全国高校野球群馬大会《準々決勝》太田、延長タイブレーク制す 樹徳に2-1
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樹徳―太田 タイブレークの延長13回裏無死一、二塁、川緑の左越え二塁打で阿部に続き高瀬(中)が本塁を突き、サヨナラ=上毛新聞敷島
渋川―利根商 3回裏利商1死一、三塁、大沢が遠藤をかえすスクイズを決め先制=上毛新聞敷島
 

 夏の甲子園出場を懸けた第103回全国高校野球選手権群馬大会は23日、前橋市の上毛新聞敷島球場で準々決勝の残り2試合を行い、4強が出そろった。今春の選抜甲子園大会に出場した健大高崎、2016年から群馬大会4連覇中(20年はコロナ禍で中止)の前橋育英、打線好調の利根商、春4強の太田が勝ち上がった。準決勝は25日、決勝は27日に同球場で行われる。

 25日の第1試合は前橋育英と太田が対戦。守備力に定評のある前橋育英は、皆川岳飛主将が今大会で3本塁打を放つなど攻撃力も目を引く。太田は23日の準々決勝で樹徳に延長十三回の末、2-1で競り勝った。継投策が光り、4試合2失点と安定した守備力を見せる。

 第2試合は健大高崎と利根商が戦う。健大高崎は4試合で8本塁打を放ち、打線に爆発力がある。準々決勝で完封した今仲泰一が好調を維持。ノーシードの利根商は3回戦で春8強の高崎商を破り、23日の準々決勝では渋川に7-0でコールド勝ちするなど勢いに乗る。
(丸山朱理)

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▽準々決勝(上毛新聞敷島)

樹 徳0000000000001─1
太 田0000000000002x─2
(延長十三回、十三回からタイブレーク)

 ○…太田がタイブレークの延長戦を制した。延長十三回無死一、二塁、川緑の2点適時二塁打でサヨナラ勝ち。投げては大舘、寺島の継投で1失点に抑え、野手も無失策でもり立てた。

 樹徳は延長十三回1死二、三塁から津田の犠飛で1点奪うも、逃げ切れなかった。

◎成果出せた
 樹徳・高田悠生主将の話 チャレンジャーの気持ちで臨んだ。悔しいが、練習の成果を出せたので良かった。

◎主将交代にナイン奮起

 延長十三回。強い日差しが照り付ける中、3時間を超える激闘を続ける太田ナインの体力は、既に底をついていた。先攻の樹徳を1点に抑え、守備から引き上げるのでさえ時間がかかった。だが攻撃前のベンチに選手がそろったとたん、疲れを感じさせないほどの盛り上がりを見せた。

 気力だけで戦える理由があった。精神的な支柱としてチームを支えてくれた沢田大和主将が、十二回の守備時に下半身を何カ所もつり、不本意ながらグラウンドから下がった。「散々、迷惑をかけてきたんだから勝とうよ」。結果で恩返ししたかった。

 タイブレークにより無死一、二塁から始まった攻撃。送りバントを想定する岡田友希監督に、先頭の川緑健太が「打たせてほしい」と直訴した。それまでの5打席は八回の犠牲バント以外、凡退。それでも「自分が決める」と主砲として腹をくくり、無我夢中で捉えた3球目を左翼線へ運んだ。

 相手の左翼が打球を追うのを見た一走高瀬有富は、二走阿部圭汰に続いて一気に三塁を蹴った。本来は沢田主将が走者を務めるはずだったため、「その分も背負って走った」。返球を受けてアウトを狙う捕手のグラブをかわし、頭から飛び込んで本塁をタッチ。球審が両手を横に広げると、ベンチの選手、スタンドを埋めた観客から大きな歓声が上がった。

 全員が仲間を思い、激闘の末につかんだ一勝。七回から力投を続けた右腕寺島優は「今までの感謝を表せたかな」と万感の表情を浮かべた。熱い夏はまだ終わらない。
(斎藤大希)

◎津田、意地の先制打

 タイブレークに突入した延長十三回表。1死二、三塁で樹徳の津田竜聖が直球をたたくと打球はレフトに飛び、犠飛となり待望の先制点を挙げた。24個の「ゼロ」が並び続けた掲示板についに「1」が刻まれた。

 しかし、無死一、二塁から始まるタイブレークで「1点」は十分ではなかった。その裏の太田の攻撃。川緑健太の放った打球が左翼線に飛び、走者2人が生還。サヨナラ負けを喫した。津田は中堅手の守備位置から喜ぶ太田ナインの姿を見るしかなかった。
 秋の練習試合で足の靱帯(じんたい)を切断。冬に手術し、懸命なリハビリの末に春に復帰した。けがを乗り越え、夏の大会に懸けていた。

