夏の甲子園が中止 「夢」消え高3落胆 県独自大会の可否検討
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
ウェブ会議方式で画面越しに桐生第一の広瀬智也主将を励ます今泉壮介監督
夏の甲子園の中止決定を受け、報道陣の質問に答える健大高崎の戸丸秦吾主将(右奥)と青柳博文監督=20日午後6時15分ごろ、健大高崎
夏の甲子園の中止を受け、報道陣の質問に答える前橋育英の荒井直樹監督

 日本高野連は20日、新型コロナウイルスの影響が各地に広がる中、オンラインで第102回全国高校野球選手権大会の運営委員会と理事会を開き、兵庫県西宮市の甲子園球場で8月10日から予定していた夏の甲子園大会と出場権を懸けた地方大会の中止を決め、発表した。夏の大会の中止は3度目で戦後初、選抜大会と春夏連続での中止は戦争での中断を除き史上初めて。中止決定を受け、群馬県高野連は今後、部活動の再開状況などを踏まえながら、6月以降の理事会や大会運営委で独自大会の開催可否について検討する。

◎「整理つかず」「言葉出ない」「集大成の場を」…
 日本高野連が全国選手権大会(夏の甲子園)と地方予選の中止を発表した20日、最後の夏に懸けてきた群馬県内の3年生選手たちは打ちひしがれた。関係者や高校野球ファンは「言葉が出ない」などと残念がり、集大成となる県独自の大会を求める声が挙がった。

 高崎市の少年野球チームで長年監督を務めた泉文好さん(76)は「甲子園は大きな夢であり、夏の大会は特別な舞台。仲間と練習に取り組んできた球児のことを思うと言葉が出ない」と推し量った。前橋市の女性会社員(53)は「本当にショック。各校の応援も楽しみにしていた。感染防止に気を付けて、県大会など集大成の場を設けてあげてほしい」と思いやった。桐生市の中学生野球クラブで指導する円岡康祐さん(53)もOBの高校3年生たちを思い、「春のセンバツも中止だった。最後の夏はどういう形であれプレーさせられないか」と願った。

 春の選抜大会の出場権を得ながら中止決定に涙をのんだ健大高崎と桐生第一の選手は、甲子園に再挑戦する道を断たれた失意をにじませた。健大高崎の戸丸秦吾主将(18)は同校で取材に応じ、「夏の大会がモチベーションになって自主練習に励んでいた。気持ちの整理がつかない」と落胆。部員も大きなショックを受けているといい、「どう声を掛けたら良いか分からなかった」と話した。

 オンライン取材に応じた桐生第一の広瀬智也主将(17)は「今回は最後だったから(センバツ中止の)春よりつらく感じる」と声を沈ませた。エースの宮下宝投手(18)は「甲子園がなくても、自分たちがやってきたことが間違いではないことを証明したい」と県独自の大会を希望した。

 晴れ舞台を心待ちにした関係者も声を落とす。健大高崎吹奏楽部顧問の吉田宏昭教諭(62)は「3年生は甲子園での演奏がかなわず残念がっていると思う」と部員を思いやった。同校で2014年夏の甲子園に出場した脇本直人さん(23)=福島県いわき市=は「これで野球人生が終わってしまうわけではない。次のステージでも野球を続けてほしい」とエールを送った。

 桐生第一で00年夏の甲子園でベンチ入りした自営業の藤掛将之さん(38)=桐生市=は「夏に完全燃焼してほしかった。春に続いて実力を発揮できる場がなくなり、かわいそうだ」と話した。同校応援団部顧問の豊田正徳教諭(49)は「夏に期待していたが、仕方ない」と無念さをにじませた。

◎「もう一度 野球を」…肩を落とす指導者の姿も
 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、戦後初の中止が20日に決まった全国高校野球選手権。夏の甲子園に憧れた球児の夢はついえ、県内の指導者から「やり切れない」「非常に残念」と落胆が広がった。本来なら県代表を決める地方大会も中止。3年生の集大成として県独自の大会開催を求める声が上がるが、課題も残る。

 「日本一に向けて、この学年で勝負したかった」。健大高崎の青柳博文監督は無念さをにじませた。昨秋の関東大会で初優勝し、明治神宮大会は県勢初の準優勝。チームが着実に力を付けてきた中で、3年ぶりの出場だった今春の選抜大会が中止となり、夏に懸ける思いは強かった。「戸丸秦吾主将を中止に本当にまとまった良いチーム。非常に残念」と肩を落とした。

 3月11日に選抜大会が中止となった後、政府は4月16日に緊急事態宣言の対象を全国まで拡大。休校中は部活動も停止、通常練習は止まった。春の関東大会、県大会は相次いで中止となった。今月14日に群馬県の緊急事態宣言が解除されたが、休校が続き、活動再開はまだ見通せない。

 健大と同じく選抜出場校の桐生第一・今泉壮介監督は「夏に向けて気持ちを切り替え、頑張ってきた選手たちの顔が浮かぶ。簡単な言葉で片付けることはできない」と悲痛な表情。今年の3年生は監督就任前にコーチとして勧誘してきた選手たち。「中学生の頃から見てきた。甲子園でプレーする姿を見たかった」と悔しがった。

 史上初の群馬大会5連覇が懸かっていた前橋育英の荒井直樹監督は「3年生の気持ちを思うとやり切れない」と肩を落とした。甲子園を目指して練習した日々について「やってきたことは無駄じゃない。これから大変なことはたくさんある。乗り越える力にしてほしい」とし、3年生に電話で一人ずつ話をする意向を示した。

 桐生第一の監督として甲子園に春夏通算14回出場、1999年夏に全国制覇を果たした福田治男監督(現利根商)は「どのチームも夏の大会は総決算として前年秋から照準を合わせてきた。甲子園は地方大会を勝ち抜いた者だけが味わえる最高の舞台」と語った。卒業後も野球を続ける意向の3年生について「スカウトに実力を示す機会もない。送り出す側、受け入れ側双方に影響を及ぼすのでは」と懸念した。

 春の県大会に続き、今夏の群馬大会の中止が決まり、3年生は今年の公式戦に出場する機会を失った。昨夏の群馬大会で準優勝した前橋商の住吉信篤監督は集大成の場として代替大会の開催を望む。中止を受けて3年生一人一人に電話し「どんな形でも、もう一度グラウンドで野球をやろうと伝えた。(このまま試合がなければ)選手の無念さは計り知れない」と思いやった。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
関連記事