競技普及と五輪「金」に向け心砕く 2国内競技団体トップが語る
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ともに東京五輪有力競技であるソフトボールの三宅会長(左)と山岳・スポーツクライミングの八木原会長。コロナ禍での強化育成、ポスト東京の競技普及とさまざまな施策を打ち出す
五輪初採用の東京と続く2024年パリが競技振興の重要な転換点と見る山岳・スポーツクライミングの八木原会長
13年ぶり五輪復帰となる東京で金メダル、さらに2028年ロサンゼルスの復帰を視野に入れるソフトボールの三宅会長

 1年延期となった東京五輪・パラリンピックの開催まで半年を切った。新型コロナウイルスの感染再拡大で不透明な情勢が続く中、国内競技団体(NF)は対応を急ぐ。群馬県内在住で競技出身のNFトップ、日本山岳・スポーツクライミング協会の八木原圀明会長(74)=前橋市=と日本ソフトボール協会の三宅豊会長(69)=安中市=はさまざまな行動の制約の下で知恵を絞る。スポーツクライミングは今回が初の五輪競技入り、復帰のソフトは次の2024年パリ五輪で追加種目から外れると、それぞれ課題を抱える。ともにメダル有望の東京五輪、その先の競技普及へ心を砕く2人が前橋市内で語り合った。

―両協会にとって、東京五輪は特別な意味を持っている。
 【三宅】 2000年シドニー五輪から関わり、04年アテネ五輪で強化本部長になり、08年北京で悲願の金メダルを取った。この間、05年に野球・ソフトボールの除外が決まり、16年リオデジャネイロ五輪ではソフトが最終段階まで残っていたが、涙をのんだ。それまで単独競技で挑んでいたが、東京五輪は男子の野球、女子のソフトが一体化して臨んだ。紆余うよ曲折あっての復帰。長い道のりだった。

 【八木原】 若い頃は五輪競技になるとは思いもしなかった。室内で条件をそろえて競う今の形となり、競技として確立できた。スピードは1対1の勝負。ボルダリングは4~5メートル、リードは12~15メートルの壁を時間内に登り切る。壁を作る人と登る人の戦い。決勝に8人残ったら、1人か2人登り切れるようルートセッターも知恵を絞る。(五輪は3種目複合で)不得意種目があると厳しくなり、総合力が問われる。多くの人に見てほしい。

―ともに世界で勝負できる選手を擁している。
 【八木原】 男子の楢崎智亜(TEAM au)は群を抜いている。世界選手権2勝、すべてにおいて上位で今のところ敵なし。女子の野口啓代あきよ(同)は大ベテランだが、「まだ進化している」と言い切るくらいだ。少し苦手としていたスピードに向けて体づくりを進めている。男子の原田かい(日新火災)、女子の野中生萌みほう(XFLAG)は悔しい思いをしてきたし、追い越そうという意欲が高い。代表選考でじらされたところもある。他の選手の分もやってくれる。

 【三宅】 上野由岐子投手(ビックカメラ高崎)は日本リーグ決勝トーナメントの決勝の投球で14奪三振。今なお世界一の投手だ。藤田やまと投手(同)も進境著しい。19年の日米対抗で延長八回を完封して期待は高まっている。代表合宿を膝の負傷で離脱した山本優内野手(同)も復帰できるだろう。出塁率の高い市口侑果ゆか内野手(同)や原田のどか外野手(太陽誘電)の長打力も期待だ。

―東京五輪で両競技にかかる期待は金メダル。だが世界には強敵がいる。
 【八木原】 世界中にライバルがいる。ひいき目に見れば日本がいけるという気持ちもあるが、選手も人間。平静な気持ちで臨めるかどうか。チームでのサポートも期したい。ここ数年、実績を残す選手、伸びている選手が各国に現れ、誰にも100パーセントはない。