 津田はこの試合でもチームを引っ張り、十一回表に左前打で好機を演出。その裏の守備では遊撃手との中継による好返球で一度はサヨナラ負けを防いだ。試合後、津田は「十三回まで1人で投げ抜いた柏崎日祐を援護したかった。タイブレークの打席ではヒットを打ち、最低2点は挙げたかった」と声を振り絞り、悔やんだ。(新井正人)

《支え人》 骨折、ギプスで出場 サヨナラへ貢献 太田・竹田凌三塁コーチ

 タイブレークにより無死一、二塁となった延長十三回。右腕にギプスをはめた太田の三塁コーチ、竹田凌は4番川緑健太が安打を放ったのを見届け、二走の阿部圭汰に続き、一走の高瀬有富も本塁へ向かわせた。「いけ」。高瀬が生還してサヨナラ勝ちを決めると、目を赤くして喜んだ。

 身長160センチ。入学時から周囲と比べ、力も技術も劣っていることは自覚していた。「だからこそ、できることを必死に取り組んだ」。地道に小技の練習に汗を流し、試合中は誰よりも声を出した。課題の打力を磨くため、春季大会以降は朝の素振り100回を日課にした。

 努力の末に受け取った背番号14。だが、初戦を終えて3日後の13日、不運に見舞われた。打撃練習中にマシンから放たれたボールが荒れて右腕に直撃。病院で全治2カ月の骨折と診断された。

 病院帰りに立ち寄った自宅で、部員に携帯電話で報告すると多くのメッセージが送られてきた。「竹田の分まで頑張るから」。込み上げる思いを感じつつ、意を決した。「残りの高校野球生活をチームにささげよう」

 最後の夏はプレーできないが、三塁コーチとして貢献する。「甲子園を目指して全力でサポートしたい」と前を向く。
(斎藤大希)


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利根商が投打に圧倒 渋川に7-0コールド


▽準々決勝(上毛新聞敷島)
渋 川00000000─0
利根商00210031x─7
(八回コールド)

 ○…利根商が投打にかみ合った。三回、大沢のスクイズと内田の左前打で2点を先取。七回は真庭の二塁打、大沢の犠飛、内田の左前打で引き離した。投手は高橋、星が零封リレー。

 渋川は三回、上村の内野安打と斎藤 利の右越え二塁 打で1死二、三塁とするも、後続が倒れた。

◎悔いはない
 渋川・飯塚勇仁(はやと)主将の話 自分たちで練習を考え、能力を上げてきた。楽しくプレーできたので、悔いはない。

◎3回の攻防が明暗分ける

 ノーシードから勝ち上がってきた両校の一戦は、ともに得点圏に走者を置いた三回の攻防が明暗を分けた。

 利根商の先発高橋輝は連打を許し、三回1死二、三塁のピンチを招いた。だが事前に相手打者をビデオで確認しており、相手の3番打者に対して「打ってくるな。ここは変化球で」と予測。140キロ近い直球を投げ込んだあと、スライダーで空振り三振に仕留めた。

 このピンチを切り抜けるとその裏、チャンスが回ってきた。1死一、三塁で打席には4番の大沢頼輝。前の打席でも安打を放っていたが、福田治男監督が出したサインはスクイズ。要求通り大沢は初球できっちり決めて三走を生還させた。大沢は「先取点で勢いにのることが大事。4番でもしっかりスクイズを決めます」と言い切った。

 この回以降、先発高橋は尻上がりに調子を上げ、試合を通して7回を13奪三振の快投ぶり。守備も無失策と安定していた。打っても、1番打者に抜てきされた遠藤翔生が相手守備の乱れを突いて三回、七回ともに得点の起点になった。

 終わってみれば、5犠打飛3盗塁と徹底した戦いぶりをみせた利根商。先発全員が2年生の布陣を敷いた福田監督は「まだまだ力で勝負できるチームではない分、小技を絡めながら、目指す野球に近づいている」と納得の表情を浮かべた。

 次戦は強力打線を擁する健大高崎と戦う。「粘って守ることが最低条件になる。食らい付いていけば、後半に勝機が見えてくる」と福田監督。好投した高橋も「持ち味をしっかり出したい」と向かっていく気持ちを見せた。(丸山朱理)

◎「流れを変える」ピンチも平常心 渋川の主戦荒木

 チームがピンチを迎えたとき、渋川のエース、荒木貴義はマウンドに向かう。プレートの右端に立ち、投球時に体を半回転ほどひねらせる技巧派のサイドスロー。対角線上に直球と変化球を投げ込み、ストライクゾーンを広角に使う投球術が持ち味だ。

