《白球の詩》不動の遊撃手に成長 愚直に背中でけん引 沼田・永井康太主将
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
1回裏2死一、三塁のピンチで後方への飛球をキャッチ。笑顔でベンチに戻る沼田の永井主将=高崎城南

 試合後のベンチ裏、沼田の永井康太はこぼれ落ちる涙を拭うよりも先に、崩れ落ちそうな仲間の肩へそっと手を寄せた。「もっとやれたことがあったはずだ」。悔しさは尽きなかったが、「自分たちの3年間が出せた試合だった」と振り返り、顔を上に向けた。

 入部直後に直面した出来事が、高校野球との向き合い方を変えた。2019年5月、1年生が対象の強化試合「若駒杯」で前橋育英と対戦。体格やスイング速度が「同じ1年とは思えない」ほど異なり、守っていた三塁では強烈な打球にグラブをはじかれ、うまく捕球できなかった。そして、試合にも敗れた。

 「強くなりたい」。守備力の強化に必要な練習を考え、チームメートにノックを頼み込んだ。走者を確実にアウトにしようと、仲間と一緒に投げ込みにも励んだ。

 昨年は新型コロナウイルス感染症の影 響でチーム練習が一時休止に。自主練習となった数カ月、自宅近くの小学校校 庭で父親の誠さん(56)からノックを受けた。練習は誠さんの仕事の合間を縫うように、ほぼ毎日に及び、連日100球を超えた。「後ろ向きにならず、我慢強い息子。親子で似ていないところだよ」と誠さん。父親から熱のこもったノックを 受けるたびに、「うまくなることで恩返ししよう」と胸に誓った。

 人知れず努力を重ねた姿は自然と周囲にも伝わっていた。昨夏には部員投票で新チームの主将に選ばれた。100年の歴史を誇る同部を束ねる重責も感じたが、周囲には頼れる仲間がいた。

 チームの掲げる「全力疾走」を率先して取り組み、全員が納得して強くなれるように部員同士の対話も促してきた。長年、高校球児の指導に携わる古沢慶二監督は「主将もチームも、今年の雰囲気は歴代3本の指に入る」と高く評価する。

 選手としても不動の遊撃手に成長し、最後の夏を迎えた。接戦となった桐生戦では守備を引き締め、背中でチームをけん引した。

 九回に同点に追い付いたが、最後はサヨナラ負け。敗れはしたが、仲間とボールを追い掛け、一喜一憂した日々はかけがえのないものになった。「うまくなりたい」と愚直に努力を重ねた姿は、下級生たちの心にもしっかりと刻み込まれている。(北沢彩)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
関連記事