上野が誕生日に力投 宇津木ジャパン連勝
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メキシコ戦に先発した上野=福島県営あづま球場
メキシコ戦の7回途中から登板、好救援で勝機をつないだ後藤
メキシコ戦でサヨナラ打を放ち、ガッツポーズで喜ぶ渥美

 東京五輪ソフトボール1次リーグで、日本は延長八回、タイブレークの末に3-2でメキシコにサヨナラ勝ちし、初戦から2連勝を飾った。メキシコは2連敗。23日は試合がなく、24日に舞台を横浜スタジアムに移してイタリアと対戦する。日本は2日連続で投げた上野由岐子(ビックカメラ高崎)が2-1の七回に適時打を浴びて追い付かれた。2番手の後藤希友(トヨタ自動車)が好救援で勝ち越しを許さず、無死二塁で始まるタイブレークの八回に1死三塁から渥美万奈(トヨタ自動車)の遊撃内野安打で試合を決めた。米国はカナダを1-0で下し、2連勝とした。カナダは1勝1敗。オーストラリアも1-0でイタリアを破って1勝1敗となり、イタリアは2連敗。

▽1次リーグ

メキシコ(2敗)
00001010―2
01001001x―3
日 本(2勝)

(タイブレーク八回)
(メ)オトゥール-セルバンテス
(日)上野、後藤-我妻
▽本塁打 藤田(日)ウルテス(メ)

 ○…延長八回タイブレークの末に日本がサヨナラ勝ちした。八回1死三塁から渥美の適時内野安打で試合を決めた。後藤が2-2の七回無死一、二塁で上野を救援してピンチを脱し、八回も3三振を奪って無失点で勝機をつないだ。

◎「39歳のリアル」

 前日のオーストラリア戦に続き、39歳の誕生日も力の限り投げた。先発上野は6回2失点。七回に同点適時打を許し、なお無死一、二塁で降板したが、20歳左腕の後 藤がその後を無失点で切り抜けて日本は無敗を守った。「若いころの自分もこんな感じだった。いけいけゴーゴーで全球全力。先輩として、もう少し良い形でバトンタッチしたかった」と後藤をねぎらった。

 メキシコとは9、10の両日に高崎市ソフトボール場「宇津木スタジアム」で練習試合をし、日本の大敗もあった。メキシコ先発は、その時に日本打線を抑え込んだ好左腕。自軍の大量点は期待しづらく、打線もしっかり振ってくるため、上野は「気が抜けない我慢比べ」を強いられた。

 10奪三振を記録した一方で、変化球の投げ損ねは着実に痛打された。前日の力投もあり、七回は体力の限界を迎えていた。近年の日本リーグでもたびたび味わってきた後半の疲れ。一晩寝れば回復した往時のようにはいかず、「これが39歳のリアル」と吐露した。

 必死になれた理由は「復興五輪」を成功させようと会場を整え、運営を支える福島県民への思いだ。会場が福島に決まってから、この2試合の意義を考え続けてきた。「一球一球に思いを込めた。自分のすべてを福島のグラウンドに置いてこれた」と総括した。

 体を張ったかいはあり、日本は2連勝で横浜スタジアムに乗り込む。「接戦に勝って行けるのは大きい。団結心がどっと上がる」。1次リーグ残り3戦、そして27日の決勝へ弾みを付けた手応えに、2008年北京の金メダリストならではの実感がこもった。

 試合前にチームメートから誕生日を祝福されたが、プレゼントはまだ受け取っていない。「金メダルはみんなで取りに行くもの。誰かに与えられるものじゃない」という。泣いても笑ってもあと5日。日本のエースとして走りきる。
(田中暁)

◎最年少20歳の後藤が好救援

 39歳の誕生日に121球を投げた大先輩の後を受けた登板だった。「必ず勝ちをプレゼントしたい」と発奮。交代直後の初球からエンジン全開で、六つのアウトのうち五つを三振で奪った。

