消防隊が集まり、救助活動は夜まで続いた。

 群馬県との境にある長野県山ノ内町の渋峠ホテル。事故の指揮本部が設置され、警察や消防、報道陣などが殺到して物々しい雰囲気に包まれた。

■音、ハーレーのよう
 ホテル前でモモを販売していた果樹園経営の男性(61)=同町=は午前10時ごろ、長野方面から群馬方面に向けて飛ぶヘリを目撃した。「ハーレーのような大きな音を立てながら、機体にペイントされた『群馬県』の文字がはっきり見えるほど低空でホテルの上を飛んでいた。こんなに低く飛んでいるヘリは初めて」と驚いた様子で話した。

 一緒にモモを販売していた男性(50)=長野県中野市=は「群馬方面へ行った後にいったん音は消えたが、旋回しているような音が再び聞こえた」と振り返った。

 ホテル付近を散策していた東京都内の60代女性は、救助や報道のヘリが次々と飛んでいくのを見た。「こんなのどかな場所で墜落するとは思っていなかったので、信じられない」と声を落とした。

 消防職員や警察官ら22人でつくる捜索隊は午後6時ごろ、搭乗者の救助のため渋峠ホテルを出発し、現場へ向かった。同6時50分ごろには後発隊の31人も出発したが、日没による視界不良の影響で同7時55分ごろに捜索隊の撤収を決めた。11日は日の出から消防と警察、自衛隊が7人の救助に当たる。

■救出に力尽くす
 吾妻広域消防本部西部消防署で10日夜、報道陣の取材に応じた荻沢滋副知事は「事故は痛恨の極み」と強調。小池信行消防長は「今回の運航は吾妻消防が企画したもので、とても残念。救出に力を尽くしたい」と言葉を詰まらせた。小池消防長は、本来はヘリが9日にフライトする予定だったが、天候不順で延期し、10日に飛ぶことになったと明かした。「今日なら天候に問題ないと思ったのに」と悔やんだ。

■「急な斜面降りた」
 捜索に参加した吾妻広域消防本部の関係者が10日午後10時40分ごろ、渋峠ホテル前で報道陣の取材に応じた。現場を「急な斜面でささやぶのある場所を降りた。雨に打たれ足元が滑るような状況」と説明した。約1時間40分かけ、墜落現場まであと300メートル近くの地点まで進んだが、撤退の指示を受け、やむなく捜索を断念した。機体は確認できなかったという。

◎「無事信じる」「生きていて」 救助難航 募る不安

 県防災ヘリ「はるな」には隊長や機長に加えて、11日に全線開通する「ぐんま県境稜線りょうせんトレイル」を確認しようと、吾妻広域消防本部の5人も乗っていた。予期せぬ惨事に、搭乗していた隊長らを知る人たちは「無事を信じたい」「生きていてほしい」と声を絞り出した。悪天候で救助活動が難航していることもあり、それぞれが不安を募らせていた。

 ヘリに乗っていた県防災航空隊の隊長、小沢訓さんは多野藤岡広域消防本部からの派遣。3年間の任期で、本年度が最終年だったという。県消防学校の同期で、同校教官(44)は「現場では厳しいが、温厚で学生を大切にする人。数日前にも電話で仕事の話をしたばかり。無事であると信じている」と声を絞り出した。

 同隊隊員の岡朗大さんは吾妻広域消防本部に所属。スキーがうまく、2015年の国体にも出場した。岡さんの実家近くの女性は乗員の中に岡さんが含まれていることを知り、「まさかと思った。生きていてほしい」と涙ながらに話した。岡さんと親しいという男性(69)は「礼儀正しくて活発な青年。無事でいてほしい」と力を込めた。

 墜落したヘリには1月の草津白根山の本白根山噴火の際、草津国際スキー場(当時)パトロール隊員と共に観光客の救助に当たった吾妻広域消防本部の隊員もいた。

 同本部の田村研さんと親交があったというパトロール隊の隊長は「すごく優しい人。何度もパトロールの行動をほめてくれた」と話し、「何とか助かってもらいたい」と祈った。嬬恋村出身の黒岩博さんと消防団活動で何度も一緒に訓練に取り組んだという草津町の40代男性は「仕事に真面目な人。無事であることを信じている」と声を振り絞った。

 塩原英俊さんの自宅近くに住む50代女性は「子煩悩で良いお父さんという印象。テレビで名前が出てきて驚いた」と話した。

 水出陽介さん、蜂須賀雅也さんと共に働いてきた同本部の男性(56)は「水出さんは指揮隊の副隊長として活躍し、蜂須賀さんは山岳救助のスペシャリスト」と説明。「5人は優秀で、今後の山岳救助を担っていく存在なのに」と案じた。

 同本部の消防長を務めたことのある60代男性は今回のヘリに搭乗していた5人はいずれも救助技術にたけた隊員だったと説明。事故については「稜線トレイルのコースを確認するためだったと思うが、夏と冬では気圧も違う。想定できないことが起きたのだろう」と推測した。

◎導入から20年超 再来年更新予定 県危機管理監

 県防災ヘリコプター「はるな」の墜落を受け、県は10日午後3時半すぎ、横室光良危機管理監らが会見し、事故状況を説明した。

 県によると、はるなは1997年5月の導入から20年以上がたち、総飛行時間は7000時間を超える。2020年度に更新予定だった。

 昨年4月に総務省消防庁から貸与されて設置した「動態管理システム」が作動しなくなったのは午前10時1分。県防災航空隊は10時40分にそれを確認し、無線や携帯電話ではるなとの交信を試みたがつながらなかった。最終的に県消防保安課が一報を受けたのは11時45分だった。

 横室危機管理監はこの間の経緯について「無線や計器の故障ではないかと確認していた。現場は一生懸命確認しようとしていたのだと思う」と、適切な対応だったとの認識を示した。

◎「1人は即死状態」 DMAT派遣の前橋日赤会見

 県防災ヘリの墜落事故を受け、前橋赤十字病院(中野実院長)は10日、草津町に災害派遣医療チーム(DMAT)を派遣した。同日夕に会見を開き、死亡した乗員2人のうち、1人は頭を強く打っており即死状態だったとみられることを明らかにした。

 病院によると、DMAT隊員7人を草津温泉スキー場の駐車場に派遣した。病院に搬送された時点で2人は心肺停止の状態だった。1人の遺体は損傷が激しく、もう1人とともに年代は判然としないという。今後、詳しい死因や身元の確認を進めるとした。

 2人とも黄色っぽい服を着ていた。土などが相当付着しており、服装から所属を判断するのが難しいとした。

◎稜線トレイルセレモニー中止

 県防災ヘリの墜落事故を受け、11日にみなかみ町で開催予定だった稜線トレイルのオープニングセレモニーは中止となった。稜線トレイルは同日、予定通り全線開通する。

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