《センバツ》健大 熱闘15回引き分け、28日に再試合
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福井工大福井-健大高崎 粘投する健大高崎の伊藤=甲子園
9回裏健大高崎2死二、三塁から重盗を仕掛け、三走小野寺が生還し同点
延長10回表福井無死、摺石の内野ゴロを一塁に送球し、併殺に仕留める健大高崎の安里

 【甲子園=本社取材班】第89回選抜高校野球大会第7日は26日、兵庫県西宮市の甲子園球場で2回戦3試合が行われ、健大高崎が昨秋の北信越大会優勝の福井工大福井と対戦し、7-7の同点で延長15回を終え、規定により引き分けとなった。第9日第2試合(28日午後1時半開始予定)で再試合が行われる。同じく2回戦に臨んだ前橋育英は報徳学園(兵庫)に0-4で敗れた。

 健大高崎は3回に小野寺大輝、安里樹羅、山下航汰の連続適時打で4点を先制し、5回にも渡口大成の適時打で1点を加えたが、6回に逆転を許した。7回に山下の左犠飛で同点とし、9回に勝ち越されたが、その裏に小野寺が本盗を決めて再び同点とした。

 先発したサイド右腕の伊藤敦紀は6回途中5失点で降板し、小野大夏、竹本甲輝と継投したが、延長10回から再びマウンドに上がり、中堅今井佑輔らの好守に支えられながら残り6回を無失点で投げきった。

 青柳博文監督は「投手に疲労が残る中での再試合となるが、また継投策で臨みたい」と話した。

 第7日は第2試合も福岡大大濠と滋賀学園も決着が付かず、史上初めて1日で2試合が引き分け再試合となった。引き分け再試合は第86回大会の桐生第一-広島新庄戦以来。

◎鮮やか本盗 九回2死から
 ▽2回戦 健大高崎-福井工大福井(14時40分、23000人)
福井工大福井(福井)
 000 033 001 000 000-7
 004 010 101 000 000-7
健大高崎
(延長15回規定により引き分け)
(工)摺石、氏家-島谷
(健)伊藤、小野、竹本、伊藤-大柿

 ○…健大高崎は1点を追う9回2死二、三塁から重盗を仕掛け、三走小野寺が生還して同点に追い付き、延長15回の引き分け再試合に持ち込んだ。

 3回に小野寺の2点適時三塁打で先制し、安里、山下の連続適時打で一挙4得点。3点を返された直後の5回は渡口の適時打で1点加えて中押ししたが、続く6回にまた3点を奪われて逆転を許した。

 7回に山下の左犠飛で同点としたが、9回に1点を勝ち越され、その裏の攻撃で取り返した。6回途中降板した先発伊藤は延長10回から再びマウンドに戻り、計11回2/3を5失点と粘りの投球を見せた。

◎自慢の機動力 土壇場で真価
 観客の誰もがあっけにとられたはずだ。福井工大福井の1点リードで迎えた健大9回裏の攻撃は2死二、三塁。青柳博文監督が「ギャンブルに出た」。いちかばちかの切り札は本盗。走塁参謀の葛原毅コーチが「半年に1度くらいしか練習しない」と笑ったスペシャルプレーが、土俵際で試合を振り出しに戻した。

 「おとり」のサインが出た二走の安里樹羅は「うまい演技をしてやろうと思った」。誰が見ても広すぎるリードを取って、相手の遊撃手の顔をちらり。焦りを「装った」安里に、慌てた内野手が投手のけん制を呼ぶ。その瞬間、三走の小野寺大輝がベースを蹴った。

 捕手のタッチより、内野からの送球より速く、昨秋の公式戦でチームトップの9盗塁を決めた50メートル5秒9の俊足が頭から本塁へ。球審が両手を広げて間もないどよめきは、すぐ歓声に変わった。

 手詰まり感さえあった局面を打開したのはこのプレーだが、成功したのはそれまでの積み重ねがあってのことだ。中心にいた小野寺は5回の内野安打や計2度の二盗で足を印象づけ、7回は死球後の盗塁で敵失を誘って三進し犠飛で生還。「油断すると何をやってくるか分からない」。他の選手の出塁後の揺さぶりも含め、そう思わせたことが相手の隙をつくった。

 初戦の大量得点を生んだのも、緻密な駆け引きを重ねてビッグチャンスをものにするのも「機動破壊」。手の内を明かした訳ではない。相手が警戒を強めることこそ健大の術中に他ならないからだ。小野寺のいう「勇気を持った走塁」が次は必ず、勝利につながる。(椛沢基史)

