《白球の詩》全員野球に胸張る 藤岡中央・馬淵大輔主将
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守備を終えて全力疾走でベンチに戻る藤岡中央の馬淵主将=上毛新聞敷島

 七回裏、相手打者の打球が右翼を越え、コールド負けが成立した。相手の校歌をベンチ前で聞きながら、悔しさをぐっとこらえた。目からあふれるものを少し拭った。だがその後は、落ち込む仲間を主将らしく励ます姿があった。

◎昨夏8強超え託され苦悩
 「本当に馬淵はよくやった…」。試合後、涙を見せたのは指揮官の古平一貴監督。絶対的主戦の門馬亮=現・立正大=を擁した前チームと常に比較され、主将として苦悩を抱えた馬淵をそばで見てきた。前日のノック練習でバウンドした打球が顔面を直撃し、鼻骨骨折を押しての出場で、最後までチームを引っ張った。

 新チームの主将を任された昨夏から重圧に満ちた一年だった。群馬県大会で秋4強、春夏8強と旋風を起こした前チームを超えることが目標だった。「俺たちの代で終わらせず、藤岡中央の名をとどろかせてくれ」。主将就任時、門馬からの激励の言葉がうれしくもあったが、肩に重くのしかかり続けた。

 チームづくりは困難の連続だった。互いの主張をぶつけ合い切磋琢磨せっさたくました昨年と違い、チーム内に主張がほとんどなかった。「誰も先頭に立って引っ張らない」。古平監督から常に叱咤しった激励を受けた。もともと後輩に厳しく指摘できるタイプでない。練習試合で大量失点し敗れた時も強く言えなかった。そうした状況が春季大会まで続いた。

 転機は、卒業後も練習を見に訪れた昨年の主将、下田匡希さん(19)の言葉だ。「俺たちの代のことは考える必要はない。自分たちにしかできない野球があるはず」。3人の副主将を頼りに、全員で話し合い改善を試みた。自分たちに必要なのは打撃力。練習でもしっかり振り抜くことを申し合わせた。仲間同士で激励し合い、徐々に雰囲気が変わっていった。

 秋季準優勝の桐生第一戦は三回までに9失点する苦しい展開。「実力は相手が上。攻める気持ちを持ち続けよう」とナインを鼓舞し続けた。すると四回、長短3安打と四球で仲間がつないだ。7点差の1死二、三塁で出番が回った。「自分たちに流れを」。初球を強振して二塁に転がし、1点をもぎ取った。

 だが、1年を通じ公式戦で勝利を上げることはできなかった。それでもスタンドから見守った門馬は「以前なら得点された時点で崩れて諦めていた。馬淵を中心に成長した」とたたえた。

 試合後、馬淵は「昨年を超えられなかったのは悔しい。でも全員野球ができた。そこは自信を持っていいと思う」と胸を張った。高校卒業後に野球を続けるかは、まだ悩んでいる。だが、苦しみを乗り越えたことが、今後の人生で生かせる局面があると信じている。迷える主将の姿はもうなかった。(阿久津光正)

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