《決勝》桐生第一 反撃振り切り夏復権 2強連破し県大会負けなし
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健大高崎―桐生第一 6回裏桐一2死満塁、星野が勝ち越しの左越え満塁本塁打を放つ=上毛新聞敷島
(左)粘り強い投球を見せた桐生第一の先発宮下、(右)健大高崎―桐生第一 2番手でマウンドに上がり力強く投球した桐生第一の下間=上毛新聞敷島
選手に胴上げされる今泉監督

 強い縦縞たてじまが帰ってきた。10日に上毛新聞敷島球場で行われた群馬県高校野球大会決勝は、桐生第一が6-5で健大高崎の反撃を振り切って優勝した。昨秋の前橋育英に続き、近年の2強を連破。1点差で健大に敗れた2015年夏の決勝を払拭ふっしょくし、県大会無敗で締めくくった。桐一と健大は16日、それぞれ甲子園交流試合に臨む。

 

▽決勝
健大高崎
 001 100 012―5
 020 004 00×―6
桐生第一


 ○…桐生第一が逃げ切った。先頭を出した二、六回はともに得点。二回は7番星野が左越え2点二塁打を放って先制。同点とされた後の六回、再び星野が満塁弾を放って勝ち越した。

 健大高崎は九回、山畑と橋本脩の適時内野安打で1点差としたが、逆転はならなかった。

◎小兵の星野が満塁弾 仲間に恩返し 全6打点「まじヒーロー」
 8月の風を抱きしめたかのように打球が舞い上がり、左翼席へ入った。同点の六回裏2死満塁。高校公式戦で初めてダイヤモンドを一周する桐生第一の7番星野綜汰から白い歯がこぼれた。全5試合で安打と打点を記録し、決勝は1人で全6打点。161センチの小兵がこの夏の「MVP」だ。

 小柄だが上半身の力強さは周囲に負けない。打撃練習は内外の見極めを徹底し、低めの変化球に強い。体格のいい中軸との“落差”がつなぐ打線のラストピースだった。この日は中軸がスライダーを警戒して見送った一方、星野はスライダーを逃さず2安打。2段構えのチーム打撃といえた。

 中学は内野手で、入学後に捕手となった。仲間との体格やレベル差に圧倒され、2軍の練習試合に出るのも時間がかかった。下級生時にコーチとして指導した今泉壮介監督は「結果に左右されるな。『元気とガッツ』がおまえの良いところだ」と言い聞かせ続けた。

 悔しさが日常だった。打てない試合の後に何度も涙した。それでも腐らない姿を見た今泉監督から昨夏は控え捕手に抜てきされ、勝負強い打棒で4強進出に貢献した。秋季大会も戦い抜き、ついに正捕手と認められた。

 試合後に「ヒーロー。まじヒーローだろ」と広瀬智也、福士信晃両主将に肩をたたかれ、くすぐったそうに笑った。「今まで自分のミスをカバーしてくれた仲間にやっと報いられた。この流れで甲子園も勝つ」。最後の一戦も笑顔を咲かせる。(田中暁)

◎宮下-下間-蓼原…勝利呼ぶ積極的な継投
 桐生第一の3番手蓼原慎仁が一塁を踏んで最後のアウトを取ると、黒い縦縞のユニフォームがマウンドへ駆け寄った。2008年秋から11連敗の健大高崎を破り、12年ぶりの夏頂点。3年生29人はくしゃくしゃの顔で人さし指を突き上げた。

 積極的な継投が勝利を呼び込んだ。互いに2得点で試合が振り出しに戻ると、今泉壮介監督は先発左腕宮下宝を下げた。内容は悪くなかったが、「つかまる前、早め早めに変える」と決めていた。

 五回から投入の右腕下間博貴が内外を広く使う制球力で健大打線をかわした。六回は先頭打者に死球を与えたが、次打者に外角低めを打たせて1-6-3の併殺とした。

 3人目も遊ゴロに打ち取りベンチを沸かせ、裏の攻撃へ。安打2本と併殺崩れで1死一、三塁とし、初回から投げる健大主戦がこの日初の四球を出すと、星野綜汰の満塁本塁打で大きくゲームが動いた。下間は「継投だから最初から全力でいけた。良い流れをつくれた」と胸を張った。

