《白球の詩》早過ぎた幕に涙 前橋育英・丸山大河主将
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
悔しさで表情をゆがめながら、グラウンドの土を集める丸山主将

 思い返せば入学当初、甲子園への思いは強い方ではなかった。「出られたらいいなってくらい」。でも気が付けば最後の夏、チームの先頭で日本一を目指していた。

◎仲間たち 大好きだから 負けたくなかった
 2年生で出場した昨夏の甲子園。劇的なサヨナラでつかんだ切符に「本当に来ちゃったよ」と実感がなかった。初戦は適時打や好返球で勝利に貢献したが、忘れられない試合は近江(滋賀)との2回戦だ。

 同点で迎えた九回表、2死一、二塁で打席に立った。勝ち越し機に「打ち急いでしまった」。内よりの甘いボールを捉えきれず、打球は一塁手の正面へ。その裏に、サヨナラ打を浴びた。「勝てた試合だったのに、打ち損じで負けた。人生で一番悔しい」

 元来、大の負けず嫌い。幼少期、兄2人が自転車に乗る姿を見て「自分も」と悔しがった。母の奈津子さん(52)が自転車の後ろを押して支えようとすると、手を振り払って地力で乗った。奈津子さんは「とにかく負けん気が強くて、3兄弟で一番」と振り返る。

 甲子園での敗戦に、火が付かないわけがない。しかも相手投手は、同じ2年生。「来年借りを返す。日本一になる」

 新チームでは、部員80人を束ねる主将を任された。「プレーで引っ張るだけじゃ駄目。厳しいことも言う」と目標のため腹をくくった。少しでも気の緩んだ選手がいれば、すかさず注意する姿に、遊撃の中村太陽は「嫌われてもいいって覚悟が伝わってきた」。4年連続の甲子園出場が懸かる重圧にも負けず、父の裕之さん(56)は「家でも弱音を聞いたことがない」と振り返る。

 群馬大会史上初の4連覇を達成した翌日、部員全員に対して一斉にメッセージを送った。「浮かれている人間が一人でもいたら勝てない。切り替えて、日本一を目指そう」。余韻に浸る隙を与えなかった。

 戻ってきた雪辱の舞台。幕切れはあまりにも早かった。初戦敗退。ベンチを片付けた後、聖地の砂を持ち帰ろうと、グラウンドに膝をついた。しばらく動くことができない。砂をすくうはずの右手で、目元を覆った。

 負けるのは嫌いだ。でも、それ以上に「もっとこのメンバーで、野球がしたかった」。厳しい言葉を受け入れ、同じ方向を向いてくれた仲間たち。大好きだから、負けたくなかった。(越谷奈都美)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
関連記事