《前橋育英優勝》イレブン歓喜 数々の好プレー
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チームをけん引した前橋育英のMF田部井涼(14)とMF田部井悠(左から2人目)=埼玉スタジアム
前橋育英―流通経大柏(千葉) 前半、終了間際にシュートを放つ育英FW飯島(10)=埼玉スタジアム
前橋育英―流通経大柏(千葉) 好セーブを見せる育英のGK湯沢

◎切磋琢磨し成長 ピッチ上ではライバル…双子の兄弟 MF田部井悠と涼

 「ここまで長かったな。この景色を見たかった」。試合終了後のピッチで兄の田部井悠は弟の涼に声を掛けた。「そうだな」と答える涼。小学3年からずっと同じチームでプレーしてきた前橋育英の双子の兄弟が、古里に悲願の初優勝をもたらした。

 「親戚に双子がいて、かわいくて。自分の子も双子だと分かった時は本当にうれしかった」。母の直美さん(45)は当時の心境を今も覚えている。優しい子になってほしいと願い、語尾が柔らかい響きの「う」で終わる名前を付けた。生まれた日は前橋商高で選手権4強入りした父、普さん(46)と同じ日だった。

 顔はそっくりでも、性格は昔から違った。積極的な悠と、慎重派の涼。カードゲームをする時も悠は他の子と積極的に対戦し、涼は考えてから勝負するタイプ。ボールを蹴るのは悠が右で、涼は左。悠は「家でご飯を食べる時は絶対に僕が右。左だと腕がぶつかっちゃうんです」と笑う。

 全国から優秀な選手が集う前橋育英で勝負したいと進学した。先に頭角を現したのは涼で、2年の春からレギュラーを獲得。悠はトップチームにいたものの試合に出られない日々が続いた。普段は仲が良くても、ピッチ上では「誰よりも負けたくない」ライバル同士。2人は切磋琢磨せっさたくましてレベルアップしてきた。

 新チームでは涼が主将となり、CKのキッカーを担っていた。キックが連続すれば脚を痛めやすくなり、逆サイドへの移動も大変。悠は右足の精度を高めて2人目のキッカーとなり、弟の負担を半減させた。今大会3回戦で涼は右脚を痛めて離脱したが、決勝の舞台で復帰して背番号「14」と「9」がそろった。

 「悠はガミガミ言うタイプではないので一言がグサッとくる。自分が気付かないところを気付いてくれる一番信頼できる選手」(涼)、「涼のリーダーシップは群を抜いている。選手として尊敬している」(悠)。中学までは試合中にけんかばかりしていた2人は高校で人間的に成長し、互いを認め合った。

 大学は悠が早大、涼が法大に進む。関東大学リーグ1部で初めて“敵”として顔を合わせることになるが、「楽しみ。これからも刺激を与え合っていきたい」と口をそろえる。「兄弟」より「戦友」という言葉がぴったりの2人は、プロという共通の夢に向かって第2章をスタートさせる。(佐藤秀樹)

◎晴れやか得点王…7得点のFW飯島

 得点王(7得点)に輝いた前橋育英のFW飯島陸は、晴れやかな表情で表彰台に上った。シュート0本に封じられた昨年決勝が頭にあった。途中交代し、ベンチで涙する自分と、表彰台に立つ得点王の青森山田・鳴海彰人(現仙台大)。「日本一になりたいのに、なんて甘いんだと鳴海さんの貪欲さに教えられた。だから、やるしかないって」。疑問も恐れもかなぐり捨て、前だけ向いた1年が報われた。努力はうそをつかなかった。

 決勝はゴールこそ恵まれなかったが、後半アディショナルタイムの決勝点に絡んだ。ゴール前で粘り強くボールキープし、相手DFとGKを引き寄せてシュート。こぼれ球に反応したFW榎本樹のシュートコースを生む結果となった。泥臭くゴールを狙う本能があふれた一発だった。

 DF三本木達哉の徹底したマンマークに苦しみつつ、なお要所で会場を沸かせた。流通経大柏の本田裕一郎監督は「(飯島を)自由にさせたら何点取られたか。これしかなかった」と認めた。

 166センチと試合前後の整列で目立つほど低い。それでも2時間ぶっ通しでシュート練習したり、筋トレを重ね、昨年は日本高校選抜入りした。育英で謙虚さを学んだといい、「サッカーだけじゃない。大人にしてもらえた」と感謝する。

 法政大に進学予定。次のステージでも活躍し、J入りを夢見る。「まだ慌てるところがあり、冷静に決め切れたらと。大学でも得点王を目指したい」。まだ道は続いている。(田中暁)

◎高い集中力キープ…守護神・GK湯沢

 前橋育英の背番号「12」の守護神、GK湯沢拓也が好セーブで大会4度目の無失点勝利に貢献した。前回大会は登録メンバーに入ったもののベンチ入りできず、「決勝のピッチに立ちたかった。無心でプレーできた」と高い集中力を発揮した。

 前半22分、相手のスルーパスを果敢に前に出てクリア。後半15分は自陣右からのクロスをゴール前で頭で合わせられたが、「練習していた形だったので体が自然に動いた」と、左へ跳んで右手1本で防いだ。

 栃木県出身で、中学時代の練習試合がきっかけで前橋育英に進んだ。初先発で活躍した昨春のプリンスリーグ関東初戦以来、ゴールマウスを守ってきた。「自分の力だけではここまで来られなかった。支えてくれた仲間に感謝です」と話した。

◎「歓声楽しめた」…CB角田

 CBとして堅守をけん引した前橋育英の角田涼太朗と流通経大柏のMF菊地泰智は浦和レッズユース時代の仲間同士で、プライベートでもよく遊んだ仲だ。試合後、角田の特長をよく知る菊地でも「CBがすごく強かった。本当のチャンスは1本だけだった」と目を丸くして語るほど、この1年の成長は著しかった。

 角田は「今年は去年と何もかも違った。歓声を楽しむことができた」と目を細めた。前回の決勝は失点が続き、聞こえた歓声は全て相手のプレーに対するもの。かき乱されることもあった。しかし、今回は自分たちのサッカーを最後まで貫くことができた。

 「こんなに気持ちよくプレーできる仲間はなかなかいない。もうできないのは寂しい」と、育英での最後の試合を終えて振り返った。「本当に幸せです。このメンバーでサッカーができて、本当に良かった」(高野誠也)

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