《白球の詩》けが越えた経験 宝に 高崎商・三浦夏外野手
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1回裏、4点目が入り、ベンチで喜ぶ高崎商の三浦=桐生

 「お前のせいじゃない」。九回裏の攻撃、三振に倒れ、泣き崩れる代打の最終打者を抱き起こして声を掛けた。出場機会がなかった悔しさは胸に秘め、仲間を励ますその目に光る物があった。

◎3度の左肩脱臼
 2年時の6月、練習試合で一ゴロを打った際、際どいタイミングで頭から滑り込んだ。セーフになったが、立ち上がって左の手袋を外そうとすると力が入らない。「また外れたかな」。野球人生で3度目の左肩脱臼だった。

 中学3年時、高校1年時と2度脱臼し、いずれも軽症。しかし今回は、医師から手術を勧められるほど重症だった。直後は試合で気持ちが高ぶっていたためか痛みはなかったが、すぐに激痛が襲ってきた。同時に選手生命の危機となる可能性が頭をよぎる。

 手術すれば半年以上の離脱。残り少ない高校野球を「悔いなくやり切りたい」と、手術せずに治療する方法を選んだ。2カ月間通院し、左肩周囲に筋肉を付けることで外れにくくなるよう徐々に鍛えていった。

 病院には母のさち江さん(44)が送迎してくれた。気持ちが焦る中、けがをして一緒にウエート室で練習する先輩が冗談を言って励ましてくれた。秋季大会には何とか間に合い、守備固めとして2試合に出場できた。

 ただ、打撃で振り切った際などにまだ痛みがあった。完治してきた頃に、新型コロナウイルス感染拡大による休校。その間も筋力トレーニングを欠かさず、堤悠輝監督から「打撃は柵越えする力もある」と評価されるほど成長した。「苦しい練習でも手を抜かず、背中で引っ張るタイプ」。堤監督自身も大けがをした経験があり、復帰を支えた。

 肩の強さにも自信がある。試合前の練習では、左翼から本塁へ鋭い送球を見せた。ただ、正外野手は上位や中軸を打つ強打者ぞろい。出番がない中でも外野手のボール回しの支援や、ブルペンで投手の球を受けるなどサポートに徹した。

 8-9で敗退も、「ベンチが一体となって戦えたのは誇り」と胸を張った。「けがなど精神的につらいこともあったが、最後までやり抜けた経験は宝物になる」。涙ぐむ目で前を向いた。(真尾敦)

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