 昨秋は県大会決勝から関東大会準決勝まで宮下の完投だが、夏を見据えて複数投手を育成。八回から登板し、自己最速145キロを記録した蓼原は一冬で台頭した選手。蓼原は「投手1人では勝てないと言われ、必死に練習した」と振り返った。今大会は全試合3投手以上を起用し、最大でも1イニング2失点と大崩れを防いでいた。

 3年生は、2年前の1年生強化試合「若駒杯」決勝で健大に敗戦。昨秋の県大会は前橋育英を破って優勝したが、3位の健大は関東大会優勝、明治神宮大会準優勝と実績を積み重ねた。選手たちは常々「健大の方が力は上」と言っていた。だが「悔しかった。絶対に自分たちの代で夏は倒す」(宮下)と、闘志を内に秘めていた。

 16日の甲子園交流試合では「最強のチーム」(広瀬智也主将)とみる明石商と対戦する。昨秋の全国2位健大を破り、大きな弾みをつけて強豪に挑む。(越谷奈都美)

◎粘ってつないで好機を演出…4番中島・5番工藤・6番川端
 桐生第一の2度の得点機をつくったのは、4番からの3人だった。4番中島優月は相手先発の下に対し「力のある低めスライダーは狙わないことをチームで徹底できた」と振り返る。二回無死から中島と5番工藤ジョエルが連打、6番川端琉真がしっかりバントで送り、7番星野綜汰の先制打につなげた。

 六回は1死一塁から「浮いた速球を狙った」中島が中前打。工藤の四球で満塁となった。川端は「粘ってつなげよう」と7度のファウルで12球を投げさせるなど、しぶとく食い下がった。三振に倒れたが相手バッテリーのリズムを崩した。

 盛り上げ役の川端は試合直前に今泉壮介監督から今大会初の先発を告げられ奮起した。星野とは早朝からティー打撃を行い、互いの努力を認める仲。すれ違い際に川端が「頼んだぞ」と託し、星野は満塁弾で応えた。(田中憲一)

◎会話重視の指導が結実…優勝の桐生第一・今泉壮介監督(40)
 監督就任2年で、母校を12年ぶりに夏の頂点へ導いた。試合後、広瀬智也主将に腕を引かれ、満面に笑みを浮かべる選手の輪の中へ。「絶対に落とすなよ。振りじゃないぞ」とおどけながら、3度宙を舞った。

 大学卒業後、10年のサラリーマン生活を経て2012年にコーチ就任。選手勧誘を担当していたが、18年に転機が訪れた。秋の県大会まで1週間を切るタイミングで、恩師の福田治男氏(現利根商監督)が監督を退任。チーム唯一のOBに白羽の矢が立った。

 夏の甲子園を制した名将の後任に「重圧しかなかった」。突然の監督交代に揺れる選手たちと、会話重視の指導で信頼関係を築いていった。「心が体を動かす」と考え、「やらせるより、選手が納得してやれるように話をする」。時にはスマホ世代の選手に合わせ、アプリを使ってメッセージをやりとりする。

 「選手のためなら」と食事の配膳から、ふきんの洗濯まで請け負うことも。ユニフォームを脱げば、1歳7カ月の長女のおむつを替えたり、お風呂に入れたり。子育ても「もちろん何でもしますよ」と全力投球だ。

 16日の交流試合で、高校時代にかなわなかった甲子園の土を踏む。「3年生が最後に悔いなく終われるように」と意気込んでいる。

 いまいずみ・そうすけ 1979年9月生まれ。桐生第一―関東学園大。2002年から全足利クラブでプレーし、全日本クラブ選手権優勝を経験。現役時代は内野手。12年から同校野球部コーチで、18年9月に監督就任。事務職員。


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