《白球の詩》明石商・中森と対決 桐生第一・広瀬智也主将
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スクイズで三本間に挟んだ三走をタッチアウトにする広瀬主将

 1点を追う八回2死一、三塁。逆転のチャンスで、明石商のプロ注目右腕中森俊介と4打席目の対決となった。ここまで執拗しつように内角を攻められ、2度死球。七回に143キロが当たった背中は、まだ痛んでいた。

◎真剣勝負 胸に刻む
 カウント2-2から5球目、146キロの直球はベルト付近に。フルスイングのバットは空を切り、淡々としていた中森がグラブをたたいてガッツポーズ。「これだけ当てて、あの場面でここに投げられるのか」。逃げない相手に脱帽した。

 新チームになり、「絶対やりたくないこと」と向き合った。小中の野球チームで任され痛感した「誰よりも怒られる主将」と、守備が苦手なのに人生初の三塁手。憂鬱ゆううつな日々が始まった。

 案の定、今泉壮介監督からは何度も注意を受けて嫌になる日もあった。もう1人の主将、福士信晃と支え合った。慣れない守備位置でミスもたくさん。佐藤秀太郎部長からマンツーマンのノックを受け続けた。

 逃げなかったから、成長できた。コロナ禍で選抜大会がなくなり、切り替えた先の全国選手権も中止に。それでもチームをまとめあげ、今夏の県大会は12年ぶりの頂点。「キャプテンやってよかったな」と生まれて初めて思った。課題の守備は、交流試合で無失策。打球が飛んでくる度、ノックの日々に感謝した。

 明商戦後の取材。中森との対決に「一生の思い出」と口にした後、少し考え込んだ。「真剣勝負に思い出って違うよな」と心の中で思った。

 今泉監督が三塁手に指名した理由は、チーム事情の他にもある。「一塁しか守れないより、可能性が広がる。上に行ける資質はあるから」。負けたことと向き合い、最後の三振は糧にする。プロ野球選手になるために。(越谷奈都美)

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