《白球の詩》仲間のためにマウンドで腕振る 新田暁・籾山成哉投手
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チームのため、力のこもった投球を見せる新田暁の籾山=高崎城南

 立ち上がりから直球が走らず、初回に4失点した。なお1死一、二塁の危機で、打席には中学時代にバッテリーを組んでいた樹徳の捕手、高橋空がいた。エースとして、打たれるわけにはいかなかった。

◎右肘骨折 投手で再復帰
 もともと投手にこだわりはない。中学2年時、指導者の勧めで本格的に始めたが、なぜ高校で続けたのか分からない。嫌なことがあっても気にしない、あっけらかんとした性格で、何かに固執することもない。

 昨年10月、右肘を疲労骨折した時もそうだった。「最悪だと思ったが、我慢していれば治る」。挫折にも数えなかった。

 だが一度、弱音を吐いたことがある。4月の春季県大会。完治したはずの肘が再び痛み、2回戦で敗れた。試合後、内田昇監督に泣きながら言った。「チームに迷惑は掛けられない。野手に専念したい」

 仲間を思っての言動と理解した監督だが、決断の早さに疑問を持った。「マウンドを守ることこそチームのためじゃないのか」。力強い直球が魅力のエースに諦めてほしくなかった。

 籾山はこの言葉に責任感を刺激された。「自分が試合をつくらないと、いいリズムにならない」。再びリハビリを始め、6月に投手として再復帰。母の典子さんは「下半身をより鍛えたりした。この夏で終わりという気持ちが強くなった」と意識の変化を感じた。

 投手へのこだわりが、強くなったわけではない。ただ、チームのために勝ちたいと思う。初回1死一、二塁、打席に立つ高橋を見た。絶対に抑えたくなった。

 高橋は2回戦でサヨナラ打を放った勝負強い打者だ。差を広げられたら試合が決まりかねない。振るわなかった直球を避け、3球目に投じたのは変化球。バットの芯を外して二飛に打ち取り、次打者も空振り三振。三回に再び高橋を打ち取った後、外野へ回った。

 結果はコールド負けとなったが、内田監督は「籾山がエース。籾山が打たれたなら仕方がない」とねぎらった。本人にも悲観の色はなく、「高校最後の大会で登板できたのはうれしかった。続けて良かった」とうなずいた。こだわりのなかった投手だが、仲間のために腕を振る時間は、充実していた。(中里圭秀)

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