ぐんまマラソンが史上初の中止 新型コロナ感染拡大防止で
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約1万5000人が参加した昨年のぐんまマラソン
ぐんまマラソンの歩み

 11月3日の開催を予定していた市民ランナーの祭典「第30回ぐんまマラソン」(群馬県、前橋市、高崎市、群馬陸上競技協会、上毛新聞社主催)について、大会実行委は1日、新型コロナウイルス感染症の拡大防止などを理由に、中止を決定したと発表した。ぐんまマラソンは例年、フルマラソンなど3部門に約1万5000人が出走する県内最大規模のスポーツイベントで、中止となるのは初めて。

◎安全を第一に苦渋の決断「ご理解を」
 実行委によると、これまで関係機関への意見聴取などを通じて開催可否を議論してきたが、開催日までに収束が見通せないことが響いた。医療スタッフのほか、企業、自治会、学生など幅広い層のボランティアら運営を支える人員の確保も難しく、例年通りの開催は困難な状況と判断した。

 ランナーは7月に募集を開始する予定だった。

 山本一太知事は「出場するランナー、運営スタッフの安全を第一に考え、残念だが中止することとした。参加を楽しみにしていた皆さんには申し訳ないが、ご理解をいただきたい」とコメントした。

 ぐんまマラソンは1991年に「ぐんま県民マラソン」として始まり、2015年にフルマラソンを導入。県外からも多くのランナーが参加することを受け、16年に「ぐんまマラソン」に名称変更した。今年はゲストランナーに、アテネ五輪女子マラソン金メダリストの野口みずきさん、お笑いコンビ「アンカンミンカン」の富所哲平さん(みどり市出身)を招く予定だった。

◎関係者「活動や交流の機会だけに残念」 医療関係者は第2波備え冷静な受け止め
 第30回ぐんまマラソンの中止が発表された1日、毎年の大会を支えてきた関係者はさまざまな反応を見せた。1万5000人規模のイベントを「貴重な経験の場」と位置付けるボランティア団体などは、活動や交流の機会が失われたことを残念がった。一方、医療救護関係者らは新型コロナウイルス感染症の第2波に備えるため、「中止はやむを得ない」と冷静に受け止めた。

 公務員志望やスポーツ・トレーナー専攻の学生など約70人が昨年の大会に携わった大原学園高崎校は「医療や救護の経験が積める機会になっている」と残念がった。県内の自衛隊出身者でつくる隊友会は、昨年110人が手荷物預かり所を担当。小島健二会長(72)は「防災協力の能力維持につなげている。来年以降も協力したい」と話した。

 ボランティアの機会が失われる影響を懸念する声もあった。中央情報経理専門学校は「(新型コロナの影響で)全体的にボランティアの募集が減り、1年生は社会貢献の場を経験できないかもしれない」と指摘した。

 ランナーに無料で飲食物を提供する給食所に参加、メイン会場の正田醤油スタジアム群馬で弁当販売も行う登利平(前橋市)は県内外の人にPRする機会を失った。丸山勝弘社長(62)は「スポーツイベントが軒並み中止になり、ぐんまマラソンは開催してほしいと思っていた。非常に残念。来年こそ実施してもらいたい」と話した。

 一方、医療関係者らには冷静な受け止めが目立った。大会救護チームを統括する前橋赤十字病院の中村光伸医師(46)は、仮に新型コロナが再流行した場合、大会に十分な人材を確保できない可能性があったと指摘。関係者の密集回避や参加者による感染拡大の予防といった課題も山積しているとし、「(開催した場合)医療スタッフが大会後にウイルスを院内に持ち込むことも考えられた」と打ち明けた。

 けがや体調を崩した人の救急搬送の調整役などを担ってきた高崎市等広域消防局の甘田明広さん(52)も「新型コロナが県内で広がり、神経を使いながら救急搬送業務に携わっている。大会がきっかけで媒介者となってしまう恐れを避けるため、中止は仕方がない」と受け止める。

 今年のゲストランナーでお笑いコンビ「アンカンミンカン」の富所哲平さん(36)は、例年MCとしても大会を盛り上げる。「多くの県民とつながる機会。そこでしか会えない人もいて毎年楽しみにしていた。ランナーには3密に気を付けてトレーニングを続けてもらい、また会いたい」と次回以降に期待した。

◎市民ランナーからも落胆の声
 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、11月に開催予定だった第30回ぐんまマラソンの中止が決まった1日、大会を心待ちにしていた市民ランナーや関係者から落胆の声が上がった。感染リスクを考慮した中止判断に理解を示しつつ、練習の成果を発揮できないことや仲間と交流できないことを残念がった。

 「正直厳しいだろうと予想していたが、いざ決まるとショック」。昨年の男子フルマラソンで2連覇した渋川裕二さん(28)=前橋市=は、中止の報に肩を落とした。例年、県内外の複数のレースに出場しているが、地元開催の大会には特別な思い入れがある。「今年は3連覇を達成できなくなったが、来年また狙う」と力を込めた。

 初めてフルマラソン完走に挑戦する「ぐんまマラソン・フル180日プロジェクト」に昨年参加した柴崎亨さん(66)=高崎市=は「開催を信じて練習してきたが、(感染拡大の)第2波などを考えると難しいのかな」と中止の判断に理解を示した。ともに参加した本多ゆかりさん(前橋市)は今も当時の仲間と連絡を取り合っており、「中止は残念だが、緊急事態宣言も解除されたので、またみんなで一緒に練習したい」と前を向いた。

 大会には、県内外から1万人以上の市民ランナーが集まり、交流を楽しみの一つとする出場者も多い。今年で20回目の出場となるはずだった佐俣久美子さん(45)=富岡市=は「良い結果を出したいが、目的はそれだけじゃない。ランニング仲間と会えるのもモチベーションの一つになっていた」という。

 1991年に第1回大会(当初はぐんま県民マラソン)が開催され、4年後には1万人が参加。2015年にフルマラソンの部が創設され、好記録を狙う市民ランナーからフルの10分の1の距離のリバーサイドを走るベビーカーの家族連れまで多くの参加者に愛されてきた。教え子が毎年出場している元農大二高陸上部監督の鳥羽完司さん(74)は「一大イベントとして定着し、競技の裾野を広げる機会にもなっている」と大会の意義を語る。準備をしてきた市民ランナーに対し「生涯スポーツとしての楽しみが失われることはない。ウイルスに負けず、走り続けてほしい」とエールを送った。

 群馬陸協の武藤顕理事長(62)は感染拡大防止のガイドラインに沿った大会運営に触れ、「選手以外にスタッフもいる。ぐんまマラソンの規模では致し方ないが、今後も各種陸上大会の開催へ努力を続けたい」と語った。

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