 【三宅】 ライバルは米国。19年は日米対抗で勝ったが、ジャパンカップで敗れた。五分五分というところにきている。米国の強力な打線に対して日本投手陣、守備陣が失点を抑えられるか。米国は細かく継投してくる。投手は代わりばなが嫌なものだ。立ち上がりをたたくところに活路を見いだしたい。

―昨年は新型コロナウイルス一色で競技界が停滞した。感染再拡大や変異株出現で、海外遠征は今なお難しい情勢にある。
 【八木原】 2020年はワールドカップ(W杯)が相次いで中止となった。アジア選手権は代替が今も未定の状況にある。実戦は重要だ。同じ日本人選手の中だけで競っていたのでは、経験がどうしても不足する。海外と行き来できないのは痛い。トレーニングだけではとても間に合わない。

 【三宅】 1月から海外遠征を予定していたが、米国はクリスマスやニューイヤーの人出の問題があり、オーストラリアも2週間の隔離が避けられず、見送ることになった。世界ランキング1位の実績がある日本男子との練習を考えている。女子以上の球、走力に対応してレベルを上げていく。他流試合は重要。どこかで米国と1試合は戦っておきたい。

―課題の一つはポスト東京五輪。五輪復帰、存続は競技の消長を大きく左右する。
 【三宅】 28年ロサンゼルス五輪、WBSC(世界野球ソフトボール連盟)の活用となってくるが、IOC(国際オリンピック委員会)への情報提供が大事になってくる。WBSC5大陸の組織、成熟度が弱いところがある。W杯の認知度を高めてアピールしていくことが大事。U-15(15歳以下)やU-12の大会もつくっていくが、コロナの影響でずれこんでいる。普及発展でアピールして五輪復帰へ態勢を整えたい。将来は女子野球、男子ソフトも加えた4種別が理想だ。

 【八木原】 24年パリ五輪が一つの焦点。IOCは若者のスポーツ離れを懸念し、興味を持つ競技を取り入れようとしている。スポーツクライミングは若い人が街中で楽しむことができるアーバンスポーツだ。われわれも他の競技に負けないよう普及していかないといけないが、メダルの総数が少ないと難しい。パリは種目数も増える。裾野をさらに広げるチャンスになる。

―少子高齢化の中で、五輪の先に描くのはともに競技の未来図だ。
 【三宅】 ソフトに関わり半世紀になる。レベルの高い人だけがプレーするのではなく、スポーツを一人一人のものとして社会に溶け込ませたい。理解が広がることが根底になければ。五輪は一つの刺激になる。10年先、20年先に生活の一部として醸成できることを夢見ている。コロナにより、スポーツは環境が合ってできることだと改めて思った。同時に、生活の中で必要なものと実感している。

 【八木原】 まずは競技施設が増えてこないと、トレーニングに難しさがある。群馬を含め、全国的に施設の普及が課題になる。ジムから入った人が山に繰り出すところに結び付けば、全体に広がりが生まれる。日本の国土は70%が山。自然に親しむところから登山を始める人は多い。昔のように組織に入って教わる形式でなく、好きな仲間と楽しむ傾向にあり、時代に合った手段を駆使しないと。

 やぎはら・くにあき 1946年11月、前橋市生まれ。前橋商高―群馬法律専門学校卒。69年に谷川岳一ノ倉沢衝立ついたて岩でミヤマルートを開拓。71年のダウラギリIV峰(7661メートル)偵察以来20回以上ヒマラヤを登り、93年の冬季サガルマータ(エベレスト)南西壁登頂を最後に現役引退。2015年から日本山岳・スポーツクライミング協会長。

 みやけ・ゆたか 1951年11月、安中市生まれ。新島学園高―日体大卒。ウインドミル投法の先駆者で、現役時代はアジア選手権、世界選手権などで活躍。2005年に日本人選手として初めて国際ソフトボール連盟殿堂入り。日本協会では技術委員長や選手強化本部長を歴任し、20年から日本ソフトボール協会長。

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