 サウスポーから繰り出す右打者の懐に食い込む速球が持ち味。振りが大きいメキシコ打線相手には、これまでも好投してきた。宇津木監督は「相性がある。最後の最後、一番大事なところで」と交代するタイミングを探っていたと明かした。

 愛知・東海学園高から2019年にトヨタ自動車に入団し、米国のアボットからも薫陶を受ける。上野も1年目に投げ合った際に「これで安心して引退できるなという感じ」と実力を認めた。

 国際大会の経験不足だけが懸案だった。昨年からの新型コロナウイルス禍で、今大会に向けて海外勢とは4試合しか対戦できなかった。周囲の不安を吹き飛ばし、後藤は「今後につながる経験を積めた」と満足そうに言った。

 母、恵理さんは「ビッグマウスで心配」と苦笑いするが、本人は「目標は口に出した方がいい。言葉にすると自覚や責任感が増してくる」との信念を持つ。試合後の記者会見でも「上野さんのような素晴らしい方に一歩でも近づきたい」と力強く言い切った。

 何人も現れては消えてきた「ポスト上野」。重圧がかかる五輪で絶体絶命のピンチを救い、誰もが認める実力を示した。13年ぶりの金メダルへ、若い力が芽を出してきた。

◎細かな技術で勝利導く 渥美

 日本が誇る細かな技術で接戦をものにした。タイブレークまでもつれ、2-2で迎えた延長八回1死三塁。渥美は2球目に力みなくバットを出し、きっちり遊撃へ転がした。三塁走者の山田(デンソー)が投球と同時にスタートを切り悠々生還。苦しみながらもサヨナラ勝ちした。

 タイブレークは無死二塁から攻撃が始まる。渥美は七回が7番山田で終わった時点で、定石通り8番我妻(ビックカメラ高崎)が送りバントを決めれば「自分に回ってくる」と心の準備はできていたという。

 遊撃の守備を一番の魅力とするが「サインを使った攻撃ができるのは私の真骨頂」と自負する。大会まで毎日のように練習を重ねたサインプレー。宇津木監督は「渥美は細かいことが上手」と全幅の信頼を置き、作戦を託した。

 「復興五輪」の象徴として、東日本大震災で大きな被害を 受けた福島で開催された 2試合をともに白星で飾った。24日から横浜 に移るが、主将の山田は「横浜に行っても変わらない。日本中、世界中に希望の光となるようなプレーをしていきたい」と被災地への思いを胸に戦いを続ける。

◎我妻が原動力攻守に活躍

 ○…我妻が攻守に活躍し、接戦を制する原動力になった。五回は一時勝ち越しの貴重な適時二塁打を放ち、守っては同点の七回無死一、二塁のピンチに継投した20歳の後藤を捕手としてよく支えた。

 「思い切って腕振ってきていいよ。投げ急がないで」。前日のオーストラリア戦でイメージ通りストライクが取れず、リズムを崩した後藤に助言した。この日はストライク先行でボール球をうまく振らせる場面も多く、タイブレークを含む2回で5三振を奪った。

 右打者相手の外角直球が特に良く、変化球も直球軌道からきれいに曲がったと絶賛。「初日に苦戦を経験した分、もう心配いらないと感じた。後藤の良いボールを引き出せた」と新エース誕生の手応えをにじませた。

◎藤田が2戦連発 上野誕生日に祝砲

 ○…藤田(ビックカメラ高崎)が2試合連続となる先制ソロ。1打席目の二回、火を吹くような弾丸ライナーだった。「思い切って振り抜けて良かった。上野さんの誕生日ということで、『バースデーアーチ』を狙っていた」とバットで先輩を祝福した。

 同点に追い付かれた直後の五回は無死から中前打で出塁し、貴重な勝ち越し点につなげた。メキシコの先発左腕とは過去の国際大会でも対戦経験があり、変化球の質などをイメージして最初から狙いを絞れたという。

 打撃が絶好調の一方で登板の機会はまだないが「どういう状態でも気持ちを切らさずに準備し、ベストを尽くす」。五輪でも投打の「二刀流」は追求していく。

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