《部活が変わる》地域移行 始動へ(下) 緊急事態どう責任
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前橋箱田中バドミントン部を指導する小林さん(中央)

《人材確保》適任者不足で大学で養成も

 「ミスしてもいいから体を動かして」。前橋箱田中バドミントン部の練習。部活動指導員で元中学教諭の小林敏夫さん(66)が、中学生に負けない機敏な動きでシャトルを打ち合っていた。

 小林さんは現役教員だった2012年度から顧問や外部指導者の立場で同部と関わっており、本年度から部活動指導員に任用された。同部男子顧問の並木裕司教諭(39)は中学時代の教え子という間柄だ。

 並木教諭は「技術指導や保護者対応などあらゆる面で経験豊富」と恩師を信頼し、「本年度からは、顧問2人が職員会議などで不在でも練習を任せられるようになった」と話す。部活動指導員の権限の一つである大会の引率を依頼したことはないが、「小林先生なら安心して任せられる」という。

■慎重な姿勢

 文部科学省が打ち出した休日の部活の地域移行については、部活動指導員が休日も引き続き携わることで指導の一貫性が保てそうだが、小林さんは慎重な姿勢を示す。「技術指導を引き継ぐのは可能だが、けがや急病など緊急事態が起きたときの責任を取れるかが心配だ」と語った。

 文科省は17年度に部活動指導員を制度化し、県と共に人件費を補助。独自に配置する高崎市と合わせ、県内の公立中に133人が任用されているが、全校には行き届いていない。前橋市の6人のうち、小林さんを含めた5人は定年を迎えた元教員。市教委の担当者は「現役で働く世代が平日夕方に活動するのは難しい。事務的な知識や経験も必要で、適任者は限られてしまう」と明かす。

 部活動指導員を含む指導者の養成に乗り出したのは、18年に開校した育英大だ。教員免許取得のための選択科目に「運動部活動の指導法」を取り入れ、学業と部活との関係や勝利至上主義についての考え方、コーチングなどをテーマに講義する。

■選択科目

 担当する本村清人教授(74)は文科省の体育官や、公益財団法人・日本学校体育研究連合会長を歴任した体育教育のスペシャリスト。「教員の働き方改革が進む中、地域での指導者養成は大きな課題」と選択科目の意義を語る。

 一方で、本村教授は学校で行う部活の教育的意義を重視し、生徒が部活と地域のスポーツクラブ、競技力を高めるクラブチームを選べる環境を理想に掲げる。土日に限った地域移行の方針を「持続可能な部活を考えた上での無理のない計画」と評価、改革の行方に注目している。
(この連載は江原昌子、越谷奈都美が担当しました)

 【メモ】 独自に部活動指導員を配置する高崎市は、全25校で56人(10月末現在)が活動。文化部も含めて「1校3人」を目指し、急ピッチで配置を進める。部活指導に意欲がある人が登録する人材バンクには、育英大などの学生も含まれている。

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