《白球の詩》大会直前、けがから復帰 最後はフルスイング 伊勢崎工・竹田萌斗外野手
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7回表の第3打席、バッターボックスで笑顔をみせる伊勢崎工の竹田

 四回2死二塁。追加点を奪える好機で打席に入った伊勢崎工の竹田萌斗は思い切りバットを振り抜いた。打球は中堅手のグラブに収まり、得点は逃したが、気になっていた左手に痛みはなかった。悔しさはもちろんあったが、フルスイングできた喜びも込み上げてきた。4カ月前は大会に出場できるとは思っていなかったからだ。

 春季大会を2週間後に控えた3月下旬。いつものようにグラウンドでノックを受けていた際、打球に跳び込むと、グラブをはめた左手が芝生に引っ掛かり、激痛が走った。捻挫の様な痛みではなく、「骨折はしていないでほしい」と期待したが、左手中指と薬指が折れていた。

 医師からは「夏の大会には間に合わない」と恐れていた言葉を伝えられた。諦めきれず、「最後の夏なので出場させてほしい」と頼み込んだ。「回復し、フルスイングしなければ」と条件付きで許可を得た。

 痛みを感じつつ、左手に包帯を巻いたままグラウンドに足を運んだ。打撃投手を務め、捕球の際は右手にグラブをはめた。選手としてプレーできなくとも、裏方で貢献したかった。

 サポートに回ることで、周囲に目が届くようになった。積極的に声を出し、雰囲気を盛り上げることも心掛けた。練習試合ではベンチに座り、出場できない選手の気持ちも理解することができた。多くの人に支えられていたことも知った。

 負傷後、母の里美さん(37)は朝は学校に、夕方は練習会場、夜は自宅まで車で送迎してくれた。けがが早く治るよう栄養価の高い食事も考えてもらい、「言葉で表せないほど感謝している」。順調に回復し、6月には練習に復帰。7月の練習試合では左中間二塁打を放ち、「間に合った」と安堵(あんど)した。

 夏の大会は7番左翼で先発出場。初戦は3打数2安打4打点と活躍したが、農大二戦は無安打に抑えられ、七回コールド負けを喫した。

 青春を懸けた高校野球は終わったが、「もっと上でプレーしたい」という気持ちもある。いつか憧れの最高峰でプレーできたらとも夢を膨らませる。野球を通して、周囲への感謝を伝えるつもりだ。(新井正人)

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