《白球の詩》3年生全員の声で復活 仲間の思い応えた夏 健大高崎・小沢周平内野手
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守備の要としてはつらつとプレーする健大高崎の小沢

 健大高崎の大黒柱、小沢周平は人生で初めて大きな挫折を味わった。春季大会を控えた4月のグラウンド。ベンチ外の3年生に交じり、掃除や打撃投手といった主力組のサポートに汗を流した。青柳博文監督から突然、命じられた。

 1年秋に中軸に座り、関東大会優勝、明治神宮大会準優勝へ導いた有望株だった。1学年上が引退した昨夏、指導陣はプレーで引っ張ってくれるはずと主将に任命。実際、関東大会では2本塁打と期待に応えた。一方「打ちたい、打てればいいんだ」。そう思っていた。

 自信は少しずつ過信に変わった。打撃以外の重要性を説くコーチの言葉にうなずくも、頭は理解していない。練習中、バットを持つ時間が待ち遠しかった。意気込んで臨んだ3月の選抜甲子園2回戦は、一塁すら踏めずに負けた。

 敗戦を経てもなお、我欲を捨てきれない主砲に告げられた「降格」。同時に、主将の肩書も捕手の綱川真之佑に渡った。「もう辞めようかな」。大好きだった野球に向き合うのがつらくなった。

 立ち直れる転機があった。ベンチメンバーに戻った春季大会後の室内練習場。他の3年生32人全員が自分のためにミーティングを開いてくれた。「お前が核のチームなんだから」と元気づける部員、泣きながら励ましの言葉を掛ける部員。みんなの熱い思いに、心が動かされた。

 自分がしてもらったように、仲間を第一に考えた夏にした。投手がピンチを迎えるとすぐに駆け寄り、攻撃前にはベンチで選手を集めて必死に鼓舞した。3回戦、準々決勝は7打数1安打と打撃が低調だったが、「周りに声を掛けられたのが収穫」と思えるまでになった。

 春夏連続の甲子園を懸け、宿敵の前橋育英と対戦した決勝も普段通りだった。走者を出した六、七回には二塁からマウンド上の今仲泰一に対し、自分の胸をたたいてみせた。「大変な状況でも今仲なら大丈夫だぞって伝えたかった」

 終盤にペースを奪われ、聖地への道はするりとこぼれ落ちた。自身も無安打に終わり、結果に納得はいかない。相手の校歌を聴き始めて一度だけ流した涙は負けた実感が湧かず、すぐに引いた。ただ、試合を終えて一つだけ確かなことがある。「みんなと野球できて良かった」(斎藤大希)

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