《球児を守れ 投球数制限導入 中》効果 500球 故障予防に賛否
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昨夏の全国選手権群馬大会開会式から。1週間で500球以上を投げた投手はいなかった

 高校野球の投手のけが予防を目的に設けられた「1週間500球以内」の投球数制限に対しては、効果を疑問視する意見もある。上位に勝ち進んでも適用対象とならないケースが多く、県内の高校野球関係者からは「あってないようなルールでは」「意識していない」といった声が漏れてくる。

◎3年後見直し視野
 野球選手のけがに詳しい慶友整形外科病院(群馬県館林市)スポーツ医学センター長の古島弘三医師は「(故障予防の)第一歩。導入はゴールではない。1週間500球の数字に関して言えば、けがを防ぐために十分な数字ではない」と訴える。

 今回の制限を昨夏の全国選手権群馬大会に当てはめてみる。決勝に進んだ2校の最終7日間をみると、3試合あった前橋育英のエース梶塚彪雅ひょうが投手の投球数は355球(27回)だった。最も日程が過密で4試合あった前橋商のエース井上温大はると投手も433球(31回1/3)。継投した試合もあり、制限内にとどまった。

 仮に1試合150球を投げたとしても、1週間3試合なら計450球で上限に達しない。これ比べて、米国で故障防止のために掲げられている指針「ピッチ・スマート」は、より厳しく規制している。17、18歳では1日の投球数の上限が105球。81球以上投げた場合は4日以上の休養日を設けるよう求めている。

 新潟県高野連が2018年に翌春の県大会で導入を一度表明した「1試合100球以内」の制限(後に撤回)は、選手層の薄いチームが不利になるとの見方もあり、賛否が大きく分かれた。今回は制限の枠組みが緩い分、現場の自由度が高く、群馬県関係者の混乱は少ないようだ。

 部員5人の藤岡北で指導する神田直輝監督(元プロ野球巨人投手)は「少人数の学校に配慮した結果の500球だと思う。だからといって無視せず、選手の育成と故障予防の両立方法を学びたい」と前向きに受け止める。高校球児の中からプロ入りする選手はわずかだが、「好きで始めた野球なのに、けがでキャッチボールもできなくなってしまうのは寂しい」と投手保護の動きに賛同する。

 日本高野連が導入を決めた制限は、1995年に日本臨床スポーツ医学会がまとめた「全力投球は1週間に500球を超えない」との提言が基になっている。ただ、高校生年代の投球数とけがの関連性を示す資料が少ないことから、日本高野連は3年後の見直しを視野に夏の各地方大会から投球データを収集する方針を示している。

 今回の制限は3年間の試行期間が設けられ、効果の検討段階ともいえる。古島医師は「そもそも公式戦で球数を制限するだけではけがを防げない。登板間隔を含め、普段の練習から指導の在り方を考えてほしい」と呼び掛ける。

メモ 1週間500球以内の制限は、大会日程によって影響が変わるケースがある。昨夏の全国選手権群馬大会では、前橋育英と前橋商が決勝に進出。決勝(7月27日)まで7日間の試合数を比較すると、3回戦が同月20日だった育英は3試合にとどまり、21日だった前橋商は4試合あった。同じ回戦に進んだ場合でも制限の対象になる試合数が異なる場面が発生するため、トーナメント編成も工夫が求められる。

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