《白球の詩》練習の虫 文武両道を体現 市太田・加藤駿佑外野手
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6回裏、エンドランで三塁に向かって走る加藤=上毛新聞敷島

 母、はるみさん(48)の朝は早い。7時台から始まる朝練に向かう長男のため、5時半に起床し、朝食を準備する。「まさか高校で試合に出られるようになるとは」。体の小さかった小学生当時からは想像できない。加藤は朝の日課となったマシンで黙々と打ち込む。遠くへ球を飛ばせる打撃は昔から好きだった。

◎かけがえのない経験 将来の夢へと生かす
 津久井孝明監督ら指導者は加藤を「ジム・ラッツ」と表現する。体育館に住み着くネズミ(ラット)のように、気付けば練習場にいるからだ。ポジションを争うライバルと共に朝練を行い、夕方の全体練習後は1時間ほど居残り。週2回は補習で朝練ができないため、「もっと練習している選手はいる」と謙遜するが、文武両道を体現する姿が指導者の目にはそう映る。

 中高一貫で勉学を重視する普通科に在籍し、模試で校内1位となったこともある。数学と物理が得意で、難関の国立大に進学するのが目標だ。「勉強と部活の両立が難しく、勉強に集中する生徒もいた中、きちんと両立している」と津久井監督。自主練習を終えて帰宅すると、短い時間で机に向かい、受験に備える。

 樹徳で群馬県4強に進出した父、良美さん(47)の影響もあり、小学2年で始めた野球。打撃の良さと走力を買われ、昨秋からメンバー入りした。良美さんは自分の結果を越えてほしいという気持ちはあったが、胸にしまった。大会前、「後悔しないよう、思い切りやりなさい」とだけ伝えた。

 4連覇を狙う前橋育英との準々決勝。1番打者として、当たれば長打となりそうなフルスイングを繰り返した。六回の第3打席で安打を放ってチャンスメーク。最後となった第4打席は打ち上げて右飛に倒れた。「思い切っていこうと思ったけど、振り切れなかった」と目元を拭った。今大会で初めて踏んだ敷島の芝生。「一生の経験。かけがえのない時間だった」

 自主練習後の帰り道、広がる夜空を見上げ、想像を巡らせた。将来は宇宙工学の仕事をしたいと夢を見る。この先も野球を続けるか迷いながら、また机に向かう。(落合琢磨)

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