 この日も試合の流れが変わりそうな局面で出番を迎えた。2点ビハインドの四回1死二塁。先発の上村晟からマウンドを譲り受けると、荒木は「流れを変えてやる」と堂々と腕を振った。得意のスライダーで打者を打ち取るも、守備陣の乱れもあり失点を許した。それでも平常心を崩さず、後続を断ち、ピンチを切り抜けた。

 五、六回は三者凡退に封じ込め、原悠太監督は「荒木が投げることで『さあこっからだ』と雰囲気になる。きょうも嫌な流れを変えてくれた」と指揮官の期待に応えた。

 試合はその後、失点を重ね、予期せぬコールド負けを喫した。流れを引き寄せる難しさをあらためて実感したが、「後悔はない。やってきたことが発揮できたから」と荒木。背中でチームを引っ張った背番号1が、この夏のマウンドを静かに降りた。(山崎遼)

◎寄り添う姿勢で指導 38年ぶり8強導いた渋川・原監督

 昨年度までコーチを担っていた渋川の原悠太監督は監督就任後、初めて迎えた全国選手権群馬大会でチームを38年ぶりの8強に導いた。現在も前橋育英を率いる荒井直樹監督の教え子で、同部OBの中で初めて高校野球の監督に就任した。名将の教えを取り入れつつ、生徒に自ら寄り添う姿勢を大切にし、生徒の活躍を支えた。

 「チャレンジした結果のミスなら怒らない」という荒井監督の教えを受け継ぎ、生徒に積極的なプレーを促してきた。選手への技術的な助言も、強豪校で腕を磨いた経験があるからこそだ。

 加えて、選手と目線を合わせるための工夫も怠らなかった。グラウンド整備も一緒になって取り組み、インターネット上で野球部のノートを共有。アドバイスや心構えを毎日コメントし、信頼関係を築いた。

 大会開幕後、選手に掛けてきた言葉は「勝とう」ではなく、必ず「楽しもう」だった。「楽しむからこそ、力が発揮できる」と原監督。敗れても全力を出し切った選手のすがすがしい様子に、原監督の教えが表れていた。
(金子雄飛)

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《熱球解説 向田佳元》修正能力の差が明暗 利根商―渋川戦

 38年ぶりに8強進出し勢いに乗る渋川と、走攻守で高い水準を誇る利根商との一戦は、対戦が待ち遠しい試合だった。

 試合前、好投手を 擁する利根商に対して、渋川打線がいかに 対応するかがポイントだと思った。投手力だけでなく、打力、守備力などの 総合的な戦力も利根商の方が 格上なので、渋川がチャレンジャーに徹(てっ)し、粘り強く 戦えるかが攻略の鍵だと察しをつけた。

 予想通り、渋川打線は序盤、利根商の先発、高橋輝君に手も足も出なかった。130キロ代後半の直球と切れ味鋭い変化球に翻弄(ほんろう)され、3回までに7奪三振を喫した。さらに、19日の桐生戦でコールド勝ちを収めた余韻からか、各打者が打ち急ぎ、やや早く肩が開いていた。外側の球にバットが届いていない印象を受けた。

 他方で、これは予想に反することだが、利根商打線も渋川の先発、上村晟君を打ちあぐねていた。球速表示よりも伸びのあるボールに芯をずらされており、利根商ナインに焦りすら感じた。

 明暗を分けたのは、「修正能力の差」にあると考える。対戦投手への対策や、各状況に 応じた攻撃、小技を仕掛けるなど、引き出しの多さが勝負を決めた。その意味で 渋川打線は修正力にやや欠けていた気がする。強振することは良いことだが、好投手の高橋君相手に揺さぶりを仕掛けるなど、リズムを 崩す手段はあったはずだ。結局、14奪三振を喫し終始バッティングは淡泊なものに思われた。

 利根商の方は違った。上村君の直球を引きつけて、逆方向への安打が増えはじめたこともあるが、「堅実な攻撃」が功を奏した。象徴的だったのは、三回1死一、三塁。4番大沢頼輝君の初球スクイズだ。前回の打席で安打を打っている主砲に犠打をさせるとは、不意を突かれた。名将・福田治男監督の好判断が勝利に導いたと言っても過言ではない。

 「野球は実力がある方が必ずしも勝つわけではない」。結果的に渋川が大差で負けたが、勝機も十分にあった。渋川にはこの敗戦を糧にさらなる飛躍を期待したい。
(元富士重工業野球部監督)

 むかいだ・よしもと 1956年4月生まれ。前橋工の右下手主戦として夏の甲子園4強入り。早大で通算14勝。富士重工業で日本選手権優勝を果たした。

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