《白球の詩》勇気をもらい強気に 高崎商大附・一場太志投手
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マウンドで強気の投球を見せた一場(右)と三塁の佐藤=上毛新聞敷島

 何度、救われただろう。ピンチになると、嬬恋の少年野球チームで一緒だった三塁の佐藤泰輝が必ずマウンドに駆け寄ってくれた。「よく励ましてもらった。ここ一番というときに、心を落ち着かせることができた」。守備で右横にいる仲間のおかげで、いつも強気に投げられた。

◎共に甲子園目指す仲間 「特別な存在」
 中学校では別々の道を歩んだ。甲子園を見据えて佐藤は硬式のボーイズに入り、自身は軟式の野球部を選択。理由は「迷ったけど、レベルの高いところに行くのが不安だった」。その思いをかき消すように練習に励み、最後は群馬県選抜として全国大会8強入りを果たすまでに成長できた。

 「商大附にするわ」。中学3年冬、車内で母の直美さん(45)にこう告げた。一つ上の学年が若駒杯で準優勝した高崎商大附に佐藤が進むと知り、多くの強豪の誘いを断って決めた。渡辺賢監督の熱い勧誘も背中を押した。それまでは長打を量産する姿を見て、憧れに近い気持ちを抱いていたが、今度は共に甲子園を目指す仲間に思えた。

 つらい場面で手を差し伸べられたのは、高校に入ってからも同じだ。昨秋の県大会の前橋育英戦では焦りと疲れが重なり、本塁打2本を浴びて負けた。心を通わせた2人はおのずと悔しさを共有。優勝に向けて何をすべきかも。それから毎日、徐々に肌寒くなるのを感じながら、午前6時半から一緒に汗を流した。

 そして迎えた夏の大会。初戦を乗り越え、桐生第一とぶつかった。三回に3四死球で1死満塁の危機を生み、普段のように声を掛けられた。「ここで抑えれば流れを引き寄せられる。乗り切ろう」。その回に2点失ったが、言葉に勇気づけられ、無死満塁となった四回を乗り切った。

 0-5で迎えた最終回、2点を返してなお2死満塁、打席に立ったのは佐藤だった。「信じてるよ」と心の中でつぶやいたが、1ボール2ストライクで無情にもバットは空を切り、ゲームセット。

 試合後、相手の校歌を聞きながら天を仰いで目を赤くした。高崎商大附のユニホームを着て、旧知の強打者とグラウンドに立つのはこれで最後だから。「振り返れば、小学校の頃から公私で助けられたことばかりだった。部活が終わっても、自分にとっては特別な存在」。野球で得た財産は大きい。(斎藤大希)

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