◎安里、攻守に存在感 2度の“まさか”成功
 2度の“まさか”を大舞台で実行してみせた。健大高崎の3番、安里樹羅は3回に意表を突くセーフティーバントを決めて3点目を奪うと、1点を追う9回の土壇場は相手を惑わす頭脳プレーで重盗成功の立役者になった。長打だけではない、能力の高さを示した。

 3回、2番小野寺大輝の2点適時三塁打を捕球した相手の右翼手が右膝を負傷。担架で運ばれ、試合が一時中断した。

 2死三塁で再開された最初の直球だった。「三塁も警戒していなかったのでいけると思った」とサイン通りに勢いを殺した絶妙なバントを三塁側に転がしてセーフ。その隙に三塁の小野寺が本塁を突いた。

 そして観衆2万3000人の度肝を抜いたのが9回2死二、三塁の重盗だ。二塁にいた安里は遊撃手の位置を把握しつつ、意図的に塁を大きく離れてけん制を誘った。二、三塁に挟まれる形となったが、三塁の小野寺が再び俊足を飛ばしてダイビングヘッドで本塁に生還して奇襲を成功させた。

 遊撃手としても最終15回に三遊間を抜かれそうな打球に飛び付いて先頭をアウトにするなど、攻守で存在感を発揮した安里。再試合は予想外だというが「守備からリズムをつくって次こそ勝ちきりたい」と闘志を燃やした。(佐藤秀樹)

◎守備陣、無失策で支える
 土壇場で引き分けに持ち込めたのは、守備陣の奮闘も大きかった。特に延長10回から再登板し、苦しい投球となったエースの伊藤敦紀を内外野が無失策の堅い守備で支え、福井打線の猛攻をしのぎきった。

 延長11回の相手の攻撃は無安打の今井佑輔が「バットが駄目な分、守備でやれることを」と、ヒット性の打球を滑り込んでキャッチ。一塁山下航汰も延長13回、ファウルウライをフェンス際でつかんだ。

 延長15回は遊撃安里樹羅、故障の湯浅大主将の代役で二塁に入った大越弘太郎が必死の守り。2死後、右中間フェンス直撃の長打で、外野から三塁への送球がそれたサヨナラの危機には「いつもの通りのプレー」とカバーに入った左翼小野寺大輝が捕球して挟殺に仕留めた。伊藤は「守備を信頼できたので、打たせて取れた」と感謝していた。

◎危機を防ぎ好機広げる…9番・大柿捕手
 2年生の9番捕手、大柿廉太郎が攻守で自らの役割を全うした。守備では走者を 刺してチームの危機を防ぎ、打撃では送りバントを3回全て成功させて好機拡大。初戦は5打数無安打に終わっていただけに「任された仕事をできてよかった」と安堵あんどの表情を浮かべた。

 遠投100メートル、二塁送球が1.95秒という地肩が火を吹いた。5-6と逆転を許した7回。先頭の5番打者に左前打を許す嫌な流れの中、次打者の初球を捕るとすかさず一塁へ。相手は塁に戻れず、無死一塁を1死走者なしに変えた。

 「常に狙っている」。9回はアウトにはならなかったが、同じように強気で送球。10回無死一塁では送りバントを迷わず二塁に投げて併殺に仕留めた。走者に肩を警戒させ、この試合で盗塁を一つも与えなかった。

 相手打線は想像していた以上に直球に強く、しぶとかった。タイプの異なる4投手をリードする女房役は「直球を織り交ぜながら、変化球を厳しいコースに要求したい」と次戦を見据えた。

◎2打点でエース援護…4番・山下
 初戦で満塁弾の2年生主砲、山下航汰はこの日も2打点。守備でも伊藤敦紀を助け、下級生ながら貢献した。

 3回は低めの直球を右越えに運ぶ適時三塁打で4点目を入れ、七回にも左犠飛で4番の役割を全う。3回の場面は「体が開いてしまわなければスタンドに入っていたかな」と悔しそうな表情を浮かべた。

 守備でも延長13回1死一、三塁のピンチで、一塁フェンス際に上がったフライをしっかりと捕球。再びマウンドに上がり粘投のエース右腕を援護した。

◎渡口も適時打
 5回に1点差に迫る左前適時打を放った渡口大成は「点を取れるところで取りたかった」と満足げだった。

 チェンジアップを振らされて空振り三振に倒れた第1打席を教訓に、5回の第3打席は引きつけて打つことを意識。外寄り高めの直球をたたき、痛烈な当たりをレフト前に転がした。すかさず二盗も決め、走塁でも抜け目のなさを発揮した。

 それでも本人は他の好機に打てなかったことを反省。「もっとヒットを狙いたい」と意欲的だった。

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